ここまで時系列でワタシのバレエレッスンについての記事でしたけれども今回はガラッと変わってアシについてです。
Youtubeなどでロシアや中国の名門バレエ学校の入学試験で子供がパンツ一枚だけ着けて身体検査を受けている様子をみることができます。ものすごくカラダが柔らかい細身の子供たちの足や背中をいろいろな角度に曲げたりジャンプする様子を試験官がチェックしていきます。ターンアウトに必要な柔軟性や足の甲が出ている(出るかどうか)は骨格や靱帯の長さなど訓練では必ずしも思い通りに矯正できないのでもともと非常に柔軟性にすぐれたバレエ向きの骨格の素質のある子供を訓練で鍛え上げるためだそうです。ただ生まれつき甲が高い「バレエの美脚」の強度を上げるように訓練するにはとても難しくきめ細かい指導が必要だそうです。いずれにしてもバレエは難しいんだと妙に納得してしまいます。
それはそういうものとして別に置いておくとして、バレエをはじめてから困惑したのはアシをつま先までのばして前に出すというただそれだけのことがなぜこれほど難しいのかということでした。
鍛え上げられムダな脂肪がゼロで盛り上がった筋肉の筋が浮き出て甲が高くつま先までピンとのびた緊張感のあるプロのバレエダンサーのアシとは違うのは当然にしても子供時代からふつうに走ったりジャンプしたりジムの鏡のあるスタジオで上級エアロもやってきていたのでそれなりに「こう動こう」とすればそう動けるはずだったんです。それなのに鏡に映っているただのばして前に出したアシのブザマさといったらありませんでした。太さや曲がっているのは仕方ないのですけれど「まったく緊張感が感じられないように見える」のが情けなかったのでした。O脚で靴のカカトの外側が減っている事実は認識していました。けれども立ったり歩いたり、走ったりというアシをつかう動作はしぜんに身に付いたものだったのでどんなふうにアシを使っているかについてはまったく無頓着でした。「アシを使う」という考えすらなかったのでアシを意図的にコントロールして使うための回路が未発達だったんです。
カラダの中心や脳から遠くなればなるほどそのパーツを意識的にコントロールするのはむずかしくなるので手先つま先はその最たる例です。両腕のヒジを先に上げて、ヒジから先を顔の前を通過してアンオー(アタマの上)までもっていくとき、ふと鏡を見たら手首から指先までがなんの意図も感じられずぼんやりと丸まっていたりするとアタマを抱えたくなります。カラダの末端まで神経をゆきわたらせるのは本当に難しいです。
もともとアシにはコンプレックスがありますから最初からタンジュは丁寧にするよう気をつけていました。バレエのバーレッスンはプリエとタンジュから始まり、アタマのてっぺんから胴体を中心に腕とアシの先まで連動して訓練されるように構成されているので2、3年ぐらい前は「最初にくらべればだいぶマシになったわ」と思っていました。それは事実でかなりマシになっていました。けれど昨年からの「基礎に特化したレッスン」で5番がスカスカで先生がちょっと肩を押しただけでよろけてしまったんです。きちんと股関節からアシを開けて使えていなかっただけでなくもともとO脚で外側に体重がかかっていたのでバレエの訓練の効果として重要な内転筋などアシの内側がストレッチされず強化もされていなかったんです。
そこで股関節から正しくプリエをする方法や足首を引き上げることなどを教えていただいてだいたいこの1年間で骨盤の前側を上げて尾骨を下にして腰から背骨を引き上げて骨盤からアシがはみでずヒザをのばして立てるようになりました。バレエの基本姿勢(立ち方)で使うべき筋肉を正しい方法で使えるようになったら46歳のワタシでも効果が出たんです。
昨年までにすでに6年ほどバレエを習っていましたから意識的に筋肉を使うのには慣れていたのと、ポワントで踊れるようになるのを目標にして週3回から6日レッスンを受ける時期だったので早く変えられたというのはありますけれど変えるために自分でO脚の筋肉バランスはかなり変更しなければなりませんでした。
「アシはむずかしい」と思ったのは股関節、膝関節、足関節という動き方が違う3つの関節が組合わさっていることです。さらに骨盤の角度と足首から先は関節だらけです。股関節からターンアウトするとき問題なのは股関節と膝と足首の柔軟性と可動域が違うので太腿とふくらはぎと足先の筋肉の回り方が同じ角度でひらかないことです。これは個々の関節の柔軟性と可動域だけでなく、たとえば股関節は開いていて膝は内向きといったつき方にも影響を受けます。さらに足首からつま先までは26の大小の骨が結合してできているので足元での1ミリは使い方によっては股関節では1cmの差になったりします。靴のカカトは硬いのにきがつくと外側だけが3mm位減ったりしているので体重45キロのワタシが歩いたときにかかるチカラが外側に偏っているということになります。1歩毎ではたいしたことなくても繰り返せば全身への影響はばかになりません。
「靴のカカトの外減り1mmの差なんて大したことない」と思っていました。なにしろ45年間足の外側に体重がかかった状態で生活していましたからそれがワタシにとって自然な状態だったので問題だと認識できませんでした。けれどO脚の筋肉バランスを矯正しようとしたらこの「たった1mm」の影響がとても大きいことがわかりました。今回ふくらはぎの肉離れになって2週間ふくらはぎを動かさないために足首から先をのばさないでかかとから着地して歩いていました。それで2週間たって試しにタンジュをしようとしたら足首か硬くなっていて(もともと硬いのですけれど)ケガ前の角度まではほんのちょっとの差なんですけれどまわせなかったんです。それでその角度であし先を床にこすったのですけれどいつもタンジュではたらくはずのふくらはぎの筋肉が動かなかったんです。ということはその上のハムストリングスや中殿筋につながらないということになります。空振り状態です。詳しくない人がみたらわからないと思います。
ですから膝の向き、足首の柔軟性によっては股関節からターンアウトしても柔らかいところでねじれたりして、その状態でタンジュしても床から股関節まで筋肉をつたってチカラが伝わらない可能性があるんです。しかもある程度の年齢以上の大人の場合それまでの生活での歩き癖やいろいろな原因で足裏から股関節までの筋肉のつながりがワタシのように外側だけでその結果使えていない筋肉もあったりする可能性があるのでそれが原因で足裏は床をこすっても股関節までチカラの刺激が伝わらなくなったりしていることもあるかもしれません。使えていない筋肉がうごきはじめるまでには手間がかかります。
バレエの筋肉をつかうために矯正した(まだ矯正中です)アシですがそもそも骨盤前傾で膝がのびていませんでした。ですから太腿前側と背筋でバランスをとっていたことになります。そして股関節からO脚で足の小指に体重がかかっていました。ふつうに立った状態では膝の間に空間があるのですけれど両足を回旋させるとほぼ隙き間がなくなるタイプです。前傾していた骨盤が少しずつまっすぐにできるようになっていたので親指にも体重をのせるように矯正するのがメインでしたけれど同じ時期に他のレッスンでハムストリングスを使うことやアシの付け根に近いところから動かすようにと教えていただいたりしたので股関節からのつなぎかた自体を変更しました(いまも変更中です)
その結果O脚の筋肉バランスがかなり矯正されて足裏の3点が機能するようになりめでたく念願の「膝をのばす」ことができるようになりました。「ふつうの人が考える『膝をのばす』」と「バレエで膝をのばす」のは「バレエで立つ」のと同様にぜんぜんちがいます。
ワタシは骨盤前傾でバレエ的な意味じゃなくても膝がのびないというハンディを持っていたので骨格次第でここまで手間はかからないとおもいますけれど足裏の3点が機能して床を押せるようにならないとバレエ的な意味で膝をのばすことはできません。
「膝がのびていない」というのは何年も前からずっと指摘されていたんです。ただ「バレエ的に膝をのばすのはむずかしい」ということも知っていたのでチカラを入れてむりやりアシだけのばすことはしませんでした。本来床を押して引き上げて膝をのばしてロックして安定性を得て踊るためでポワントでは必須です。でも子供時代に「膝をのばしなさい」と注意されて膝を押し込んで固めてしまったクセがついている人をみかけることもわりとあります。ワタシも膝を押してのばそうとしたことはあったのですけれど先生方は「膝を押してはいけません」という注意をされることが多いのでのばさないままやってきました。幸い(!?)膝をのばさなくてもバレエシューズなら片足を振り回してもグラグラしない位アシと背中が強かったということもあります(だから腰が使えなかったということも)
「膝を押してはいけません」という注意が多いということは膝にチカラが入っている人が少なくないということです。原因は初心者なら筋力不足で膝にチカラを入れないと安定して片足を動かせないという場合もあるでしょうし、膝下だけO脚やX脚で膝の外側、内側のどちらか一方ににチカラがかかってしまったりすることもあるかもしれません。そういう細かいことは通常のバレエレッスンではなかなかカバーされません。それを放置しておくといくらバーレッスンをがんばっても膝にチカラが入っていることで足裏から股関節までのチカラの伝達が膝でとぎれてしまいますからつながりを機能させる神経も筋肉も活性化しないという結果になる可能性も否定はできません。
バレエは訓練量が重要ですからターンアウトしてつま先をのばしきって踊れるようになるのは趣味の大人のバレエでは難しいのですがアシの筋肉のバランスや骨格が原因の問題が解消されればもっと床を押せるようになるケースもあるのではと思います。ただこのたぐいの事項はとても細かいので個人レッスンや、コンディションによっては整形外科や整体、姿勢改善が含まれるコア系エクササイズも活用しないとなかなか難しいと思います。
大人のバレエですから習い方もいろいろなスタンスがあります。時間も労力も優先度は人それぞれですので週3回以上レッスンを受けていて「バレエの仕組みをつかって踊れるようになりたい」人のお役に立てれば幸いです。