ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

絶滅の人類史 更科功

2025-02-27 09:06:21 | 

いつかは我々人類も絶滅させられるのだと考えている。

科学の進歩は我々現生人類が他の人類を絶滅に追い込んできたことを証明しつつある。ネアンデルタール人だけではない。我々の直系の先祖であるクロマニョン人にも複数の亜種がいて、彼らをも絶滅に追いやり今日の優先的立場を獲得したのが我々である。

その絶滅が相手の合意を得た平和的なものであったと能天気に想像するのは勝手だが、実際には相手の意向など踏みにじる残虐な行為であったと予測するほうが現実的であろう。ちなみにネアンデルタール人からクロマニョン人に移ったとされるのは4万年前ぐらいだと考えられている。

その移行が両者の合意があったと能天気に考える人がどれだけ居るかは知らないが、現時点で分かっているのは両者の混血がいたらしきことと、最終的にはネアンデルタール人は絶滅したことだ。実はネアンデルタール人以外にも比較的近年(2万年程度)まで生存していた亜人類がいたことも分かっている。でも絶滅していることも分かっている。

このことから我々クロマニョン人の祖先たちは極めて排他主義な思考あるいは本能の持ち主であることが再確認された訳だ。そんな我々現生人類が平和裏に穏やかに他の種族に滅ぼされるとは期待しないほうがいいだろう。

良くて博物館の展示物、下手すれば悪性哺乳類として根絶させられるかもしれない。そのくらいの覚悟はしておいた方が良いと思う。

では何時、その種族交替は発生するのか? 次なる種族はやはり直立猿人なのか、それとも別種の生き物なのか?現時点ではまったく分からないが、その時期だけは予想が付く。ほぼ間違いなく次なる氷河期の最中だと予測できます。過去の種族交替は、概ね氷河期に起きることが多く、また生活様式が温暖な気候に慣れ過ぎたが故に弱体化した我々は、氷河期に耐えることが出来ないからです。

嫌な予測ですが、その種族交替は我々人類にとって決して幸せなものとはならないと思います。何故なら我々も先代の種族交替を残虐に、冷酷に、罪の意識すらなく行っていたでしょうから。証拠はありませんが、現在多くの生物を絶滅に追いやってきた過去を思えば簡単に推測できます。

今更後悔しても遅きに失していると思いますよ。

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図解ミリタリーアイテム 大波篤司

2025-02-19 11:57:45 | 

日本は間違いなく衰退する。

何故なら人口が減少するから。これは大問題である、かつては一億2千万の国民を抱えた大国であったからだ。実際問題、一億を超える国民を有する国家はそう多くない。そして行政が隅々まで管理する日本は、その一億2千万人を管理できた国でもあった。

しかし子供の出生数が減少し、高齢者が亡くなっていく以上、必然的に人口は減少する。当然だが、社会システムを管理してきた人たちも減少する。事務官僚が減ってもAIなどの活用で対応できるかもしれない。しかし現場の仕事はそうはいかない。

警察、消防署など社会治安に関わる部門での人手不足は、日本社会全般を危機に追いやる。なかでも最大の問題は軍隊である。自衛隊と呼ばれている軍隊は現在でさえ人員不足である。その原因の一つに、軍隊が戦争を呼び込むと妄想する平和原理主義者の存在がある。

この能天気な平和妄想に憑かれた善意の人たちは、自衛隊の人員募集を妨害する存在として悪名高い。もっとも新聞やTVはその愚行を報じようとしないから、案外と知らない人も少なくない。労働組合に数多く棲息しているが、なかでも教職員組合は本丸であり、社会に出ようとする若者たちに自衛隊の害毒を説いてまわっている。

もっとも阪神淡路大震災や東日本大震災での自衛隊の活躍を知っている若者たちからは相手にされていないが、自衛隊の人員不足は未だ解消されていない。

その大きな原因の一つに、自衛隊の福利厚生施設の貧弱さがある。一機150億とも云われる最新鋭戦闘機や、一隻1000億円を超すイージス艦に予算をつぎ込む防衛省だが、こういう正面装備には金を掛けるが、自衛隊の宿舎、生活必需品などには金を掛けたがらない。

現場からの不満が多くも、それは世間にあまり知られていない。当然にマスコミ様は無視するので、政治家も軽く思われている。実際防衛大臣を二期も務めた現首相様なんざ、議員宿舎の一室に自衛隊の戦闘機や艦船の模型は飾っても、自衛隊の宿舎を見学したことはない。海外でのPKO活動を終えた自衛隊員の出迎えには行かないが、大臣室で懇意の記者たちに防衛見識を高らかに語る時間のほうが優先事項であったお人である。

日本には徴兵制はなく大学の一般教養にも軍事学はない。そのせいか軍事に関する知識というか情報が知られていない珍しい国である。私のような似非軍事マニアでも戦闘機や戦車、軍艦の知識はあるが、日常的に必要となる兵員の福利厚生関連の知識は乏しい。

表題の書には、兵員には必要不可欠な装備だが、日本では重視されないものが簡潔に記されている。簡潔であっても量は相当にあり、世界の軍事常識と日本の軍事常識の差が良く分かる内容となっている。

服装や食事に関する軍事常識、死体袋や幕営装備など初めて知ることも多く、私はたいへん勉強になりました。近い将来、日本は戦争に巻き込まれる可能性が非常に高いと考える私にとって、若い人から避けられるような軍隊であっては良くないのです。

この惨状を改善するためには、有権者の大半がある程度の軍事知識は知って欲しい。若い兵員に貧困な生活環境を押し付けるのではなく、安心して務められる環境を用意するのも大切なことだと思います。

宿舎のトイレットペーパーを隊長が自費で購入する軍隊、この現状を恥じる感性ぐらいはもって欲しいです。

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怪人ソリティアの神仙偽術2 成田良悟

2025-02-12 09:16:56 | 

どうやら主役よりも人気があるという噂は本当らしい。

この作品、本編よりスピンアウトしたものなのだが、なにせ本編の主人公が怖い能力持ちの癖に、とても温厚で温和かつ大人しい性格なので、敢えてその真逆といって良い性格の奇術師ソリティアを外伝にて主役に持ってきたのではないかと邪推している。

正直言えば、私も主人公よりも好きかもしれません。でも身近にいたら絶対迷惑なタイプなのも確かでしょう。それでも目を離せないタイプだから始末が悪い。悪事はするが悪意はない、それでいて決して改心する気はない。

なにが目的で悪事をするのか分からない、意図不明の怪人、それが奇術師ソリティア。種も仕掛けもある手品だと広言しているが、その手品を何故やるのかの意図不明だから始末が悪い。しかし、対岸で見ている分には滑稽で面白い。

この本を読んで啓発を受けることはないし、人生に役立つような教訓もない。しかし無意味で無価値であっても、しかめっ面をほぐす程度の面白さはある。ライトノベルとはかくあるべしというべき手本かもしれない。

そういえば私が朝日ソノラマ文庫や早川SFのスペースオペラを読んでいる時は、大概試験の前だったり、宿題提出期日の前夜だったりした。要は現実逃避なのだと思う。大人になると、そうそう現実逃避は出来ないけど、それでも癒しは欲しい。

そんな時に無意識に手を伸ばして読みだしてしまうのがライトノベル。進歩ないね、私は。

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喧嘩侍勝小吉 小松重男

2025-01-27 12:59:13 | 

明治維新の本質は内乱による権力交代である。

どの時代、どの国にあっても内乱は悲惨で苛烈なのが通例だ。同じ国の仲間同士の争いであるが故に、むしろ憎悪と恨みが絡み合い、庶民も巻き添えにした壮絶な殺し合いが内乱では普通に見られる。

明治維新においては、徳川家が幕府を置いた江戸こそがその内乱の最大の戦地となるはずであった。しかし、幕臣の勝海舟と維新側の西郷隆盛との話し合いにより江戸城の無血開城がなされたことにより悲惨な内戦は最小限に留められた。

本来ならば江戸に攻め込む情念に燃える維新側にとって最も盛り上がる場面になるはずであった。連戦連敗の幕府側はただただ維新軍に蹂躙されるだけのはず。話し合いなんて必要ないと思っていたはずだ。

しかし山岡鉄舟が駿府に駐屯中の維新軍に乗り込み、会談の設定を取り付けた。これは幕府側に切り札があったからだ。勝海舟が事前にあれこれと対策を練った成果でもある。その対策の一つに江戸の街の焦土作戦がある。

勝は江戸の街の火消したちを集めて、もし維新側が攻めてきたら火をつけて江戸の街を燃やし尽くせと命じた。火消しの大親分である新門辰五郎は仰天したが、それでも小吉の旦那の息子さんの顔を潰すわけにはいけねえと請け負った。

火消しだけでなく、博徒やごろつきまで含めて江戸の暴れん坊たちから慕われたのが勝小吉である。いや、小吉自身が暴れん坊の代表格であった。とにかく子供の頃から喧嘩好きで、勉学は好まず、武芸もやらず。ただし喧嘩だけは江戸一と云われ、武芸者では剣聖とまで言われた男谷精一郎でさえも軽くあしらったという。江戸の三大道場に喧嘩を売りに行くのが大好きだが、酒や賭博はやらず専ら喧嘩と吉原遊びに傾倒した。

だから親が望んだ幕府への士官は叶わず、その代わり江戸一の暴れん坊として名を上げた。ちなみに息子である勝海舟(麟太郎)は、小吉が二度目の家出をした罰として、実家の座敷牢に3年間蟄居させられた時に産まれている。座敷牢って何なんだ?

こんな破天荒な親父を反面教師として育った息子は、徳川幕府を潰しても日本を守りたいと考えるトンデモナイ幕臣であった。しかし、その思いは敵である西郷にも熱く伝わり、無血開城という結果に結びついた。

それにしても海舟の実父がここまで無茶苦茶な人物だとは知らなかった。無職の浪人だとは知っていましたが、表題の書を読むと浪人というよりも不良親父であり、侍というよりも与太者。武芸の技量はなくとも天性の喧嘩上手で荒れた幕末の江戸に無頼風を吹かした小吉は、品の良い歴史家には評価しずらい人物だと思います。

だが小吉の息子であったからこそ、江戸の暴れん坊たちは勝海舟の無茶な要請に応じた。これはこれで事実として明記されて然るべきでしょうね。ただ霞が関のエリート官僚様は嫌がるだろうなぁ。だって、彼らが一番苦手なタイプですからね。

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アウトサイダー フレデリック・フォーサイス

2025-01-20 15:36:58 | 

スパイ小説の紙価を高めたといって良いのがイギリスのF・フォーサイスであろう。

なんといっても「ジャッカルの日」は傑作であった。映画化もされて大ヒットしたことで原作を読んだ人も多いと思う。ただし駄作も少なくないが、それでも「オデッサ・ファイル」「戦争の犬たち」は傑作だと思っている。

そんなフォーサイスの自伝が表題の作品だ。率直に言って下手なスパイ小説よりも面白い。挫折多き半生だと思うが、その多彩な経験が後の小説家としての資質に大きく寄与していると分かる。

ただし、この自伝は注意して読まないといけないと思う。おそらく情報提供者を守るため、あるいは守秘義務に関わる部分があるため、けっこう空白の部分があることが読み取れる。私、けっこう意地になって調べたりしましたが、無理ない気もします。

特にナチスの追跡や、アフリカのビアフラ戦争に関わる部分は書けないのだと思う。それだけフォーサイスが危険な場所、人物などと関わっていた証左でもある。同時にフォーサイスの作品にむらがある原因も分かったような気がした。

面白いアイディアがあったとしても、それがこれまでの彼の人生で知り合った人に迷惑となりそうになると、そこを誤魔化さざる得なくなり、結果的にツマラナイ作品になってしまったのだろうと思う。実際、フォーサイスは諜報活動に関わることがあったようだし、かなり危ない目にも遭遇している。

その経験を活かして小説を書くにしても、どうしても書いてはいけないことも多々あったのだろう。この自伝を読むとフォーサイス自身は自らの基礎をジャーナリストであるとし、小説家を余技としているように思えてならない。

多分、これこそスパイ小説家としてのフォーサイスの美点であり、かつ限界なのだと思います。

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