今の自分があるのは、父母がいたからであり、祖父母がいたからでもある。そして、祖父母の先にも延々と血脈は続く。
正直言うと、私は親族だの血族だのといった話が苦手だ。なんとはなしに、自分を縛る目に見えぬ束縛の観があって、どうも積極的に関る気にはなれない。
どうも、この気質は父譲りらしい。親族付き合いを苦にしない母と異なり、父はあまり得意でないようだ。実際、離婚して海外に出て数年間、実家ともろくに連絡をとらなかったらしい。7年ぶりで帰国して、初めて親の死を知ったと嘆いていた。
私にとっても祖父母であるのだが、率直に言って、ほとんど記憶はない。父が末っ子で、兄弟とも年が離れていたから、なお更孫の私とも離れていた。父方の叔父や叔母は既に初老であり、従兄弟たちも一番年の近い人で、高校生だった。小学校に入ったばかりの私とは、どうしても合わなかった。
父方の実家は、江戸時代から続く大庄屋の家柄で、多摩地区に広大な屋敷を持っていた。うろ覚えだが、立派な門をくぐり、でかい家の玄関の先が応接室で、そこから二階建ての渡り廊下を通って本宅に入る形式だった。ちなみに、その渡り廊下には、卓球台がおいてあったから、その大きさが想像できると思う。
まあ、けっこうなお屋敷であったのは間違いない。芝を引き詰めた庭には、錦鯉が泳ぐ池と小さな滝が作られてあったことを微かに覚えている。
ただ、子供の私には、あまり良い印象はない。この屋敷に行くには、ブレザーを着せられ、蝶ネクタイを締めなければならなかったのが、苦痛だったからだ。沢山居る親族のなかで、かしこまっていなければならないのは、落ち着きのない子供の私には苦行に等しかった。
実際、父母が離婚するまでは、私はお坊ちゃまであることを要求された。これが苦手だった。子供の頃は、虫取りやプロレスごっこが大好きな、泥まみれ、埃まみれのガキだったので、良い服を着て大人しくしている自分が嫌いだった。だから、父母の離婚の話を聞いた時、あの屋敷に行かなくて済むのだと思い、安堵したことは事実だ。
その後は、やはり貧乏な暮らしとなった。生活保護一歩手前ぐらいの貧しさだった。でも、それほど苦には思わなかった。炊事や洗い物、洗濯といった家事を手伝うのも、当たり前だったし、周囲には我が家以上に貧乏な家庭が沢山あった。賑やかな妹たちと共に、それなりに幸せな家庭であったと思う。
ただ、転校が多かったせいで、私個人はけっこうな問題児だった。警察の世話になったのも、この貧乏な時期が一番多い。喧嘩も多く、怪我の絶えない子供でもあった。ハッキリ言って、柄の悪いチンピラ小僧であった。いつのまにやら、薄汚い世間の事情にも通じるようになった。もし父の帰国と支援がなかったら、いったいどんな大人に育っていたのか、いささか不気味に思う。
だからだろう、表題の本を読みながら、けっこうイラついていた。同い年の頃の私なら、もっと上手く立ち回っていたぞ!と怒りながら、主人公を応援する気になった。全5巻もある超長編小説で、読むにはいささか気力がいるが、その労苦に値する内容であることは保証できる。久々に読み応えの在る大作でした。
ただ、読みきるのに2週間もかかるとは、思わなかった。ちと、疲れましたが、心地よい疲労感でもあり、満腹な気分です。
正直言うと、私は親族だの血族だのといった話が苦手だ。なんとはなしに、自分を縛る目に見えぬ束縛の観があって、どうも積極的に関る気にはなれない。
どうも、この気質は父譲りらしい。親族付き合いを苦にしない母と異なり、父はあまり得意でないようだ。実際、離婚して海外に出て数年間、実家ともろくに連絡をとらなかったらしい。7年ぶりで帰国して、初めて親の死を知ったと嘆いていた。
私にとっても祖父母であるのだが、率直に言って、ほとんど記憶はない。父が末っ子で、兄弟とも年が離れていたから、なお更孫の私とも離れていた。父方の叔父や叔母は既に初老であり、従兄弟たちも一番年の近い人で、高校生だった。小学校に入ったばかりの私とは、どうしても合わなかった。
父方の実家は、江戸時代から続く大庄屋の家柄で、多摩地区に広大な屋敷を持っていた。うろ覚えだが、立派な門をくぐり、でかい家の玄関の先が応接室で、そこから二階建ての渡り廊下を通って本宅に入る形式だった。ちなみに、その渡り廊下には、卓球台がおいてあったから、その大きさが想像できると思う。
まあ、けっこうなお屋敷であったのは間違いない。芝を引き詰めた庭には、錦鯉が泳ぐ池と小さな滝が作られてあったことを微かに覚えている。
ただ、子供の私には、あまり良い印象はない。この屋敷に行くには、ブレザーを着せられ、蝶ネクタイを締めなければならなかったのが、苦痛だったからだ。沢山居る親族のなかで、かしこまっていなければならないのは、落ち着きのない子供の私には苦行に等しかった。
実際、父母が離婚するまでは、私はお坊ちゃまであることを要求された。これが苦手だった。子供の頃は、虫取りやプロレスごっこが大好きな、泥まみれ、埃まみれのガキだったので、良い服を着て大人しくしている自分が嫌いだった。だから、父母の離婚の話を聞いた時、あの屋敷に行かなくて済むのだと思い、安堵したことは事実だ。
その後は、やはり貧乏な暮らしとなった。生活保護一歩手前ぐらいの貧しさだった。でも、それほど苦には思わなかった。炊事や洗い物、洗濯といった家事を手伝うのも、当たり前だったし、周囲には我が家以上に貧乏な家庭が沢山あった。賑やかな妹たちと共に、それなりに幸せな家庭であったと思う。
ただ、転校が多かったせいで、私個人はけっこうな問題児だった。警察の世話になったのも、この貧乏な時期が一番多い。喧嘩も多く、怪我の絶えない子供でもあった。ハッキリ言って、柄の悪いチンピラ小僧であった。いつのまにやら、薄汚い世間の事情にも通じるようになった。もし父の帰国と支援がなかったら、いったいどんな大人に育っていたのか、いささか不気味に思う。
だからだろう、表題の本を読みながら、けっこうイラついていた。同い年の頃の私なら、もっと上手く立ち回っていたぞ!と怒りながら、主人公を応援する気になった。全5巻もある超長編小説で、読むにはいささか気力がいるが、その労苦に値する内容であることは保証できる。久々に読み応えの在る大作でした。
ただ、読みきるのに2週間もかかるとは、思わなかった。ちと、疲れましたが、心地よい疲労感でもあり、満腹な気分です。