困ったものだ。
昨年の会社法の大改正により、簡単に会社が作れることなった。儲かる仕事を個人でやれば、儲かれば儲かるほど税金が高くなる個人の所得税を嫌っての会社設立は、従来からの定番だった。
会社に収入を入れて、社長として給与をいっぱい貰って経費に落として、利益を小さくしての法人税節税は、これまでも当然になされていた手法だった。
会社設立が簡単になったことで、法人税の減収を恐れた財務省は、昨年会社法改正と併せて法人税法改正を行った。一つはオーナー社長の給与の損金算入制限。もう一つが役員報酬の支給形態への制限だった。
このもう一つが、昨年以来悩みの種となっている。
役員に対する給与(役員報酬)は、従業員に対する給与とは法的性格が異なる。雇用契約に基づく従業員給与に対して、株主からの委任を受けての報酬となる役員への給与は、株主総会での承認を受けて、取締役会で決められる。
しかし、株主=経営者である中小企業では、事実上経営者の思うがままに役員報酬は決められていた。儲かれば報酬をアップするし、赤字ならダウンするが、一方法人税を払いたくないがゆえの高額報酬が維持されることも少なくない。
従来、国税当局は役員報酬を税金回避の手段とみなして、厳しくチェックしてきた。その典型が過大役員給与の損金不算入規定だった。しかし、この規定は滅多に適用されない。なにが過大であるのかを認定するのが、極めて難しいからだ。
そこで、財務省のお偉方は知恵を絞った。役員報酬の支給形態に縛りをかけろ、と。役員に賞与(従来は禁止)も出していいよ、但し一年前に届け出てね。届出通りでないと認めないよ(課税するぞ)。これを事前確定役員報酬と言う。予算会計の官公庁ならまだしも、市場経済の波に煽られる民間企業。しかも弱小の中小企業に、一年さきの収益見通しをさせて、その通りに支給しないと課税するといった、実に傲慢な規定だ。
業種によっては、使える会社もあるが、やはり少数に留まる。あまり使い勝手のいい制度ではない。だから、これを使う企業は非常に少ない。
現場を知らない財務省のお偉方は、更に妙なことを言い出した。役員報酬は、株主総会で一年分を事前に決められるものなのだから、当然毎月同額の支給がされるはず。期中で勝手に上げたり下げたりしたらオカシイ。だから、定期同額に支給されるなら認めましょう。でも、不当に上げ下げがあったら、それは利益操作だから認めない(課税するぞ)。これを定期同額役員報酬と言う。
これが、昨年以来税務の世界に波紋を投げかけ、混乱と困惑とを拡散させた原因となっている。
例えば、従来景気が悪く社長の給与を半分にして50万円支給していたとしよう。もう何年もその状態が続いてきた。しかし、ようやくリストラの効果も出てきて、資金面で余裕が生まれた。でも元の100万は厳しい。そこで資金繰りを考えて月70万円に昇給した会社があったとしよう。
改正税法は決算後、3ヶ月以内の増額なら認めるという。でも、それを過ぎての増額は認めないと言う。昨年国税庁のHPに公表された当初の質疑応答では、50万はもちろん70万の支給も一切認めないと厳しい見解が記載されていた。まあ、条文をそのままに解釈すれば、そのような回答になると思う。
思うけれど、それはあんまりじゃないか?そう思ったのは企業経営者や税理士、会計士だけではなかった。実際に行政実務を担当する税務署の職員までもが疑問を投げかけた。そんなに厳しかったら、企業は抵抗するし、私らの仕事もはかどらないよとの恐れが、彼ら税務職員を動かしたようだ。
全国の税務署から寄せられた質問に根を上げた国税局は、今年3月遅れに遅れた通達を発令した。その昨年12月の質疑応答によると、上記のケースならば、50万と70万の差額、20万円が損金不算入となると言う。感覚的には納得しやすいものだった。
でも、法人税法のどこをどう読んだら、そのような解釈になるのか、私にはさっぱり分らない。
この秋から新年度の税務調査が行われているが、未だに役員報酬でもめた話は聴かない。どうも、税務職員は意図的にスルーしている印象がある。噂だが、国税局から財務省に相当な抗議、愚痴(?)が投げ込まれているらしい。察するに、役員報酬の制限の改正をする際、国税局とのすりあわせを十分にしなかったらしい。
いくら法律を合法的に作っても、末端の役人がやりづらい法律は、やはり無理があると思う。まだ施行されてから2年足らずの改正なので、この先どうなるか分りません。どうも拙速に過ぎた印象は否めません。
ただ、悪法であっても法は法。これを恣意的に運用されたら困る。しかしまあ、こんな稚拙な税法作るなよ。困ったもんだ。
昨年の会社法の大改正により、簡単に会社が作れることなった。儲かる仕事を個人でやれば、儲かれば儲かるほど税金が高くなる個人の所得税を嫌っての会社設立は、従来からの定番だった。
会社に収入を入れて、社長として給与をいっぱい貰って経費に落として、利益を小さくしての法人税節税は、これまでも当然になされていた手法だった。
会社設立が簡単になったことで、法人税の減収を恐れた財務省は、昨年会社法改正と併せて法人税法改正を行った。一つはオーナー社長の給与の損金算入制限。もう一つが役員報酬の支給形態への制限だった。
このもう一つが、昨年以来悩みの種となっている。
役員に対する給与(役員報酬)は、従業員に対する給与とは法的性格が異なる。雇用契約に基づく従業員給与に対して、株主からの委任を受けての報酬となる役員への給与は、株主総会での承認を受けて、取締役会で決められる。
しかし、株主=経営者である中小企業では、事実上経営者の思うがままに役員報酬は決められていた。儲かれば報酬をアップするし、赤字ならダウンするが、一方法人税を払いたくないがゆえの高額報酬が維持されることも少なくない。
従来、国税当局は役員報酬を税金回避の手段とみなして、厳しくチェックしてきた。その典型が過大役員給与の損金不算入規定だった。しかし、この規定は滅多に適用されない。なにが過大であるのかを認定するのが、極めて難しいからだ。
そこで、財務省のお偉方は知恵を絞った。役員報酬の支給形態に縛りをかけろ、と。役員に賞与(従来は禁止)も出していいよ、但し一年前に届け出てね。届出通りでないと認めないよ(課税するぞ)。これを事前確定役員報酬と言う。予算会計の官公庁ならまだしも、市場経済の波に煽られる民間企業。しかも弱小の中小企業に、一年さきの収益見通しをさせて、その通りに支給しないと課税するといった、実に傲慢な規定だ。
業種によっては、使える会社もあるが、やはり少数に留まる。あまり使い勝手のいい制度ではない。だから、これを使う企業は非常に少ない。
現場を知らない財務省のお偉方は、更に妙なことを言い出した。役員報酬は、株主総会で一年分を事前に決められるものなのだから、当然毎月同額の支給がされるはず。期中で勝手に上げたり下げたりしたらオカシイ。だから、定期同額に支給されるなら認めましょう。でも、不当に上げ下げがあったら、それは利益操作だから認めない(課税するぞ)。これを定期同額役員報酬と言う。
これが、昨年以来税務の世界に波紋を投げかけ、混乱と困惑とを拡散させた原因となっている。
例えば、従来景気が悪く社長の給与を半分にして50万円支給していたとしよう。もう何年もその状態が続いてきた。しかし、ようやくリストラの効果も出てきて、資金面で余裕が生まれた。でも元の100万は厳しい。そこで資金繰りを考えて月70万円に昇給した会社があったとしよう。
改正税法は決算後、3ヶ月以内の増額なら認めるという。でも、それを過ぎての増額は認めないと言う。昨年国税庁のHPに公表された当初の質疑応答では、50万はもちろん70万の支給も一切認めないと厳しい見解が記載されていた。まあ、条文をそのままに解釈すれば、そのような回答になると思う。
思うけれど、それはあんまりじゃないか?そう思ったのは企業経営者や税理士、会計士だけではなかった。実際に行政実務を担当する税務署の職員までもが疑問を投げかけた。そんなに厳しかったら、企業は抵抗するし、私らの仕事もはかどらないよとの恐れが、彼ら税務職員を動かしたようだ。
全国の税務署から寄せられた質問に根を上げた国税局は、今年3月遅れに遅れた通達を発令した。その昨年12月の質疑応答によると、上記のケースならば、50万と70万の差額、20万円が損金不算入となると言う。感覚的には納得しやすいものだった。
でも、法人税法のどこをどう読んだら、そのような解釈になるのか、私にはさっぱり分らない。
この秋から新年度の税務調査が行われているが、未だに役員報酬でもめた話は聴かない。どうも、税務職員は意図的にスルーしている印象がある。噂だが、国税局から財務省に相当な抗議、愚痴(?)が投げ込まれているらしい。察するに、役員報酬の制限の改正をする際、国税局とのすりあわせを十分にしなかったらしい。
いくら法律を合法的に作っても、末端の役人がやりづらい法律は、やはり無理があると思う。まだ施行されてから2年足らずの改正なので、この先どうなるか分りません。どうも拙速に過ぎた印象は否めません。
ただ、悪法であっても法は法。これを恣意的に運用されたら困る。しかしまあ、こんな稚拙な税法作るなよ。困ったもんだ。