戦えない奴は信用できない。
十代後半まで、私はそう思っていた。さすがに年齢を重ねると、いろいろな生き方があり、戦いを回避するやり方も、相応の効能があり、認めてもいいと考えている。
戦い方にも色々やり方はある。印象的だったのが、表題の漫画でヒロインが言う「男の防御と、女の防御は違う」の一言。たしかに違う。あれは男には出来ないやり方だと思った。
ヒロインは、私の好みのタイプではない。むしろ苦手なタイプだった。だから、この漫画も読んだ当初は、好きになれず、読み流していた。
ところが、難病で身体を壊した頃から、私自身の心根が微妙に変わってきた。このヒロインのような、お綺麗なタイプは敬して遠ざかるはずが、何故か惹かれるようになっていた。
多分、心身が弱ったことで、逆に凛々しさを感じさせるような美人に、改めて魅力を感じるようになったのだと思う。ただ、結果的には連戦連敗であった。見事に振られたというか、歯牙にもかけられなかった感じ。まったくの対象外とされ、むしろすっきりした。もちろん、相応に落ち込んだのだが、後を引くことはなかった。
私は知らなかったが、その女性には数多くの男が声をかけていたようで、いろいろトラブルがあったらしい。病気療養を優先していた私は、昼間の講義の後は、さっさと帰宅していたが、夜の自習室では彼女を巡った事件があったと聞いた。
けっこう強引に迫った輩もいたらしいが、手ひどいしっぺ返しを喰らい、講義に出られなくなった奴もいたらしい。詳しくは知らないが、事情通に言わせると、綺麗な薔薇には棘があるとのこと。
まったく相手にされなかった私としては、むしろ自分をいささか情けなく思った。棘を刺す価値もないのか、俺は・・・
あれから十数年、とある研修会場で彼女に再会した。もう若いとは言えない年だが、その美しさはむしろ輝きを増していたかもしれない。ただ、少し険を感じたのは気のせいか。
驚いたことに向うから声をかけてきた。どうやら覚えてくれてたらしい。ちと、驚いた。研修後食事に行くことになったが、周囲の男性の視線が痛い。
話しているうちに分ったが、けっこう厳しい環境で仕事をしているようだ。だからこそ、張り詰めたものを感じたのだろう。私は今更下心はないし、気軽な気持ちで雑談に応じたので、彼女も安心して話せたらしい。
彼女の左手の薬指の指輪を眺めながら、どんな男性を伴侶に選んだのだろうと思っていたら、急にショックなことを言われた。受験生当時の私は講義が終わると、平日休日を問わずさっさと帰宅していたので、待っている人がいるのだと思っていたそうだ。彼女、私のことを妻帯者だと思い込んでいたらしい。
病気療養中だった当時の事情を話すと、えらく恐縮された。えてして美形も過ぎると、冷たくみえてしまうものだが、今の彼女は温かみを感じる笑顔が似つかわしい。
読んだ当初は、あまり好感を持てなかった表題のヒロイン小夜子だが、今では穏やかに再読できた。人間、変わるものなのだなあ~
十代後半まで、私はそう思っていた。さすがに年齢を重ねると、いろいろな生き方があり、戦いを回避するやり方も、相応の効能があり、認めてもいいと考えている。
戦い方にも色々やり方はある。印象的だったのが、表題の漫画でヒロインが言う「男の防御と、女の防御は違う」の一言。たしかに違う。あれは男には出来ないやり方だと思った。
ヒロインは、私の好みのタイプではない。むしろ苦手なタイプだった。だから、この漫画も読んだ当初は、好きになれず、読み流していた。
ところが、難病で身体を壊した頃から、私自身の心根が微妙に変わってきた。このヒロインのような、お綺麗なタイプは敬して遠ざかるはずが、何故か惹かれるようになっていた。
多分、心身が弱ったことで、逆に凛々しさを感じさせるような美人に、改めて魅力を感じるようになったのだと思う。ただ、結果的には連戦連敗であった。見事に振られたというか、歯牙にもかけられなかった感じ。まったくの対象外とされ、むしろすっきりした。もちろん、相応に落ち込んだのだが、後を引くことはなかった。
私は知らなかったが、その女性には数多くの男が声をかけていたようで、いろいろトラブルがあったらしい。病気療養を優先していた私は、昼間の講義の後は、さっさと帰宅していたが、夜の自習室では彼女を巡った事件があったと聞いた。
けっこう強引に迫った輩もいたらしいが、手ひどいしっぺ返しを喰らい、講義に出られなくなった奴もいたらしい。詳しくは知らないが、事情通に言わせると、綺麗な薔薇には棘があるとのこと。
まったく相手にされなかった私としては、むしろ自分をいささか情けなく思った。棘を刺す価値もないのか、俺は・・・
あれから十数年、とある研修会場で彼女に再会した。もう若いとは言えない年だが、その美しさはむしろ輝きを増していたかもしれない。ただ、少し険を感じたのは気のせいか。
驚いたことに向うから声をかけてきた。どうやら覚えてくれてたらしい。ちと、驚いた。研修後食事に行くことになったが、周囲の男性の視線が痛い。
話しているうちに分ったが、けっこう厳しい環境で仕事をしているようだ。だからこそ、張り詰めたものを感じたのだろう。私は今更下心はないし、気軽な気持ちで雑談に応じたので、彼女も安心して話せたらしい。
彼女の左手の薬指の指輪を眺めながら、どんな男性を伴侶に選んだのだろうと思っていたら、急にショックなことを言われた。受験生当時の私は講義が終わると、平日休日を問わずさっさと帰宅していたので、待っている人がいるのだと思っていたそうだ。彼女、私のことを妻帯者だと思い込んでいたらしい。
病気療養中だった当時の事情を話すと、えらく恐縮された。えてして美形も過ぎると、冷たくみえてしまうものだが、今の彼女は温かみを感じる笑顔が似つかわしい。
読んだ当初は、あまり好感を持てなかった表題のヒロイン小夜子だが、今では穏やかに再読できた。人間、変わるものなのだなあ~