子供の頃から、少しひねた性格だった。
周りと同じことをするのが苦痛だったわけではない。ただ、自分の関心の赴くままに行動するのが好きだっただけだ。それを頭ごなしに叱られると、絶対納得しなかった。
子供らしい狡賢さで、うなだれて説教を聞いているふりをして、頭のなかで空想の世界に思いを馳せて時間を潰していた。でも、大人は気づくのだろう。一部の大人、とりわけ学校の先生にはえらく嫌われた。
年齢を重ねると、世の中「右に倣え」「長いものにはまかれろ」と考えもなく、疑問をもつこともなく、処世することの気楽さを覚えるようになった。たしかに、このほうが楽な生き方だ。
楽なだけではない。周囲と同じように生きることは、周りの人間たちとの関係を良好にさせる。人間関係のストレスこそ、最大の悩みとなり勝ちなのだから、これは助かる。
それでも疑問は拭いきれない。何故にハンコを何回も押す必要があるのか。サインのほうがよっぽど信頼性が高いと思う。でも、必ず言われる。「規則ですから」「昔からこうなっています」「こういうことになっているんです」
考えることを放棄して、ただ決められたままの慣行を金科玉条のごとく信奉することは、ある意味怠惰だと思う。もっとも、当人は守るべき慣習を守る真面目な振る舞いだと盲信しているはずだ。
決められた当初は、それなりに必然性があったのかもしれないが、時代は変わり、状況も変化することを無視するな。もっと、考えてみろと怒鳴りたくなる。
考えることなく、ただ決められたままに行動することは、思考力を減退させる。過去に決められたことを信奉することは、怠け者の正当化だと思う。
そりゃ、守るべき伝統とかなら話は別だが、何を守るべきかぐらいは考えろ。伝統とは、守るべき価値があるからこそ守られるべきだ。それを思慮することなく、ただ堅守するだけでは伝統そのものが廃れていく。いくらでも、実例があるだろうに。
おそらくは、長きにわたって栄えた文明が滅びる前兆なのだと思う。時代は変わる、環境も変わる。人も変わるし、文明も変わる。その変化を認識できず、適切な対応を考えるより、過去の慣習にへばりつくことで安堵する怠惰が慢性化しているのだろう。
このままでは、日本は滅びるぞ。本来は、変化への対応に秀でた民族なのだが、与えられた平和に安住して、金儲けだけに邁進してきたツケだと思う。
表題の著者、五味太郎氏は著名な絵本作家だ。右に倣わず、長いものを断ち切り、自分の考えて試行錯誤を実践した変人だと思う。その主張は、必ずしも全面的に肯定できるものではないが、大人の怠惰を責める点には大いに首肯できた。
良薬口に苦し、そんな読後感が印象的でした。この人、これからも注目しておこうと考えています。
周りと同じことをするのが苦痛だったわけではない。ただ、自分の関心の赴くままに行動するのが好きだっただけだ。それを頭ごなしに叱られると、絶対納得しなかった。
子供らしい狡賢さで、うなだれて説教を聞いているふりをして、頭のなかで空想の世界に思いを馳せて時間を潰していた。でも、大人は気づくのだろう。一部の大人、とりわけ学校の先生にはえらく嫌われた。
年齢を重ねると、世の中「右に倣え」「長いものにはまかれろ」と考えもなく、疑問をもつこともなく、処世することの気楽さを覚えるようになった。たしかに、このほうが楽な生き方だ。
楽なだけではない。周囲と同じように生きることは、周りの人間たちとの関係を良好にさせる。人間関係のストレスこそ、最大の悩みとなり勝ちなのだから、これは助かる。
それでも疑問は拭いきれない。何故にハンコを何回も押す必要があるのか。サインのほうがよっぽど信頼性が高いと思う。でも、必ず言われる。「規則ですから」「昔からこうなっています」「こういうことになっているんです」
考えることを放棄して、ただ決められたままの慣行を金科玉条のごとく信奉することは、ある意味怠惰だと思う。もっとも、当人は守るべき慣習を守る真面目な振る舞いだと盲信しているはずだ。
決められた当初は、それなりに必然性があったのかもしれないが、時代は変わり、状況も変化することを無視するな。もっと、考えてみろと怒鳴りたくなる。
考えることなく、ただ決められたままに行動することは、思考力を減退させる。過去に決められたことを信奉することは、怠け者の正当化だと思う。
そりゃ、守るべき伝統とかなら話は別だが、何を守るべきかぐらいは考えろ。伝統とは、守るべき価値があるからこそ守られるべきだ。それを思慮することなく、ただ堅守するだけでは伝統そのものが廃れていく。いくらでも、実例があるだろうに。
おそらくは、長きにわたって栄えた文明が滅びる前兆なのだと思う。時代は変わる、環境も変わる。人も変わるし、文明も変わる。その変化を認識できず、適切な対応を考えるより、過去の慣習にへばりつくことで安堵する怠惰が慢性化しているのだろう。
このままでは、日本は滅びるぞ。本来は、変化への対応に秀でた民族なのだが、与えられた平和に安住して、金儲けだけに邁進してきたツケだと思う。
表題の著者、五味太郎氏は著名な絵本作家だ。右に倣わず、長いものを断ち切り、自分の考えて試行錯誤を実践した変人だと思う。その主張は、必ずしも全面的に肯定できるものではないが、大人の怠惰を責める点には大いに首肯できた。
良薬口に苦し、そんな読後感が印象的でした。この人、これからも注目しておこうと考えています。