鳩山政権の下でなされた事業仕訳に対する賛否が喧しい。
たしかに稚拙な判断も目立つし、なにより拙速に過ぎる。しかし、これまで霞ヶ関の密室で官僚が好き勝手に決めていた税金の使途を、国民の目にさらして判断(つまり決定ではない)するパフォーマンスには、多くの国民が溜飲を下げたことは間違いない。
予想はされていたが、予算を切られる官僚側の反論が実に情けない。今まで納税者たる国民に対する説明などする慣習がないので、いざ国民を前にして税金の使途を説明することにアタフタしている有様だ。
もっとも最終的な予算決定は、やはり財務省が握っており、つまるところ財政赤字削減のためのパフォーマンスに過ぎないとの評は一面の事実であることは否定できない。
ただ、費用対効果の基準で科学振興予算を論じるのは如何なものか。とりわけ基礎科学の分野は、長期的な視点で考えていかねばならぬ。いくら予算をつぎ込んでも、その成果が出るのは不確定なのが基礎科学なのだ。それでも、資源の少ない日本にあって、最も大切な資源である人材育成の観点からも、基礎科学への国の支援は必要不可欠だ。
また、文化遺産や歴史的施設の保守管理も地味ながら貴重な分野であり、国家が財政的支援を地道に続けなければ守ることの出来ないものだ。人間どうしても派手な分野に目がいきがちだが、文明は維持管理が十分になされぬ限り、必ず衰退する。箱物を作るのは簡単だが、それを維持することは地味に難しい。
その困難な作業を1000年以上維持してきたのが、法隆寺の五重塔であり、宮島の厳島神社だ。必ず腐食し老朽化する木材建築による建造物を維持管理するノウハウは、未だに完全に解明されていない。
なぜ、地震や台風といった自然災害にも耐えられたのか、今日の科学をもってしても完全には解明できていない。コンピューター解析の技術を使ってもなお、その不思議な仕組みは全貌を明らかにしてはくれない。
しかし古来よりの知恵が職人たちに継承され、自然災害や戦争などの人災からも守り続けられてきた文化遺産の数々。どうやって守ってきたのか。その謎に挑んだのが表題の作品だ。
これはNHKの特集番組で企画されたものを、改めて本に書き直したものだ。私は当初、TVで観てうろ覚えだった部分を、この本でより詳しく知ることが出来た。
まったくもって、古代の知恵の深さには驚愕を隠せない。木材という均質でもなく不安定な建材を用いて、不朽の建造物を夢見た古代の職人たちの技術の高さは驚異としか言いようがない。そして、それを保守管理する知恵が継承されてきたことにも驚きと敬意を表さざる得ない。
ハイテクではなく、ローテクにこそ日本伝統の叡智は込められていると思う。手間賃は高いけど、職人を大事にしなきゃいけませんね。
たしかに稚拙な判断も目立つし、なにより拙速に過ぎる。しかし、これまで霞ヶ関の密室で官僚が好き勝手に決めていた税金の使途を、国民の目にさらして判断(つまり決定ではない)するパフォーマンスには、多くの国民が溜飲を下げたことは間違いない。
予想はされていたが、予算を切られる官僚側の反論が実に情けない。今まで納税者たる国民に対する説明などする慣習がないので、いざ国民を前にして税金の使途を説明することにアタフタしている有様だ。
もっとも最終的な予算決定は、やはり財務省が握っており、つまるところ財政赤字削減のためのパフォーマンスに過ぎないとの評は一面の事実であることは否定できない。
ただ、費用対効果の基準で科学振興予算を論じるのは如何なものか。とりわけ基礎科学の分野は、長期的な視点で考えていかねばならぬ。いくら予算をつぎ込んでも、その成果が出るのは不確定なのが基礎科学なのだ。それでも、資源の少ない日本にあって、最も大切な資源である人材育成の観点からも、基礎科学への国の支援は必要不可欠だ。
また、文化遺産や歴史的施設の保守管理も地味ながら貴重な分野であり、国家が財政的支援を地道に続けなければ守ることの出来ないものだ。人間どうしても派手な分野に目がいきがちだが、文明は維持管理が十分になされぬ限り、必ず衰退する。箱物を作るのは簡単だが、それを維持することは地味に難しい。
その困難な作業を1000年以上維持してきたのが、法隆寺の五重塔であり、宮島の厳島神社だ。必ず腐食し老朽化する木材建築による建造物を維持管理するノウハウは、未だに完全に解明されていない。
なぜ、地震や台風といった自然災害にも耐えられたのか、今日の科学をもってしても完全には解明できていない。コンピューター解析の技術を使ってもなお、その不思議な仕組みは全貌を明らかにしてはくれない。
しかし古来よりの知恵が職人たちに継承され、自然災害や戦争などの人災からも守り続けられてきた文化遺産の数々。どうやって守ってきたのか。その謎に挑んだのが表題の作品だ。
これはNHKの特集番組で企画されたものを、改めて本に書き直したものだ。私は当初、TVで観てうろ覚えだった部分を、この本でより詳しく知ることが出来た。
まったくもって、古代の知恵の深さには驚愕を隠せない。木材という均質でもなく不安定な建材を用いて、不朽の建造物を夢見た古代の職人たちの技術の高さは驚異としか言いようがない。そして、それを保守管理する知恵が継承されてきたことにも驚きと敬意を表さざる得ない。
ハイテクではなく、ローテクにこそ日本伝統の叡智は込められていると思う。手間賃は高いけど、職人を大事にしなきゃいけませんね。