ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

鯖の味噌煮

2023-10-25 09:23:29 | 健康・病気・薬・食事

子供の頃は好きではなかったのに、年を重ねるにつれ好きになった料理がある。それがサバの味噌煮である。

より正確に言えば、子供の頃は味噌汁も好きではなかった。しかし出されてものは残さず食べるように躾けられた。これは祖母仕込みであり、逆らうことはあり得なかった。

一人暮らしをするようになり、減塩を中心とした食事療法を実行すると必然的に味噌を使う料理は減る。ちなみに30年ほど前の減塩味噌は、あまり美味しくなかったことも一因ではある。

それから20年以上経ち、医者から減塩の指示は無くなったが、もう塩分の濃い料理は受け付けなくなっていた。お刺身でさえ、醤油を少し付けるだけで食べている。

転機は9年前の心筋梗塞による入院生活であった。もちろん減塩低カロリー食であったが、美味しい献立が多かった。そのなかに鯖の味噌煮があったが、薄味でありながらしっかりと味噌の香りが残り、かつ鯖の臭みも消えていた。多分、鯖の味噌煮を美味しいと思ったのは30年ぶりだと思う。

幸いにして銀座の街は、美味しい魚料理を出す割烹料亭が散在しており、プロの料理人が作る美味しい鯖の味噌煮を堪能できた。ただ、それらの割烹料亭は小さい店が多く、大半がコロナ禍による売り上げの大幅減には耐えられなかった。

今年、銀座から神田の街へ事務所を引っ越した時、美味しいお店がどれだけあるのかが結構な不安材料であったのはスタッフには内緒だ。でも神田の店は銀座に劣らず古い街で、刺身や寿司ならば値段相応のお店がけっこうあった。強いて言えば、副菜の味というか作りは、さすがに銀座のほうが上に感じていた。

また焼き魚や煮魚も、贅沢を云わなければ十分満足のいく店が幾つかあった。でも、やはり銀座には少し劣る。そう思っていたらあった、あった。鯖の味噌煮の美味しいお店。

はっきり言って店の外観からは、想像もつかない味だった。50代と思える料理人はともかく、焼きに煮込みにと忙しそうなもう一人の料理人は70代らしい。カウンター席のみで、7人が限界。しかも12時半には品切れとうか、売り切れになって客を断る。

多分、これ以上の客数は年齢的に捌けないのだと思うが、出される料理は別物。出されるマグロの切り身は新鮮で張りがある。これは市場に店主自ら足を運んで選んで仕入れているのだと思う。そのせいか、人気のマグロ定食は売り切れが早い。

一方、私が頼んだ鯖の味噌煮は、味噌は薄口だが匂いけしの生姜が姿を見せない繊細な仕事ぶり。しかも骨は丁寧に除いてあり、崩れるほどには煮込まないが、口に入れた時に柔らかく崩れる触感は料理人の技量の高さを裏付けている。

このレベルの鯖の味噌煮は、銀座でもあまり多くないと思った。見た目はまったく名店には見えないかれど、出される料理の質は高い。これは掘出物だと、ニヤニヤしながら昼時を待っている食いしん坊の私です。

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肉吸い

2023-09-01 09:16:06 | 健康・病気・薬・食事

初めて「肉吸い」を見かけたのは、20年以上前の大阪は天王寺界隈の定食屋だった。

見かけた時は、ただの肉ウドンだと思っていた。でもメニューに肉ウドンはなかった。すると知人が「あれは肉吸いだよ。寒い時食べると心底温まるよ」と教えてくれた。私の目当ては明石焼き定食だったので、その時は頼まなかった。

ただ「肉吸い」という名称が強烈に印象に残った。

あれから十数年、週末YouTubeをふらふらと料理関係の番組を漁っていたら、懐かしくも「肉吸い」の簡単レシピを紹介している動画を発見した。改めて視聴してみると、なんと白だしで煮込んで牛肉の出しを効かせた汁物だと知った。

その番組では、ウドンは入れず、牛肉の肩落としと豆腐、青ネギだけで作っていた。これがまた美味しそうだった。

この夏は異常な暑さで、どうしても冷たいものを飲んだりしがち。ここいらで熱くて栄養バランスの良い食事が必要だと思っていたので、自己流で肉吸いを作ってみた。

牛肉の切り落としは事前に軽く煮て、灰汁をとっておく。それから鍋に白だしを8倍くらいに薄めて、味りんを少々加えて火にかける。具材は牛肉の切り落としと豆腐だけ。沸騰したらすぐに弱火にして、細ネギを加えて完成。これなら疲れて帰宅した夜でも、すぐに作れる。ちなみに物足りなく感じたら、味の素を一振りで誤魔化す。

はい、牛肉の出汁がが甘く出ており、どんぶり一杯、軽くいけます。でもこれでは野菜不足。だから残りの汁を使って野菜汁を追加で作ります。野菜は冷蔵庫に隠れていた残り物で十分。私は夏を意識してオクラやキャベツ、椎茸などを適当にぶち込んで、軽く煮こんで頂きました。

多分、もっと丁寧に作れば、さらに上品な味になると思いますが、早い、手軽、手抜きをモットーとする私にはこれで十分。なお本場では、卵ご飯やウドンと組み合わせるみたいですね。

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もつ鍋屋

2023-08-14 09:30:08 | 健康・病気・薬・食事

景気が悪くなるともつ鍋が流行るんだよな。

そう私に呟いたのは、ある飲食店のオーナーだった。丁度バブルが弾けて、銀行の統廃合が相次いだ頃だった。当時、確かに雨後の筍のようにもつ鍋店が繁華街に増えだした。

これはモツと呼ばれる内臓肉が安いからだ。私はそのオーナーにもつ鍋を献立に増やすのですかと問うと、その方は首を振り「面倒だから嫌だ」と答えた。

変に思ったのは、このオーナー、自ら包丁を握るだけでなく、献立作り、ライバル店への視察と研究熱心な方で、仕事に関しては面倒くさがることは皆無であったからだ。

不審がる私に教えてくれたのは内臓肉の仕入れの難しさであった。正肉と呼ばれる赤身の肉と内臓肉では仕入れルートが違うという。解体する市場自体が別系統であり、取り扱う業者も異なるそうだ。

そして、内臓肉の仕入れは年季が要る。なにせ足が速いというか、日持ちしないのが内臓肉である。肉の鮮度を見抜く目がないと、良くない物を押し付けられるという。なにしろ内臓肉を扱う業者は癖が強い。若い店だと半ば強引に鮮度の落ちた内臓肉を押し付けられるし、ベテランでも気が抜けないという。

仏教の影響か日本人は長年動物の肉を避けた食生活を送ってきたので、肉の扱いにはいささか不慣れな面がある。赤身の肉ならば判断しやすく、かつ研究熱心な日本人は肉食中心の欧米に負けないくらい良質な精肉が流通している。

しかし内臓肉に関しては、まだまだ歴史が浅い。そして古くから内臓肉を取り扱ってきたのは、いわゆる被差別部落の人が多い。そこに戦後は半島出身者が大量に入り込んだため、内臓肉の流通は癖の強い人が多いそうだ。

とはいえ、内臓肉は調理方法さえ間違えなければ非常に美味しい。新鮮な貝のような歯ごたえと、甘みのある脂肪にくるまれたホルモンは癖になる美味さがある。幸いにして私は銀座で内臓肉の調理に自信があるというフランス料理の店を知っていたし、渋谷にも美味しいホルモン料理を出す店を知っていたので、妙に舌が肥えてしまった。

でも、上には上があるというか、関東なら川崎のちょっと怪しい雰囲気の街にひっそりある焼き肉屋のホルモンが絶品だったりして、正直かなりビックリしたことがある。呼び込みの婆さん連中がいなければ、もう少し気軽に通えるんですけどね(分かる人は分かるはず)。

また大阪の羽曳野も凄い。市場が近くにあるせいか、20年前にここで食べたモツ鍋は、ちょっとレベルが違いました。紹介者がいたので店がどこにあるかが分からないのが悔しい。っつうか、あの小うるさい店主の年齢を考えると、今も営業しているかが不安。もう一度食べたかったなぁ。

なんだって、この連日猛暑が続く最中に、もつ鍋の話をするかというと、最近近所に美味しいホルモン焼き肉屋を見つけたから~♪ その店、ランチはもつ鍋中心だけど、夜になるとホルモンを店員さんが焼いてくれる。これが嬉しい。なにせ内臓肉は部位によって焼き加減が全部違う。慣れていない私には上手に焼く自信がない。

最近の週末のお楽しみなんですよ。まぁカロリーは気にしているので、肉1に対して野菜3で食べていますけどね。それとご飯は食べない。これだけでかなりカロリーを減らせますからね。

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クロワッサン

2023-07-18 13:13:52 | 健康・病気・薬・食事

YouTubeで食事に関する番組を作っている人はかなり多い。また外国人のユーチューバーの中には、母国と日本のものを比較した番組を出していることが多々たる。

なかでもフランス人はパンに対する拘りが強く、とりわけクロワッサンについては黙っていられないらしい。日本語で番組を発信しているのがベベチャンことオレルアン氏とアマさんことアマンディーヌさん。この二人、立場も育ちも違うのだけど、日本が大好きでほぼ定住している。

この二人に限らないのだけど、フラン人はワインとパンにはうるさい。男性のベベチャンがワインに厳しいのは分かるが、アマさんもブルターニュ地方出身の自称フランスの田舎娘だけに、ワイン蔵が身近にあったので、ワインには一言、二言ある。

それだけでなく、二人ともパン、とりわけクロワッサンに厳しい。この二人は共に日本在住のフランス人としてコラボ動画を作ったこともある。またベベチャンは友人のパティシエのフランス人と共に都内のパン屋さん巡りをしたりして、クロワッサン評定をしたりもしている。

小柄なのに大食いのアマさんも、やはり酒田市在住の友人のフランス人を伴い、コンビニのクロワッサンから個性的なパン屋のクロワッサンの食べ比べ動画を作ったりしている。

その評価の違いについては、それぞれの番組を見てもらうに限るので、ここでは取り上げない。ただ、日本人がお米の良し悪しを評価するのに負けず劣らず、繊細にして大胆な評価をかますのが非常に面白いとだけ書いておく。

ちなみに日本ではフランスパンとして知られているバゲットに関しても、フランス人は非常にうるさく、かつ細かい。ついでに言えば、チーズに関しても一人一人好みはあれども、その評価はかなり辛辣でもある。

クロワッサンに話を戻すと、私は複雑な気持ちになる。

いや、好きなのだが、如何せんクロワッサンはバターを大量に使うせいかカロリーが高いのだ。まぁ私に言わせれば、美味しさの秘訣は塩とカロリーであり、クロワッサンに限らずパンはその二つを過剰に使う傾向が強い。そして認めなくてはいけないが、そのほうが美味しいのだ。

無塩パン、食べたことありますか。

私は急性腎不全の最中、この無塩パンを必死で食べていました。私は病気は食べて体力つけて治す教の信者なので、不味かろうと必死に我慢して食べていました。無塩のおかゆ、無縁のパン、そして無塩でかつ低カロリーのクロワッサン・・・

あたしゃ、これで心が折れた。不味い、本気で不味い。食パンやおかゆはまだ我慢できた。でも見た目が美味し気なクロワッサンが無塩で、バターの香りが全然しないことにめげてしまいました。栄養士さんの苦心の賜物なのは分かるけど、外見と相反するあのまずさは、精神的ダメージが大きすぎた。

涙ぐみながらクロワッサンを食べる私を不審に思った看護婦さんに本音を話すと、けっこう真剣に聞いてくれた。塩分制限が緩和されたのは、その翌週のことでした。どこまで影響があったのかわからないけど、あのくそ不味いクロワッサンこそ転機であったと、私は信じています。

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蒸しパン

2023-07-12 09:11:49 | 健康・病気・薬・食事

硬くなったパン、どうしていますか。

最近のパンは、添加物が優秀なのか、あまりパンが固くなることはないみたいです。でも、私が子供の頃は、食パンでさえ固くなることが珍しくなかった。まぁ、固くなる前に黴が付くのが早いのですが、冷蔵庫に入れておけば黴はある程度防げる。ただし、その場合、パンが固くなってしまう。

硬いパンは美味しくない。でも工夫次第でなんとかなる。一番簡単なのは、蒸し器に入れて蒸気で柔らかくすることだ。食パンならば、これが一番簡単。しかし、相当に硬くなっていたり、黴がしつこくついているパンは、これではダメだ。

母は包丁で叩き割り、小鍋に入れて牛乳と砂糖、バニラエッセンスなどを加味して即席のおやつにしてくれた。たしか砂糖ラスクにしてくれたこともあるし、一晩溶き卵に漬けてフレンチトーストにしてくれたのも楽しい思い出だ。無駄なく食材を食べきる智恵だと思っている。

ところで20年以上前だが、当時ベルギーに駐在していた友人夫婦の元を訪れた。ベルギーはフランス料理とドイツ料理の双方の影響を受けたせいか、グルメの国として知られている。でも私に言わせれば、グルマン(大食)の国である。コース料理なんて、前菜の段階で満腹になりそうなボリュームにめげた覚えがある。

友人宅に泊まったのだが、なにやら朝が異常に早い。まだ5時だというのに、着替えて外に行こうとするから、どうしたのかと訊いたらパンを買いに行くという。なんでも当地のパンは厳しい規制があり、柔らかさを保つような添加物は認められないそうだ。

だからパンはその日に食べる量を、その早朝にパン屋で買っておく。早朝に買ったパンは、その日のうちに食べないと、翌日には硬くて食べられないそうだ。妙に思い、蒸かせばいいじゃないかと言ったら、夫婦で顔を見合わせて黙っている。

ん?なんだ、この空気は。

地球を半周回って久々にあった友人である。いちいちツマらんことで喧嘩するのも馬鹿らしいので、その場は流した。どうもこの家庭では、蒸しパンという概念はないらしい。しかし、まぁ余計な添加物を許さないのは、パンに拘りのある国として分からないでもない。

ただ正直言うと、添加物がないパンは少し旨味に欠けたように思えた。黙っていましたけどね。食生活というか食事の習慣は、人々の暮らしのなかでも最も頑固な部分なので、この点に関しては議論などは避けるようにしている。

余談だが、私は固くなっていないパンでも蒸すことがある。冷蔵庫から出したばかりのバターは固く、なかなか上手くパンに塗れない。オーブントースターで軽く焼いてバターを塗りやすくしても良いが、蒸すことでフカフカにしたパンにバターを挟んで食べるのも美味しい。

私は好きなのだが、きっと蒸してフカフカにしたパンなんて気持ち悪いと思う人も一定数いるのでしょうね。

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