90分で決着がつかず、延長30分しても決着が付かない場合に行われるのがPK戦だ。
故・オシム監督はPK戦が嫌いで、すぐにロッカールームに引き上げてしまうことで有名だった。たしかに過去幾度となく行われたPK戦では、視るのが辛かった場面があった。
記憶に残っているのは、アメリカW杯でのイタリアの英雄バッジオがPKを外した場面だろう。際どい試合を勝ち抜けてきたイタリアは、バッジオの奇跡的とも云えるプレーに何度となく助けられた。そのバッジオがPKを外して試合に負けてしまったのだ。なんという悲劇、別にイタリアのファンでもない私でも、それまでのバッジオの活躍を思えばあまりに残酷だと感じてしまった。
そんなPKを得意にしていたのが、日本代表最多出場記録を持つ遠藤保仁だ。代名詞ともいえるコロコロPKを決めていたが、本人はあまり騒がれるのを楽しいとは思っていなかったと述べている。でも、それは遠藤の嘘だと思う。ただ相手を気遣っての科白で、内心は絶対決めてやると練習を積み重ねていたはずだ。
そう、PKにはPKに合った練習が必要なのだ。
当たり前だと思っていたが、実は案外とPKの練習には格差があるらしい。らしいと推測になるのは、その練習方法が公開されていないからだ。今年の高校サッカー選手権では決勝戦がPK戦での決着となったが、他の試合でもけっこうあった。
特に優勝候補の筆頭であった静岡学園はPK戦で敗れているし、優勝した前橋育英は二度のPK戦を制している。ど真ん中に蹴り入れるPKもあったが、前橋育英は左サイドネットに突き刺すわりと難易度の高いシュートでPK戦を勝利に結び付けている。
よくPK戦は運だと云われることがあるが、やはりしっかりとPK戦を見据えて練習しているチームが激戦を制していると思われる。実は近年、日本の高校サッカー選手権は世界的にも注目を集めている。
世界の大半の国では、これほど盛り上がる高校生の全国大会は存在しない。なにせ決勝戦は5万人を超える観衆が集まる。しかも、選手の技量は高く試合は見応えがある。特に決勝戦でのPK戦の激しさに注目が集まった。5万人の観衆の前で蹴るPKはプレッシャーが半端ないですから。
それを受けてサッカーダイジェスト誌が日本代表の最近のPK戦を取り上げ、ユース出身の選手と高校サッカー部出身者との差異について記事を出している。
>現地時間12月5日、カタール・ワールドカップ(W杯)の決勝トーナメント1回戦で、FIFAランキング24位の日本は、同12位のクロアチアと対戦。43分に前田大然が先制点を奪った後、55分にイバン・ペリシッチに同点弾を許し、1-1でPK戦に突入した末に、前回準優勝国に敗れた。
またしてもベスト16の壁に阻まれ、日本中が悲嘆に暮れるなか、ツイッターではあるユーザーが紹介したデータが話題となっている。それは今大会と南アフリカ大会、日本がW杯でPK戦に挑んだこの2大会で、キックを成功させた選手全員が高校サッカー出身であり、失敗した選手全員がJクラブのユース出身というものだ。下記はその一覧である。
南アフリカW杯 vsパラグアイ
○ 遠藤保仁(鹿児島実業)
○ 長谷部誠(藤枝東)
× 駒野友一(広島ユース)
○ 本田圭佑(星稜)
カタールW杯 vsクロアチア
× 南野拓実(C大阪ユース)
× 三笘 薫(川崎ユース)
○ 浅野拓磨(四日市中央工業)
× 吉田麻也(名古屋ユース)
このデーターだけでは分母数が少なすぎて結論を出すことは無理だが、リーグ戦が中心でPKで試合を終わらせることがないユースサッカーと、日程の関係もありPKで決着を付ける高校サッカーとでは差異が生じていることは注目に値すると思う。
ただし一応挙げておくと、JリーグでPKが一番上手かったのは阿部勇樹選手です。なんと20本のPKを全て成功させています。そして彼は市原ユース育ち。PK名人で知られる遠藤以上ですから凄いものです。まぁ個人の技量差もあるとは思いますけどね。