惑星カレスの魔女 ｼﾞｪｲﾑｽﾞ・H・ｼｭﾐｯﾂ

意外な組み合わせって奴はたしかにある。

関東育ちの私からすると、ご飯のおかずにタコ焼きやお好み焼きの組み合わせは、まさに意外な組み合わせ。はじめてお目にかかったときは、思わず目を疑ったぐらいだ。

もっとも私自身、食パンに納豆をのせてチーズを振りかけてオーブンで炙って食べたりすることもある。けっこう美味しいと思うのだが、ある女性から露骨に変人扱いされたことがある。

まあ、嗜好なんて人それぞれなので当人が満足できればいいと思う。

意外といえば、ＳＦ（サイエンスフィクション）と魔法の組み合わせも該当すると思う。空想科学小説と魔法の組み合わせなんて矛盾しているようだが、実のところ似たもの同士でもある。

携帯電話どころか無線さえ知らない１８世紀の人間がみたら、２１世紀の世界の人々の多くが金属製の小さな箱に話しかけている様は、魔法の世界としか思えまい。

科学技術の進歩は２１世紀の我々でさえ、その中味を理解しているとは言いがたい状況を作り出してしまった。中味はよく分らないが、とりあえず使い方を知っている程度の魔法使いが、今の我々なのであろう。

ＳＦ小説の世界では初期の頃は進んだ科学と魔法と超能力がゴッチャ煮状態で、とにもかくにも面白ければ良いといった作品が数多く刊行された。

しかし、キャンベルがＳＦの質向上を目指して、スペースオペラを排して本格的なＳＦ小説の普及に努め出したことを契機に、魔法の物語は急速に姿を消した。

おりしもアャ轟v画は最盛期で、ついに人を月面に立たせるに至り、ＳＦ小説は近い将来に起こりうるべき物語としての地位を獲得した。

根強いファンを持つ魔法ものは、ファンタジーの世界にて確固たる地位を築き、ＳＦとは距離を置くようになってしまった。しかし、どこの世界にもひねくれた頑固者はいるようだ。

そんな一人が表題の作品の著者だ。宇宙を駆け巡る自由商人の商船に便乗して、混乱と騒動と冒険とを巻き起こす魔女を登場させて、古くからのスペースオペラのファンを歓喜させた。かくゆう私もその一人。

たまには、こんなハチャメチャなＳＦ兼魔法の物語も悪くありませんよ。ジプリの宮崎駿が表紙画を描いた文庫本が、創元推理文庫から出てますので、機会がありましたらお試しあれ。