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いま、１１時１５分。雨が降り出した。風はそれほどにはない。庭の夏菊の茎と黄色い花玉が静かに揺れているくらい。茎が長いから、揺れの震幅がゆっくりしている。アスパラガスのひ弱な茎と葉っぱは柳に風折れなしだろう。
朝ごはんはトースト。
熱々にマーマレードをつけて食べた。
冷たいミルクも飲んだ。
プラス、イチジク。我が家の畑でとれたもの。
ラストワンだろう。甘かった。
泣いた泣いた。ポロポロ涙がこぼれて、落ちた。
タオルが湿っぽくなった。タオルで涙を何度も拭いたから。
テレビが泣かせてしまった。今朝の7時過ぎて、ドキュメンタリ番組が放映された。
東北の津波で被害を蒙ったスーパーマーケットの復興を追ってあった。家族なと従業員の数人を失った店主の息子、跡継ぎさんが復興を誓った。苦悩苦難を乗り越えて、9年ぶりに店が再開した。
なくした姉には一人息子がいた。彼を引き取って、家族とした。後押しした。その甥っ子がまた苦難の道を歩いた。家を飛び出した。
従業員とその家族に支えられ、支えつつ月日が流れた。信頼が深く強くなって行く。互いに復興に勤しむ日々。泣けた。泣けた。あとを継いだ人達の苦悩と歓喜が織り混ぜてあった。
台風10号は今日日曜日夕刻あたりから激しくなるらしい。
台風の中心気圧は、920ヘクトパスカル。最大風速は80キロメートルにもなるらすい。
家屋は揺れるだろう。ギシギシガタガタ軋むだろう。そこらにあるものは、空高く舞い上がるだろう。
火曜日の朝はどんな朝になるだろう。虫たちが草に戻って来て、りりりりりりり、と鳴いているだろうか。
耐えられるだろうか。
大暴れに暴れて、溜まりに溜まった鬱憤を晴らして、月曜の昼間には過ぎて行くらしい。
無事でありますように。無事でありますように、と祈るしかない。
りりりりりり、草虫が鳴いている。
もうあと一時間ほどで夜が明ける。
いまは静かだ。
リリリリ、リリリリしか聞こえない。
虫たちはやがてこのあとに、嵐が来ることを知らないでいる。
来たら、さぞかし驚くだろう。あわてふためくだろう。
もうこんなに穏やかには鳴けなくなるだろう。
嵐よ、此処には来ないでくれないか。
