メキシコ・シティーに来て最初に気づくのは車の絶対数が多いことである。最近は新しい車も増え、有名な排気ガス・スモッグ環境も以前よりは緩和されたようである。
主要道路の交差点の信号点滅は長い。その間、大人、子どもを問わずもの売りが来る。新聞、食物、自動車用品、雑貨まで老若男女が車の止まっている短い時間に車の横をすり抜け、売り歩く。次に多いのがフロントガラス拭き。信号点滅間で仕事をして1ペソ、と効率よくやってくれる。芸をやって稼ごうとする者もいる。子ども連れで獅子舞のような芸やら、子どもを肩車して踊らせる、口にガソリンを含んで火炎をあげる、など様々である。いずれも顔を絵の具で色鮮やかに塗って目立つ格好をしている。止まった車がみんなチップを渡すわけではない。それでも何かをして稼ごうと一生懸命に知恵をしぼっている。たまに子どもをおんぶして手を差し出す女性もいる。
田舎都市での出来事だがホテル宿泊者の車を朝早くから洗い拭きしていた子どもには感心する。お金になりそうな他州の車を選定して洗う。そして車の主が来るまで待機していて客が現れたら請求するしたたかさを持っている。嫌らしいのは「路上駐車を監視していた」と勝手に理由をつけてペソを請求する男。チャッカリしているのが銀行の前で警備を兼ねた路上の駐車番人。お客を路上駐車させて(鍵を預ける)当然の権利としてチップをもらっている。だがその場所は特別で、毎日、親分がお金の回収に回って来る。彼はワーカーとして使われているだけだが、まともな仕事より気楽でよいのだろう。街全体に車の駐車場が少なく車の絶対量が多いのか、密集し過ぎた街だからか、車に関連したアイデアひとつが庶民の命綱である。続く(自悠人)