ミャンマーの首都ヤンゴンでは近隣諸国の首都と異なりバイクが見かけられず、車は整然と走っている。中心から直径40kmの範囲内では軍関連以外はバイクは禁止だそうだが、これは騒音からも空気汚染からも住民を守っている。時差は日本と2時間半、この30分は珍しいがタイとの違いがミャンマーの誇りだ。人々はゴム草履が殆んどだが、どこにでもあるパゴダ(仏塔)に気楽に立ち寄りお祈りしていくのに便利だからだ。無数にある金ぴかの仏塔の門前には屋台や露店があり、美味しそうなエビのかき揚げを売っている。列車の内部はゆったりとした板張りで、ガタンゴトンと身体も揺れる。日本の中古車が大もてで、車体には旧所持者の名が…曰く、「遠藤商店」「能登観光バス」「郡山通運」「船橋新京成バス」…「新」とはいつ?と思いつつ、古い日本車が大切に使われているのを喜んだ。
懐かしい風景の中、行き交う人々は笑顔が美しい。日本人そっくりで「生まれた時お尻に蒙古斑があることまで同じ」と共通性を何度か聞いた。篤い信仰心から人は正直、誠実だ。ヤンゴンから列車で2時間のパゴーは何て素敵だったことか。自転車に客用座席を設置したサイカーというのが半日なら一人3ドルというので二台頼んだ。運ちゃんは汗だくでペダルを踏んで見どころへ案内してくれた。巨大な寝像が青天井の下で微笑んでいるこの町は牛さまがお通りになる時人は待つ、胸温まる街だ。チャッカワイン僧院では若い僧侶たちの食事風景等、生活の一端を見学させてもらった。僧たちの多くが微笑みを返してくれた。サイカーの二人に6ドルのところ10ドルあげたら喜んで列車が出るまで駅で見送ってくれた。メイミョーという街で「ヒロミカフェ」を探していたら、あるホテルのボーイさんがバイクに乗せてくれ、着いたら引き返し、歩いていた夫も乗せて来てくれた。根っから親切な人々。かつて地理でビルマ(ミャンマー)とかラングーン(ヤンゴン)、イラワジ河を学んだが、その地を訪れ、人々と笑顔を交換する日があろうとは想像しなかった。続く(彩の渦輪)