ワンワールド利用の今回の旅、筆者の目玉は地球六大陸の最南端を訪問または再訪することだ。怒涛にもまれる岬は神秘性と強風以外に何もないだろうし無意味と思う 方もいるだろう。だがいくつかの場所は再訪であり、20数年前の記憶とその訪問過程等、現在と比較が出来る。今回最南端や南西端3か所を訪れたが、大自然の厳しさに変わりはなかった。そこへ行く新ルートでも様々な体験を得られ、旅の変化が楽しめた。鬼が出るか蛇が出るか、出たとこ勝負で地球上の人との繋がりを大切にして最初の10カ国ほどが終わった。
ユーラシア大陸最西の果てとしてはロカ岬が有名で、多くの人が訪ねる。首都リスボンに近いからだろう。筆者もかつてその岸壁に立って遠くUKを眺めたことがある。今回は最西南端を目指し、列車とバスを使っての不便な旅となった。サグレス町を目指しリスボンはオリエンテ駅からチュネス経由で約4時間かけてラーゴスの街へ。アルガルヴェ地方の首都だ。紀元前300年ごろから大西洋・地中海交揚の恩恵にあずかって繁栄した歴史的には古い街だが今は国際的なリゾート地だ。宿を決めてからバスでサグレス町に向かった。着いた街から地の果てサン・ヴィセンテ岬までは、飛び込んで道を尋ねた事務所の女性が、ちょうど関連施設に行くとかで車に同乗し連れて行ってくれた。距離にして6kmあった。帰りはタクシーの迎えまで彼女が段取りしてくれた。彼女の名はジャクリーン、地震見舞いも言ってくれたが何とも親切な人に会ったものだった。4月初旬はオフシーズン、強い風の中に観光客はまばら、白い灯台だけが目立ち75mの絶壁に打ちつける波は紛れもなく怒涛だ。その飛沫を見つめながら歴史的背景を思った。スペインのバレンシアで殉教した守護聖人サン・ヴィセンテの遺体が漂着したという伝説から名命された岬だ。砕け散る波に地の果てを感じさせる場所だ。寒々とした岩場に怒涛音が強い風と共に唸り、流雲が舞う。生きている大自然だ。人間が作った微弱な社会を思わずにはいられなかった。(自悠人)