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<地理的表示(GI)保護制度> 登録番号 10. 伊予生糸

2021-01-04 08:10:49 | 農産品

 登録番号 第10号 伊予生糸

 

 特定農林水産物等の区分 第42類 生糸類 家蚕の生糸

 特定農林水産物等の生産地 愛媛県西予市

 登録生産者団体 愛媛県西予市蚕糸振興協議会

 特定農林水産物等の特性 時間をかけて丁寧に繭から糸を引き出すため、蚕がS字状に吐いて作った糸の繊維のうねりがそのまま残り、嵩高となる。また、光沢があり、ふんわりと柔らかい風合いの糸。

 地域との結び付き 生の状態で冷蔵保存した繭を原料とする生繰り法により、テンション(張力)を抑えつつ低速で、かつ、多数の繭から繰糸する多条繰糸機を用いて生産する貴重な産地。

*https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/register/i10.html より

 

「伊予生糸」は他の産地の一般的な生糸と比べて、白い椿のような気品のある光沢があり、体積当たりの重量が2/3以下と嵩高で、ふんわりと柔らかい風合いを有するのが特徴の生糸です。着物などに求められるシャリやコシ、ハリ、ふくらみなどの特性を備えており、織物にすると柔らかさと暖かさがあるうえ、着物では着崩れしにくく、帯なら締まり具合いが良いなど、別格とも言える品質を有しています。その品質が高く評価され、古くから伊勢神宮や皇室の御料糸として採用されています。

「伊予生糸」の特性は繰糸の方法と四国山系を源とする水に由来するとされています。
 国内の代表的な生産地では、加熱乾燥させた繭から繰糸する方法が採用されています。繭を加熱乾燥すると、中の蛹(蚕)は干乾びて蛾になって繭を破って出てくることはなく、乾燥状態なので繭にカビが生えることもありません。したがって、年間を通じて繰糸するには、一定の時期に大量に収穫した繭を長期保存できるこの方法が適しています。
 それに対して「伊予生糸」の生産は、「生繰り法」を採用している点が最大の特徴です。繭は昆虫が作った蛋白質なので、たとえ僅かでも熱にあたると硬く変性します。生糸本来の良さを活かすためには、生繭からひいた生糸の方が優れるという考えに基づき、「伊予生糸」は、あえて繭を加熱乾燥させず、生の状態で冷蔵保存(5℃~6℃、保存限度1年)したものを原料として糸を引き出す、昔ながらの「生繰り法」を採用しています。
 繰糸の作業は、四国山系をその源とする水を使い、多条繰糸機(たじょうそうしき)を用いて低速で行います。多条繰糸機は、糸の張力を抑えつつ低速で、かつ、多数の繭から繰糸することのできる繰糸機であり、他の生産地で使用されている自動繰糸機と比較して、手間がかかって生産効率が良くありません。しかし、このような繰糸条件により、時間をかけて丁寧に糸を繭から引き出すことで、蚕がS字状に吐いて作った糸の繊維のうねりがそのまま残ります。
これらの繰糸の方法によって、白い椿のような気品のある光沢があり、嵩高で、ふんわりと柔らかい風合いを有する生糸を生産することができるのです。
 さらに、繰糸の作業で使用する四国山系の水は石灰質を含んでおり、繰糸用水にすると生糸を糊状に覆っているセリシンという成分が溶け出しにくいため、特有の気品のある光沢があり、嵩高で、ふんわりと柔らかい風合いを有する生糸ができると言われています。

 愛媛県は、温暖な気候風土であり、四国山脈から流れ出る河川周辺に桑園に適した肥沃な土地が数多く有りました。また、水田にできない中山間地域の傾斜地も桑園として活用できたため、桑園の拡大につながりました。加えて、上蔟(じょうぞく:食桑をやめ営繭にかかろうとしている蚕を蔟(まぶし)に移す作業)等の繁忙期に人手を確保できる農村が点在していました。これらの、養蚕業が普及・定着する条件が揃っていたことを背景に、明治初期に始まった愛媛県の養蚕業は、昭和初期に全盛期を迎えました。当時の高い収益性も後押しして、各産地に製糸工場が整備され、地域の主産業となりました。
 しかし、国内の着物需要の減退と安価な外国産生糸の攻勢によりこの地域の養蚕業は次第に衰退して行き、現在では野村シルク博物館でのみ、昔ながらの再度多条繰糸機による製法や文化を守り、伊予生糸の生産が続けられ、需要者の高級志向に応えています。

*https://gi-act.maff.go.jp/register/entry/10.html より

 

 


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