「モッチリ食感で人気!国産パン用小麦 〜滋賀・近江八幡市〜」 2024年7月7日
いまや私たちの暮らしに欠かせない「パン」。原料の小麦は長く海外産に依存してきましたが、近年、国内の産地が急成長!中でも注目を集める滋賀県の生産者を訪ねます。
大手コンビ二チェーンのパンに採用され、高く評価された国産のパン用小麦があります。その産地は滋賀県近江八幡市。10年ほど前、「地元産の小麦で学校給食を」という取り組みをきっかけにパン用小麦栽培が始まりました。パン用小麦の条件となるのがタンパク質の成分量。当初は失敗の連続でしたが、新品種の導入や設備の建設を積極的に進め、高品質のパン用小麦を実現しました。日本各地でパンの地産地消が可能な時代が来るかも?
「うまいッ!」の秘密
パン用小麦はタンパク質の割合が鍵。井狩さんが栽培するのは「ゆめちから」というタンパク質が多い品種。ただ高すぎてもダメで、タンパク質が多い品種と少ない品種をブレンドすることで、パンに向いた小麦粉に仕上げる。
小麦は品質が低下しないよう収穫から乾燥まで素早く終わらせなければならない。井狩さんは、自前の乾燥設備を建設し、さらに品質管理の設備も整えることで、より早く出荷できる仕組みを整えている。
*https://www.nhk.jp/p/umai/ts/P7R4N8K39M/episode/te/994WW5LXN7/ より
麦~訪ねた人 近江八幡市「イカリファーム」井狩篤士さん~
もちもちの小麦粉で滋賀の食をおいしく楽しく
“顔の見える小麦„をつくりたい
近江八幡市野村町。“野村„という字が示す通り、平らで広々としたこの地域には約270ヘクタールの農地があり、市内一の農耕地帯となっています。そんな野村町を拠点とする農業法人「株式会社イカリファーム」代表の井狩篤士さんは、強力小麦「ミナミノカオリ」と超強力小麦「ゆめちから」の2種類の小麦をつくっています。
井狩さんは、小麦づくりを新しく始めるのはハイリスクだと言います。製粉業者が扱ってくれるのが100トン単位と多いこと、買取単価が非常に安いことが主な理由です。それでも井狩さんには、小麦をつくりたい理由がありました。小麦粉商品が浸透しニーズが高まっている日本ですが、そのうち約90%が輸入小麦で国内自給率は約10%。「輸入小麦の場合、複数の品種が混ぜられていて何という品種が入っているのかも分かりません。だから、安心できる地場の小麦をつくろうと思いました」。さらにパン適性のある国内強力小麦の自給率はたった4%しかありません。日本の小麦を取り巻くあらゆる状況が井狩さんを駆り立てたのです。
直売所併設の「イカリファーム」の事務所
会社の事務所には直売所が併設されており、「イカリファーム」で生産された小麦や米が販売されています
滋賀の小麦づくりを変えていく
15年ほど前から「ミナミノカオリ」をつくっていた井狩さんのもとに、8年前、長浜市で主に学校給食用のパンを焼く丸栄製パン株式会社から「ゆめちから」生産の依頼が。「『強力小麦をやっているなんて面白いね』、と声を掛けていただきました。「ゆめちから」は始めるのが大変でしたね。」。
最初は種子を入手するのに苦労しました。種子が確保でき何とか作付けに漕ぎつけましたが、小麦は一定の要件を満たして国に認められないと銘柄の名称を名乗ることができず、十分な補助金も受けられません。まさに大赤字覚悟。地道に3年間つくり続けてついに、“滋賀県産ゆめちから„を名乗れるようになりました。「丸栄製パンさんとは共に苦労しながらここまでやってきました。だからこそ、グルテン量のコントロールなどをしっかり行って水準を満たす小麦をつくり続けなければいけません。せっかく手に入れた“滋賀県産ゆめちから„の名前を損なわないように」
滋賀に「ゆめちから」の生産基盤をつくりあげた井狩さん。現在では県内の他の農家も「ゆめちから」をつくることができるようになりました。そして、会社として県内のさまざまな農家や法人から高い単価で小麦の買い取りをしています。「将来を考えた場合、私だけで一人勝ちするのではなく、同業他社やライバルを巻き込んでみんなで儲けるのがいいと思っています。商売として当たり前のことを真っ当にやっていく流れを作っていきたいのです」。
そして、この先駆的な取組の中で、平成28年度には産地パワーアップ事業を活用しました。
「県や市などの各関係機関団体の支援もあって、今、夢を実現させることができています」。
収穫した小麦から異物を除去する色彩選別機と井狩篤士さん
収穫した小麦は色彩選別機で異物を除去します。1000粒のなかに1粒でも赤カビが見つかると検査が通らない分は全量廃棄となるため、判定にはシビアさが求められます
イカリファームの小麦花が咲いたときに窒素肥料を施してグルテン含量を高め、色の濃い小麦に仕上げます
イカリファームの小麦畑小麦生産の圃場はイカリファームで70ヘクタール、参画した他地域の集落営農を含めると合計220ヘクタール。年間の小麦生産量は約900トンにも上ります
パンの次はラーメンやビールへ、広がる夢
井狩さんの小麦は丸栄製パン株式会社での一般販売のほか、学校給食組合を通して滋賀県下のほぼ全ての学校給食に使われています。「体に優しい地場産のものを、直接届けるという理想に近づいています」。また、グルテンの割合が高い「ゆめちから」だからこそお勧めしたいのがピザ。非常にもちもちとした生地になり、会社のイベントで振る舞うこともあるのだとか。
そして、井狩さんは将来的に小麦で始めたいことを2つ教えてくれました。
「1つがラーメン屋のプロデュース。「ゆめちから」はラーメン適性がすごく高く、実際に使っているレストランもありますので、外食産業と組んで展開できたら。もう1つがビールづくり。小麦ベースのホワイトビールというものがあるので、ここの小麦でブランドビールをつくってみたいですね」。滋賀を小麦の一大発信地に。挑戦は始まったばかりです。
イカリファームのパン用小麦粉イカリファームのパン用小麦粉は事務所内の直売所で購入できます。
イカリファームでつくられた小麦粉で製造されるもちもちのパン。イカリファームでつくられた小麦粉で製造されるもちもちのパン。ぜひ一度ご賞味あれ。 (取材日:2020年6月2日)
*https://shigaquo.jp/report/4781.html より
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