何となくニュースで「TPP」という言葉を聞きかけたのは
10月の終わりごろだったかもしれない。
数日して連れ合いの誕生日に美味しいステーキでもと、いつもの生協に出かけた。
お気に入りの大沼牛を、(これはちょっと脂が多いだの、いまひとつグラムが少ないだの、
形が悪いだの)とあれこれ見比べていると、
「T放送です」とマイクを向けられた。
連れ合いに申し分のないステーキ肉を選ぶのを優先して
見比べ作業のまま質問に答えることにした。
「TPPに加入することで輸入牛肉が安くなるのはどう思うか」と問われたので、
「だって名だたる和牛や国産牛と輸入牛では質も味も全然違うでしょう」とひとこと。。。
畜産農家のことを考えると一概には喜べないし、
実際のところ何とも言えないのが正直なところ。
ただでさえ、自給率も低すぎてままならない状態なので不安だけれど、
関税が廃止されるのは牛肉だけではないのだから、
ふたを開けてみないとわからないし、「どうなんでしょうねぇ?」と聞きなおす。
さらに「輸入肉の関税が現在30数パーセントもかかっている」と言ってくるので、
「今でさえ、このオージービーフは値引きで290円、和牛は1000円前後と随分違うのに、
そんなに安くなるのだったら農家はますます大変だと思う」と答え、
そして「自給率の低いこのご時世に安ければいいという風潮はどういうものかしら」と付け加えた。
またさらに、「消費者としてはどうか」と問うので、
「選択肢は広がるから、リッチな時にはおいしいブランド和牛を
家計が厳しい時は安い輸入牛になるのは必然でしょうね」と答えるしかなかった。
そのあたりで、カメラもしっかり向いていることに気づいて
帰宅してから自分のひどい恰好を鏡で見てがっかり!
もしかしてと夕方のテレビをつけて夕食の用意をしていると
やっとTPPの話題のコーナーになり、
買い物中の主婦が「大歓迎です!」とよろこびの声を上げ、
年配の男性が「いろいろなものが買えるようになっていいんじゃないの」とのたまっている。
そしてその後の田園風景や農業者へのインタビューで農家の不安と苦悩を伝えていた。
ああそうか・・・
買いもの中の消費者にはお肉が安く買えて嬉しい!とだけ言ってほしかったんだ。
放送局の作った筋書き通りに発言しなかった私は
当然カットされたってこと・・・
あの時の心のさざ波は何だったのだろうかと思ったが
「世の中はそんなものよ!」と友人と意見が一致した。