原題は裏切り者だが
邦題の「シチリアーノ」という題名とマフィアを裏切ったマフィア そして実話とのふれこみに
つい昔の映画を重ねてしまったのだが、随分と違っていた
哀愁ただよう昔のマフィアの物語とは別物だった。
何が美学なのか、シチリアーノでまとめたのかよくわからない。
シチリアについてもマフィアについても知識がないし
登場人物が多くて、よく似たイタリア人の名前や顔はどんどん入れ替わってわかりにくかった。
80年代から2000年代までのイタリアでのできごと
監督は巨匠、81歳のマルコ・ベロッキオだ。
最初の場面での「一兵卒」という言葉が印象に残った。
私にとってはもはや死語だったから
「マフィア」はマスコミや世間が作ったことばでブシェッタは「コーザ・ノストラ」だという
「我々のため」にある組織、血族関係を中心とした共同体だから違うのだという。
犯罪や麻薬や殺人に明け暮れるようになって堕落した組織に
失望していたブシェッタは
組織の情報を信頼した判事に提供することを決意する
それは今のボスたちには”血の掟” に背く裏切りだった。
女、こどもはおろか、20親等まで皆殺しという昔とは似ても似つかない変わり果てた組織
信頼関係のない目先の欲だけに先走るボスたちの果てのない利権争い
マフィアたちを裁く、イタリアの裁判が傑作だ
何度笑ってしまっただろう
ヤジが飛ぶ、大騒ぎにブーイング、ありえないような陽気なイタリアのお話
法廷でもぶっぱなす場面が出てくるのではないかと待ち構えていたが
口喧嘩の応酬も子供のけんかのようで滑稽過ぎておかしかった。
裏切ったブシェッタが幻覚や幻想にうなされ、
アメリカを転々とし
年老いても、ライフルを抱えて周囲を見張っている姿は哀れだった。
それが裏切り者の一生なのだ。
戦国時代のような凄惨だった組織にメスが入りイタリアの今はどうなっているのだろうか。
終身刑のボスたちはどうしているのだろう