ぽぉぽぉたんのお部屋

季節の移ろい、道ばたの草花、美味しい食べ物、映画や友人のこと、想いがいっぱいの毎日をお話します

「僕の家族と祖国の戦争」

2024-09-11 | 映画のお話

デンマーク映画 「僕の家族と祖国の戦争」

原題は「Befrielsen」

デンマーク語で「解放」らしいけど・・・

 

第2次世界大戦 終戦間際、ナチス占領下のデンマークで

ドイツ難民の受け入れを命令された大学学長とその家族の物語だ。

息子セアンの過激な体験と動揺、12歳の少年らしい心の動きが

時には振り切るように進んでいくのがとても悲しく、そして恐ろしくもある作品だった。

 

ナチス占領下になった国々の フランス人たちの無言の抵抗や

サウンドオブミュージックでのオーストリアからスイスへ逃れる山越えのシーンを思い起こす。

戦火を免れたドイツ人難民は数百人で学校側は場所だけ、

体育館だけを提供するはずだったが

列車が到着すると難民は500人を超えていたのだ。

さらにナチス軍は管理はおろか、食料の配給さえしなかった。

人々は飢え、感染症が蔓延して子供や高齢者の死体が増えてゆく。

その光景を目の当たりにした家族のとった行動が

街の人々に疎まれ、命の危険にさらされてゆく。

 

子どもたちのレジスタンとナチスに分かれての戦争ごっこは

どんどん残酷になっていく。

ナチス側にさせられて木に縛り付けられ、

ズボンや下着を脱がされたセアン

助けを呼ぶ声を聞きつけて

ドイツ難民の少女ギセラは自分の上着を渡そうとする。

セアンの母に助けられたとはいえ、そんな孤児のギセラの優しさに救われた・・・

 

父や母、身近な大人たちの行動や葛藤を背景に

セアンの変わりようが心に残る。

こんないつどうなるのかわからない中で

彼らが決意を固めた頃、

大人たちのかすかな良心がかいま見られ

死の淵にいたギセラが快方に向かう様子にほっとする。

 

いちばん大切なものは何なのか、

自分だけならまだしも 家族も守らなければならない

街を出る最後のシーン

家族4人が堂々とすがすがしい表情で歩くシーン

これから何が待ち受けているのか・・・

だが、自分たちが人として正しいことをしたことに

みじんの悔いはないという

そんな晴れ晴れとした、不安を感じさせない顔つきが頼もしかった。

 

きっといいことがありますようにという思いで

並んで歩く家族を見詰めながら観終えた。

そうしていつの間にか目が濡れていた

戦争は本当に嫌だ。

絶対に嫌だ。

 

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ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ

2024-07-06 | 映画のお話

受賞歴があり、ずっと気になっていた映画

何か月ぶりかの映画だったので

だいぶ期待しすぎていたのでしょうか・・・

 

いい映画なのでしょうが、

今の私には

いまいち感動がもりあがって来ないのです。

 

もう、どんな映画だったの?と聞かれても

場面ごとの思いがなかなか湧いてこない

 

ベトナム戦争で大切な息子を失った学食の料理長

再婚したばかりの母親に翻弄される男子学生

意外なことに

堅苦しくて皮肉屋で嫌われ者の教師の過去が

どんどん暴かれていって・・・

 

三人三様に色々な人生や思いがあるのだけれど

意外とみんな強くて、しっかり生きているのです。

そんな所は充分にアメリカらしいなあと思いました。

 

古き良き時代の心温まる友情のヒューマンドラマです。

 

生徒の両親のせいで

最後はただ一人 職を失ってしまう彼が意外と元気で

ちょっとほっとしました。

 

ちょっと昔、私も知っているような、こんな時代があって

彼らは今どうしているのでしょうか?

いちばん若い学生君の現在をちょっと覗けたら

いいなあと思いました。

 

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「ビニールハウス」

2024-04-10 | 映画のお話
気になっていた韓国映画
 
パンフレットには「半地下はまだマシ」とあった
ん~~この宣伝文句 何だかなぁ~~と思う。
 
「半地下」の映画は観ていないが、ビニールハウスが韓国の貧乏人の住処だということは
以前観た映画で知った。
確か、もう10年以上も前に観た『嘆きのピエタ』
コロナ全盛期の頃に海外で亡くなった韓国人映画監督の作品だったか・・・
 
その時のビニールハウスとは大違いの 
豪華な家具が置かれた
床もベッドも冷蔵庫もある今回のハウスは別ものだった。
あの時の映画では透明の薄っぺらのビニールハウスそのものだったのが、
分厚い黒い素材になっていて普通の家とどこが違うのか
最新式のハウスにしか見えなかった。
 
ともあれ
ビニールハウスで暮らす訪問介護の仕事をしている女
息子と一緒に暮らすためなのだと、自分に言い聞かせて人生を変えてしまう。
自分に起きたことに身をゆだねざるを得ない か弱い女・・・
私にはそうは見えなかった。
何もかもが中途半端でただずるずると生きているだけ・・・
 
どうして息子が少年院に入っていたのか
親が離婚してぐれただけなのか
誤って殺してしまったかもしれない介護先の認知症の老女を
母親とすり替えようなどとどうして思いついたのか
そうして
どうやって認知症の母親を病院から連れだして来たのだろうか
息子たちはどうして声を上げて逃げ出さなかったのかと
小さな疑問が次々と湧いてくる
 
結局、自分のこれからの人生に立ち向かおうとする気持ちもなく
他力本願の一見不幸な美魔女なのかしらね。
 
何も悪いことはしていないのに
どうしてこう不運なんだろうと思いながら生きてゆく
本当に少年院から出所してきた息子も
認知症の母親も、彼女の生きがいだったのだろうか
 
しょうもない男に翻弄され、大切な息子のためにと思ってやったことが
母を殺し、息子を殺し、仕事先の親切な主まで失ってしまう。
もう仕事も生きがいも無くなって、これからどう生きるのだろう
 
でも
もうすっかり今までの足手まといはなくなって
案外、しっかり生きていくのか
また、しょうもない男に引っかかって、ずるずると・・・
なのだろうか
 
同性としても
善人ぶっていてもこの中途半端な生きざまが一番引っかかった。
 
貧困サスペンスとしては
あまりにも無慈悲過ぎて、ちょっと笑っちゃう感じだ。
 
悪人なら悪人らしく生き、死んでいく、
どうしようもなく救いのない
最下層の人々のくらしを描き切ったキム・ギドクの方が私は好きだなあ
 
 
 
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「ドッグマン」

2024-03-20 | 映画のお話

リュック・ベッソンが実際の事件に着想を得て監督・脚本を手がけたという

バイオレンスアクション

「レオン」を観て、ゲーリー・オールドマンを好きになったのだが
ケイレブ・ランドリー・ジョーンズという俳優もなかなか魅力的だ。

女装しているので気づかなかったが、
何年か前に観た「ニトラム」と同一人物だったようだ。

暗く辛い過去と繊細な心を持つ役柄が彼には似合っているのだろうか

ドッグマンは私には少しも悪人には思えなかった。
そんな彼がこれからずっと刑務所に入るのだろうかと気に病んだが
そんなことはなかった。
頭脳明晰な彼を応援していきたい気持ちになった。

レオンのゲーリーのように支離滅裂な人間ではなかったけれど
もう少し悪人でもよかったような気がする。

ただただ悲惨な子供時代を過ごした彼が
大人になっても裏切られ
世の中からはじきだされて
すさんでいくようで辛かった。

いいこともあったはずだから

思い直して別の生き方を見つけていってほしかった。

車いすから立つシーンが
必死に立っているシーンが

自分と重なってしまった。
少しは立てるとぶるぶると堪えるのだ。

本当は普通に歩きたいのに・・・


5歳の時、家族によって檻に入れられた少年の
実際の事件とはどんな事件だったのだろうと思いを馳せた。

ラストの 磔にされたキリストのように 

十字架の影と重なるシーンはエディット・ピアフの曲にこみ上げてくるものがあった。

たくさんの犬が
その周りに集まっていて彼に唯一忠実な犬とのシーンが印象的だった。

彼はこれからどうなるのだろう・・・

たくましく 生き続けてほしかった。


 



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ビヨンド・ユートピア 脱北

2024-02-12 | 映画のお話
「自由にたどり着くまでの旅にカメラが密着した奇跡のドキュメンタリー」
とあったがそんな言葉さえ華々しく感じる。

北朝鮮の実態や脱北の事はなんとなくわかっていたような気がしていたのだが・・・

始まりにこれは「再現フィルムではない」と断りがはいる。
すべてが隠し撮りの映像だという。

ひとり脱北して10年会っていない息子を脱北させようとした母親と
中国の山中で身動きの取れなくなった子ども2人と80代の母と夫婦の話が
並行して進んでいく。

若い女性なら中国でアダルトチャットや売春業者、農村地帯の独身者に売れるのだ。
ドラッグや人身売買など色々お金になる。
だが、
年寄りと子供のいる家族ではどうしようもない。
引き取る気があるのかと家族の映像がキム牧師に送られたのだ。

市場価値のない脱北者たちの身元引受人 韓国人牧師キム・ソンウン
中国の瀋陽から青島、ベトナム、ラオスを経由してタイへと1万2千キロの移動距離にかかる費用は莫大だ。
50人以上ものブローカーや地下組織があり
キム牧師の支援者たちの資金だけではどうなのだろう・・・

映画を作ることでお金は入るだろうが
脱出ルートがさらされ、キム牧師の身も危ぶまれるが
それでもドキュメンタリー映画を作る価値はあるということなのだろうか


要はお金なのだとショックだった。

結局、金が目当てのいくつものブローカー頼み
自分たちの身が危なくなったらいつでも投げ出されるだろうし

買収したパトカーに乗ったり、ジャングルを歩いたり
3つの山越えでは山道を10時間以上も歩かされて、
金目当てに同じ山を何度も越えさせられいる・・・
年寄りも幼子も・・・よく耐えられたものだ。

北朝鮮出身の妻が金正日みたいな体型の牧師に惚れたと言っていたが
どうやら彼は脱北の手助けで体中に金属が入っているほど危険な目にあっているようだ。

ベトナムからの船の乗り降りを事細かに注意する場面が印象的だった。
船がタイについても焦らず静かに慎重に降りなければ沈んでしまうのだ。
そうして
タイに来たら、今まで逃げていた警察に早く捕まって
北朝鮮から来たと言うようにと・・・

中国もラオスもベトナムも北朝鮮とは密接な国なのだと改めて気づかされた
見つかれば報奨金目当てで簡単に売るのだから

もう一方の17歳の女性の息子は中国でつかまり
収容所に送られ痛めつけられ、もう生きてはいないだろう
脱北させようとしたことがいいことだったのか
そうでなかったのか、
脱北者の家族としてそのまま北朝鮮にいても未来はないのだという

せめて5人家族が
映画撮影で入るお金で脱北できたのは皮肉だが現実だ


それにしても平和ボケの日本は大丈夫だろうかとふと思った。





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哀れなるものたち

2024-02-10 | 映画のお話
第80回ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞
第81回ゴールデン・グローブ賞ではコメディ・ミュージカル部門の作品賞と主演女優賞
第96回アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞、脚色賞ほか計11部門にノミネート

イギリス映画かと思ったが、どうやらイギリス・アメリカ・アイルランド合作らしい

原題は「poor things」
相づちのように軽い感じで使うカジュアルな言葉らしい
でもよくわからない
お気の毒に?さんざんだね?可哀そう~?という感じで
「哀れなるものたち」なんて仰々しい感じではないようなのだけど・・・
(何かが欠けていて惜しい)ってことならそう言う意味かなどと
逡巡してしまうのだ。

身投げした若い女性の胎児の脳を移植して
その女性を蘇生させた天才外科医ゴッドウインの風貌からしてフランケンシュタインだ
蘇った身体は大人なのだが脳が赤ちゃんなもので
まだまだよちよち歩きの成長課程、幼い行動パターンも
彼女の視点でモノクロや歪みの映像になっていて面白い

ヴィクトリア朝時代で、馬車が闊歩しているのに
ゴッドウインの馬車だけが前は馬なのに後ろからは蒸気がでていたり
古風な街には宇宙船風の気球も浮かんでいたりと
魔か不思議な世界

肩のあたりは時代風なのにいきなりミニスカートだったりと
衣装も不可思議な雰囲気だ
今どきのおとぎ話だと思いながら観ていた・・・

婚約者がいながら
遊び人の弁護士ダンカンの誘いで世界一周の旅に出ると決めたベラ

最初はアメリをほうふつとさせるテンポだったが
次第に不協和音が奏でられて
自慰やセックスシーンの嵐だ。

そんな中で死と再生
時代の男と女の関係性が垣間見えてくる

ベラの体当たり的な何でも変えようとする意気込みが
ただただ場当たり的に進んで
船旅でのマダムたちとの出会いで哲学や読書を知り
パリ娼館にたどり着く
世渡りを知ったかと思うと社会主義者になり
大学で医学を学んでいたりと
奇想天外な物語だ

父親の実験台だったゴッドウイン博士の子供時代は悲惨だったが
最後は亡くなる天才外科医ゴッドウィンの脳を移植しなかったのはなぜだろう

なんでヤギなんかになっちゃったの

博士の脳はもうあかんかったんやろかとも思うけど
想像もしない終わり方に
女性の成長と進歩はわかったけれど
いつまでも不可解さだけが残った。

死体を切り刻むシーンにしろ
セックスシーンにしろ
おぞましさも厭らしさもなかったけれど
面白おかしくというより
奇想天外さについていくのがやっとで
整理する余裕もなかったといたほうがいいかもしれない。







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枯れ葉

2024-01-23 | 映画のお話
第76回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した、
フィンランド映画界の巨匠アキ・カウリスマキ監督の新作「枯れ葉」

最初の曲は
まさかの 聞き覚えのある曲
いまいち聞き取れないのだけれど
これ日本語でしょ~と思った民謡調のゆったりした曲
竹田の子守唄だった。

ラジオから逐一流れてくるウクライナ侵攻のニュース

まるで昔の日本のような質素でシンプルなくらし
むだなものが何もない
こんな世界がまだあったのだろうか・・・

しかも北欧で
社会保障が素晴らしいはずなのに・・・

どうしてなのか、みんな見張られているみたいに
何かきっかけになるものを見つけてはすぐ首にしてしまう

贅沢もせずにつつましやかに暮らしていたのに

不思議な空気がただようような世界感

ロシアと接している国境は想像もできないくらい長くて
平和ボケの日本人の私には
フィンランドってこんな国じゃないよね?の
?マークがどんどんつらなっていくばかり

ささやかなしあわせを慈しんで
生きていけたのなら何もいらないなんて
昔思ったはずだったと思いだした。
本当は今もそうだったはず
すっかり忘れていたのかもしれない

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PERFECT DAYS パーフェクトデイズ

2024-01-15 | 映画のお話
ずっと見たかった映画がやっとやってきた。

カンヌで役所広司が主演男優賞を受賞して話題になってから随分と待った気がする。

最初の映像はごちゃごちゃしていて 一瞬 ミドリムシかと思った
それが木漏れ日だとすぐわかったが、
私の好きな木漏れ日とはちょっと感じが違っていた。

陰影のある木漏れ日は彼の人生の象徴なのだろう・・・

私の好きな 美しく透ける緑の葉の隙間からキラキラと光がこぼれる
あの宝石のような葉もれ陽とは違うのだ。

トイレの清掃員として寡黙に働く男
早朝、竹ぼうきの音で目を覚まし、いつも窓にはカーテンがない。
ないと思いこんでいたカーテンはちゃんと束ねてあり、
朝日を感じたいためなのだろうかとも思ったが
遅い日の出の季節も 夜も昼も 終始カーテンはひかれたことはなかった。

毎日車の中で聴くカセットテープは妙に懐かしい曲ばかり
どれも彼の境遇や心情を歌っているようだった。

小さなフィルムカメラでのぞかずにシャッターを切る
思うように映っていない写真は破り捨て
それ以外は大切に保存した缶がごっそりしまってある。

毎日の木漏れ日のわずかな違いは 
彼のかわり映えのしない暮らしの中で唯一無二なのだろうか

出かける前に 自動販売機で買う朝食代わりのコーヒー
そして、ベンチで食べるお昼はいつもサンドイッチだ。

自転車で行く風呂屋帰りによる駅なかの飲み屋
いつもおかえりなさいの声と共に
お決まりの一杯とつまみが置かれる。
休みの度に通う古本屋、部屋いっぱいの本棚に並ぶ本たち

突然現れた女の子は「おじさん」と彼を呼んでいた。
ママと別れた住む世界が違う父親を
どうしてそんな風に呼ぶのだろうかと思っていたが
電話をもらって迎えにきた裕福そうな母親は 
彼をお兄さんと呼んでいて
久しぶりの再会と別れを惜しむようにハグする場面は
わかるようでいてやはり違和感があった。

認知症でもう何もわからなくなった父親にも
二度と会いたくないようだ・・・

彼にいったい何があったのか 
どうしてこんな暮らしをしているのか
平山という男のこれまでの人生をあれこれ逡巡しながら観終えた。

早朝のいろいろな物音、鳥のさえずり
優しい風景と懐かしい音楽が彼を包む

カーテンもドアの鍵も開けっ放しで暮らす毎日
彼の周りにはもう悪人はいないようだ。

木立の葉擦れの音さえ聞こえてきそうなのに
朝っぱらから
The House of the Rising Sunの擦れたような物悲しさが漂う

アニマルズが歌い、
浅川マキが「朝日樓」と歌い
常連客のあがた森魚のギターで
石川さゆりのママが唄う

聴いたことはあるけれど ぼんやりと 記憶の奥深くに 
澱のように沈んでいた曲ばかりのような気がして
ひとつひとつ掬い上げてもう一度聴いてみたいと思った。

トイレがきれいすぎて あまりにも現実味がないのだが
東京・渋谷区内17カ所の公共トイレを
世界的な建築家やクリエイターが改修する「THE TOKYO TOILET プロジェクト」
それに賛同したベンダース監督がこの作品の舞台にしたようだ。

キリスト教関連の団体からも
人間の内面を豊かに描いた作品だとしてエキュメニカル審査員賞も受賞したそうだ。

『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』は好きな作品だった。


 





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理想郷

2023-11-21 | 映画のお話
スペイン映画、
冒頭のシーンが印象的だ。
男3人がかりで馬を捕まえ、押し倒す。
これが何を意味しているのか、
後半は夫がいつそうなるのかと気が気ではなかった。

最初は「理想郷」だと思っていたがそうではなかったという作品だと思って観たのだが
どうしてこの邦題をつけたのか・・・
いつも、映画を観ていると原題をそのまま持ってこないことに違和感を感じることが多い。

原題の「As bestas」は「獣たち」の意味だそうだ。

観光名物になっているお祭り
サブセドのラパ・ダス・ベスタス(猛獣の毛刈り)を思い起こすとぞっとする。

そうしてこの作品は
1997年に終の棲家を求めてスペインの小村に移住したオランダ人夫婦を襲った事件を基にしたフィクションだという。

風力発電の問題が起こらなかったらどうだったのだろうか。
風力発電誘致で補助金を得たい兄弟はその金を一日中タクシーを乗り回して街じゅうをまわると答えたのだ。

もう根本から違うのだと思った。

52歳と45歳の兄弟は一生変わらないだろう貧しい生活の中で
毎晩店でいっぱいやるぐらいしか楽しみはない。
結婚もできず失うものなど何もない行き詰まりの毎日なのだ。
そんな惨めな息子たちの行動を年老いた母は黙認しているように見えた。

想像だにしない嫌がらせで収穫もほごになり
貯えも底をつこうというのに、諦めて出ようとしない夫の頑固さ

最初から最後までずっと漂う不穏感がとても重苦しく
移住者と村人のお互いに歩み寄れないもどかしさ
対話がまったく噛み合わないぎこちなさ

勝手に田舎に憧れる夫婦と できることなら田舎なんて捨ててしまいたい村人たち
だが今の生活を捨てて出るにもお金がいるのだ

狩りのように押し倒され絞められる場面で
顔面が口以外見えなくなり、消えてゆくシーンがすべてを物語っているような気がした。

夫が殺されても遺体を探しながら村に住み続ける妻の強さが恐いくらいだ。
それでいてやり返さない、
村で暮らし、農作物を育て、その合間に夫の遺体を探す執念
地図を塗りつぶすように計画的に進めていく強靭な意志

殺した兄弟の母親に「私と同じように孤独になるのよ」と言い放った彼女

発見された遺体を見に車に乗った時の表情のない顔もただただ私には理解しがたかった。
彼女はこれからもこの村で暮らしていくのだろう、きっと












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「旅するローマ教皇」

2023-11-07 | 映画のお話

移民船事故が起きた2013年のランペドゥーサ島でのスピーチから始まり
ブラジル イスラエル、パレスチナ
アメリカ、キューバ、ケニア、中央アフリカ共和国、フィリピン
アルメニア、キューバ、メキシコ
チリ、アラブ首長国連邦、日本、マダガスカル
イラク、カナダ
2022年のマルタ共和国まで
37回、53カ国を訪れたローマ教皇に密着したドキュメンタリー映画
 
アルゼンチン生まれの 第266代 ローマ教皇 フランシスコは
初のアメリカ大陸出身として
また、イエズス会初選出の教皇として話題になった。

どこの国でも
防弾ガラスのないオープンカーのようなつくりの車に
立ったまま乗り、群衆の中をかき分けるように進む

ちょこんと載せるようにかぶった小さな白い帽子は
どうして落ちないのだろうかといつも思っていたが
そうではなかった
風が強ければ、帽子も飛んで落ちるし
ケープもまくれ上がり覆いかぶさるのだ

そんな風に彼もひとりの人間であり、様々な表情が映し出されている。
積極的に異教徒の指導者との交流をする姿や
カトリック教会で起きた性的虐待について謝罪する姿
自らの至らない発言について謝罪する場面もあった

教皇の旅はいままさに世界の様々な問題を映し出していて
コロナパンデミック、難民問題、紛争の絶えない中東やアフリカ
イスラエル、パレスチナ、移民問題

熱狂的に歓迎する人々がいて
バラバラと人の並ぶ場所もあり、それは様々だ
熱狂している人たちに教皇の言葉はちゃんと届いていたのだろうか

囚人ひとりひとりとの触れ合いは抱き合う相手もいれば
冷淡な態度をとる人もいてとても象徴的だ。

特に印象的だったのは
カナダの先住民の子供たちが家族と離され寄宿学校に強制的に入れられた問題だ
インディアンたちの独特の声のうねりのような音の集まりは何だろう
傍観していた教会側の行いを率直に謝る姿があった


「皆さんがベストを尽くせばこの世界はかわるかもしれない」
「常に夢を追い求めなさい。恐れずに夢に向かいなさい。
 世界の夢はまだ目にみえていなくとも、必ずいつか実現します」
という彼の言葉が今も胸に響いている。











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