昔、何かの映画でマイアミが出てきた。
インテリな白人たちが下品なショーに大ブーイングする場面・・・
ある時、夫の実家がマイアミにあるという友人に尋ねたことがある
~マイアミなんてすごいね!
お金持ちの白人ばかりが住んでいる所なんでしょ?~
すると彼女は
~金持ちがいる所には必ず貧乏人や黒人がいるのよ、
お互いそれで暮らしが成り立つようになっているのよ~
というのだ。
アメリカとはそういう所なのかとその時思った。
「ムーンライト」は
アカデミーの作品賞、脚色賞、助演男優賞の3部門受賞のマイアミが舞台の作品だ。
登場人物がすべて黒人なのも異色だろう
そうして、マイアミってこんな所だったと知った。
リトルと呼ばれる少年は麻薬中毒者の母に愛され、
そうしてネグレクトされ、どこにも自分の居場所がない
学校では歩き方がおかしいといつもいじめられている
たった一人の友人のケヴィン、
ある日出会った父親のような存在になるファン
ファンも子供時代は同じ境遇だったのだろう
少年を夫婦で温かく見守ることになる
ファン役のマハーシャラ・アリの存在感が光る
「自分の人生は自分で決めるんだ」
「月あかりでお前はブルーに輝く」ということばが耳に残っている。
人種も貧富の差も職業も育ちも、性的なマイノリティさえ、月明りの下ではみな同じだということなのだろうか
ファンは急逝し、成長と共に母の麻薬とネグレクトは激しくなっていった
だが、少年には母親の様な存在で愛情を注いでくれるファンの妻がいたから
ぐれることもなく育っていったはずだが
過酷になっていくいじめと唯一の友人の裏切りに抑えは外れた
八方ふさがりのなか、手が差し伸べられても
人生は思うようにならないのかもしれない
なりゆきのままにその都度、自分の意思で人生の道筋を決めて
今はファンと同じ麻薬ディラーのような仕事をしている
それでも、成金のようないで立ちとたくましい身体の中には
昔の少年そのまま、やさしい思い出とほのかな恋心が宿ったままだった
日本に暮らしていると、こんな理不尽な世界とは縁遠い感覚がある
アメリカという国は人種差別が撤廃されてから
まだまだ歴史は浅いのだと思い知る
そうして弱者は、自分よりもっと弱い者をターゲットにして生き延びているのだと
彼はこれからどうなるのだろう
ファンのように早死にするのかもしれない
ファン役のマハーシャラ・アリがイスラム教徒の俳優として初のオスカーを手にしたという
ブラピが製作総指揮なのも不思議な映画だ。
2005年のブロークバック、マウンテンを思いだした
でも、全然違う