温かいような気がして出てきたけれど
風はまだ冷たくて、咲くはずだった桜もなかなか咲かないこの頃
病院で今回様子を聞かれた感じの良さそうな療法士さんに
つらつらと愚痴をならべて
電気とウォーターベッドを終え、そそくさと外に出た。
自転車に乗って帰る道すがら
マンションから走って出てきた男の子とお母さんがいて
慌てている様子で
そのまま お母さんが後になって歩道を駆けてゆく
と、何かにつまづいたのかお母さんが激しく転んだ
ああっと思って観ていると、何とか立ち上がり
あちこちに飛び出したバックの中身を
急いでかき集めると
痛かっただろうに
一瞬立ち止まってまた駆けだした男の子の後を追った。
自転車でそのあとを行く私の目に
転んだ場所辺りに何か四角いものが見えた。
自転車を止めて見るとスマホだった。
あらあらと自転車の篭にスマホを入れて追いかけた!
追いつくかしらと案じていたが
タイミングよく信号で止まっている二人に追いつき声をかけることができた。
「スマホ落ちてましたよ」
私にお礼を言ったお母さんは
声を荒げて子供に何か言っていた。
本当は何をそんなに急いでいるの?と聞きたかった。
相手に少し遅れると電話して、
もう少し余裕をもっておしゃべりでもしながら歩いて行ってほしいと思う。
ずうっと昔、私にもこんなことがあったのかもしれない。
そんな時、声をかけてくれた人がいたらどうだったろうか。