
本当に久しぶりの映画、午後から雨になるというので朝一番の作品にした。
レズの年齢を経た女性たちの物語と知っていたので「ふうん・・・」ぐらいに思っていた。
が、現実の社会のありようや家族の思い、忍び寄る老いと突然の病、
いつどうなるとも知れない人生をどう生きたらいいのかなど、わきあがる思いがぬぐえない。
とても深く重く悲しい、それでいて力強く、ユーモラスで幻想的で不思議な作品だった。
冒頭のシーン、たち並ぶ大きな木々の続く緑深い公園でふたりの女の子がかくれんぼをしている。
白い服の女の子が隠れる。
見つかったはずなのに、追いかけながら、ふたり木の周りをまわると
白い女の子はいなくなっている。カラスの泣き声が不気味だ。
始まりは熟年の女性の顔のアップ、生きてきたあかしのようなシワやシミ
優しいまなざしと微笑、ふたりは南フランス、モンペリエのアパルトマン最上階で
向かい合う部屋にすんでいるお隣同士のニナとマド
わたしにはこのままで充分幸せだと思えたのだが
出会ったローマに移住して一緒に暮らしたかったようだ。
だが、抗えない現実を次々とつきつけられる。
元気だったマドがボールを引き寄せる水の中に視た沈む白い服の女の子。
やがてニナもその女の子をすくい上げようと水に入る夢を見てうなされていた。
いつもニナからすり抜けてしまうマドの姿だったのかもしれない・・・
マドの娘や息子が父と母の関係にそれぞれの思いを持っていたのがわかってくると
お隣のニナとの移住の話ができないのは仕方なかったのだろう・・・
そんなことを繰り返し葛藤し、倒れてしまったのかもしれない。
マドは倒れても話せなくてもニナの事は忘れなかった。嬉しかった。
もうどんなことがあってもお互いの思いは変わらない。
往年の女優たちだからか、年配の男性も結構観ていて意外に思った。
マドの施設からの電話に急ぎ駆け付けたニナ
二人が連れだって抜け出す場面で、すぐ近くの男性が肩を震わせ嗚咽を抑えるように泣いているのに気づいた。
えっと驚きながら、つい、私ももらい泣きしてしまいそうになった。
活発で感情の激しいニナの行動は極端だと言う人もいるが、わたしにはそうは思えなかった。
ホラーでもサスペンスでもない。
ただ愛の物語。家族とその秘密の物語。
こうなったら二人の愛を貫き通すだけ、もう何も怖くないという
すさまじいエネルギーを感じて観終えた。
ニナ役のバルバラ・スコヴァがインタビューで若い普通の男性のフィリッポ・メネゲッティ監督が
年齢を経た女性同士のカップルを描くことに興味を持ち、
レズもメークなしでのアップも受け入れたとか・・・
もっと若くて魅力的なカップルの話にしていたら、映画の予算を集めるのも早くて楽だったはずと
熟年のカップルにこだわった監督の勇気をたたえていた。