〈リバイバル・アーカイブス〉2023.12.18~2024.1.1
原本:2023年1月3日
2022年12月31日 23:43 富田林市富田林町 浄土宗 知恩院派、天正山 神宮院 西方寺
西方寺は寺内町の河岸段丘を降りた町のはずれにあります。
とんだばやし寺内町には4つのお寺がありまして、町に鐘楼をもつ3つのお寺の鐘が毎年大晦日の夜に響きます。
すでに10人くらいの方が並ばれて、除夜の鐘を撞かれています。
それでは「じないまち除夜の鐘めぐり」に出発しましょう。
除夜の鐘を聞きながら、静かに迎える新年もおごそかで楽しいものですね。
おおよそ11:30~0:30の間に行けば、檀家でなくてもだれでも撞くことができます。
西方寺の鐘の音色は大きさの割には高い音が出るように思います。
しかも普段は見れない本堂も開けていただいているので、想い想いにお詣りすることができます。
本尊である阿弥陀如来坐像は、天和3年(1683)に尾州名古屋の伊藤治郎左衛門から寄進されたもので、像高143センチ、寄木造の堂々としたお姿は、藤原時代の様式で鎌倉末期の作像とされています。
本堂内には立派な駕籠が保存されています。それではここから一番近い浄谷寺(約3分)に参ります。
23:51 富田林市富田林町 融通念仏宗 半偈山(はんけいさん)三仏院(さんぶついん)浄谷寺
寺内町は端から端まで400m前後なので、5分くらいで巡ることができます。
ご住職と奥様が毎年お迎えをしていただいている浄谷寺。
弘安九年(1286)毛人谷村に開かれ、戦国期の天正二年(1574)に当地に移転したといういわれがあります。
3つのお寺が同時に除夜の鐘を撞きますので、いろんな方向から、音色や響きの違った鐘の音が聞こえます。音の違いを楽しむのも趣があって楽しいことです。
ここ梵鐘は戦中に供出され、成分分析のために4つの穴を開けられました。溶解をまぬがれて、戦後お寺に帰ってきた梵鐘です。
3つのお寺の鐘では一番低い音で、うなりが出るのが特徴です。
銘:「河内石川郡 富田林 浄谷寺什物 月山代 宝暦五乙亥歳三月吉日」
ここも大晦日の夜は本堂を開けていただいていますので、お詣りができます。
本堂は天保十三年(1843)の再建です。堂内の肉厚の透かし彫りに圧倒されます。
霊獣 麒麟(きりん)
平和な時代に現われると云われています。梁には2体の麒麟が浮き彫りにされています。
これは貴重。
内陣右側面の棚の上には、西国三十三度巡礼行者「富田林組」の御背板(オセタ)が5組完全な形でそろっています。大阪府の指定文化財。
0時を過ぎて、新しい年を迎えました。「卯」のように「ぴょんぴょん拍子」にことが運ぶといいですね。
まずは戦争のない平和な世の中を願います。
自分で迎える「ゆく年、くる年」。
曼荼羅(まんだら)
楽山(ぎょうざん)上人の掛け軸
文政五年(1822)楽山上人(当時は晃山)はまだ12歳。修業の身で浄谷寺の章山上人と師弟の縁を結び、教えを受けました。特徴のある筆跡が印象的。
大数珠
今はすることはなくなったそうですが、大数珠を囲んで念仏を唱えながら、お坊さんと信者が極楽往生や追善を願い順送りした念仏行事の数珠です。
0:12 三階蔵のある南会所町
ところどころで寺内町をめぐるグループや除夜の鐘を撞きに来る方に出逢います。
新年の飾りが準備された街かど。
江戸期の景観がよく残る富山町
鐘楼のあるお寺の宗派は全部違います。西方寺は浄土宗、浄谷寺は融通念仏宗、そしてこれから向かう興正寺別院は浄土真宗。
隣りの新堂の町なかにある3つのお寺がすべて浄土真宗であるのと対照的です。
日本の道百選 城之門筋
実は興正寺別院の向かいに妙慶寺(浄土真宗本願寺派)があり、富田林じない町には4つのお寺があります。寺内町の中で浄土真宗以外の宗派のお寺が戦乱の続く戦国期から存在するのは珍しいことです。
なお人口10万人ちょっとの富田林市にはなんと44のお寺があります。
〈ここをクリックすると富田林市域のお寺が確認できます〉
〈ここをクリックすると大阪府のお寺の宗派別構成比が確認できます〉
〈ここをクリックすると大阪府の真宗寺院寺院数が確認できます〉
0:22 そうこうしているうち、寺内町の真ん中、興正寺別院に着きました。富田林御坊とも呼ばれ、寺内町が作られた時の中心となった浄土真宗興正派のお寺です。
こちらは令和の大修理を控え、本堂内は見ることはできませんが、鐘を撞くことができました。
0:22 城之門筋
除夜の鐘が鳴り止む頃にはもう誰も見かけることがなくなりました。
入口が角(かど)地にある珍しいレトロな建物(旧西野薬局)。大正、昭和前期の建物が多く残る亀ケ筋にあります。
0:48 上弦の月と大平和祈念塔、そして寺内町の民家で2番目に古い田守家住宅(18世紀中頃)。
0:58 上弦の月が沈むころ、寺内町はまた深い眠りに着きます。
関連記事:除夜の鐘 - とんだばやし寺内町にて 2016.1.1
写真撮影:2022年12月31日、2023年1月1日
2023年1月3日 (HN:アブラコウモリH )
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