アンティークマン

 裸にて生まれてきたに何不足。

北京にみる巨大格差

2009年05月04日 | Weblog
  ヨハネスブルグのように、「間違いなく殺されます」という都市に比べると、北京は、かなり安全な都市。それでも「深夜出歩くな」何度か注意されました。しかしこれは北京に限ったことではなく、どこの都市でも深夜は危険です。「深夜は、タクシーに乗るな」とも言われました。この1年間、深夜にタクシーに乗って殺害された人は約300人だそうです。うーん!説得力あるなあ。10日間に、8人が殺されているってことですね。

 タイでは、タクシン派は赤、反タクシンは黄、軍隊は緑、警察は青というように服装が色分けされている。よって、旅行者は、赤・黄・緑・青の洋服を避けなければならない。タイへ行くときの服の色は、「黒か白」が無難ということになります。中国では、黒が嫌われる。かといって、白のスーツとかは、持っていない(普通の人は、白いスーツなど持たないと思うのですが…)。上から下まで黒ずくめで北京へ行ってきましたが、石を投げられることもありませんでした。

 北京に、「物乞い」がおりました。私が見たのは、ただ手を出して、「金をくれ」という、元手のかからない正当な物乞い。香港のものぐさな乞食の皆さん(毛布にくるまって寝ていて、時折空き缶の小銭をジャラジャラ鳴らしてお金をもらおうとする)については、驚きもしませんでした。しかし、北京に物乞い・・・!「財産の共有」が方針のはずの党が支配する国、その首都に、「物乞い」がいる。どういうことでしょうか?…そういうことなのですねえ!

 所得格差が凄い。「巨大格差」という表現もあるほど。平均的なサラリーマンの1か月の給料は、2万~3万円。2DKのマンションは、1,000万~3,000万円。このようなマンションを買うことが出来る階層もいる。サラリーマンがマンションを買うのは至難の業。このことを、巨大格差といっているのではありません。フートンの状況やら、中国最貧の村と、1,000万~3,000万円のマンションのことを凄すぎる格差といっているのです。

 北京オリンピック開催に伴う都市整備や再開発で、フートン(胡同)が取り壊されていると聞いていました。「フートンを見ることは出来ないだろう」と、思っていました。ところが、なんとなんと、北京一の繁華街「王府井」でも、一本裏通りへ入ると、「フートン」がありました。
 フートンは、古くからの北京の街並みを留めているので、観光スポットとして海外からの観光客の人気が高いのだそうで…。私も、大変興味がありました。入り込んでみたのですが、「なに見てるんだ!コラ!」と、叱られそうで…少し入っただけで退散しました。フートン地区は、今も、「共同トイレ」「台所なし」でしょう。共同トイレは、壁なしトイレが普通。
 フートンに住んでいる人たちにとって、1,000万円のマンション…週末に海王星まで遊びに行く…そんな感じでしょう。

 支援を要する貧困層は1億人。このうち、2,148万人は、年収が1万円に満たない。年収ですよ!
 NHKスペシャルで、上海から列車で1泊2日内陸へ入った、「中国最貧の村」を取材した番組がありました。驚くべき事実の連続…この村は、ほとんどの家庭が年収1万円に満たない状況でした。子供達は、「勉強に次ぐ勉強!」中・高生の寄宿舎では、午前4時30分から、夜の12時まで、「勉強、勉強」。極貧から抜け出すのには、勉強するしかない。日本の子供達がこれだけ勉強したら…するわけないですね。寄宿舎に入っている子供達の食事は、「モーモー」。牛肉かって?そんなはずないでしょう。粉を練って焼いたと思われる、固いパンのようなものが、モーモー。1週間分のモーモーが支給され、それだけを食べる。ミルク?おかず?あるわけない。モーモーだけが食べ物。自分への割り当てを食べ尽くしたら、その週は、食事なしなので、計画的に食べなければならない。どうして巨大格差が出来たか?説明するには、毛沢東までさかのぼらなければなりません。現在も、都市部と農村部では、「戸籍が違う」。なぜ?その弊害は?…数十ページが必要ですので割愛。

 最貧の村に、肥満の子はいるのか?肥満になりようがないです!モーモー箱に入っているモーモーだけですから。
 北京動物園に遠足に来ていた小学生…肥満が目立ちました。一人っ子政策のため、親たちは、蝶よ花よと、ワガママ放題に育てる。そのように育てられている男の子は、「小皇帝」と呼ばれ、女の子は、「小公主」と呼ばれている。
 小皇帝と、小公主は、「月光族」になる。月光仮面なら、どこの誰かは知らないけれど、誰もがみんな知っている、「正義の味方でいい人」。月光族は、月光仮面と何ら関係ない。「いつまでも親のスネをカジったり、親と同居し、自分の収入は自分で全て使う」そういう若者たちのこと。最貧の村から抜け出せない若者達(農村の戸籍)と月光族(都市部の戸籍)、この巨大格差…。現状のままでは、ますます拡大します。縮まることはありません。

 口直しに…北京で、格差の実態に触れて驚いたのですが、マナーが改善されていることにも驚きました。中国のほかの都市では、バス停に並ぶ人などいやしない。バスが着いたら、我先にと殺到し、怒号が飛び交う。ところが北京のバス停では整然と並んだ人々が!これについても、2年前は「並んで順番を待つ」という言葉が、北京人の辞書に載っていなかったという。オリンピックを控え、「これでは、国際的にこっぱずかしい」ということで、警察が徹底して指導したそうです。成果は出ておりました。