スポーツと怪我の問題は古くて新しい。
高校野球でもサッカーでも、
肝心の大会前に怪我をし、
満足なプレーができなかったり、
出場さえできないこともある。
あるいは逆に無理してプレーして、その影響は?
そんなお話はいやになるほど転がっている。
今年のエスパルスも随分けが人が出た。
そこで金子さんのコラムを見つけた。
ふりお話ではあるが、ちょっと引用させていただく。
[スポーツライター] 金子 達仁
【スポーツニッポン】加部未蘭の将来を思えば美談は無責任
ひざをテーピングでグルグル巻きに固めてプレーする。そんな選手が当たり前だった時代が高校サッカーにはあった。大して深刻なケガでもないのに、なかばファッションとしてテープを巻く選手もいないことはなかったが、本来であれば到底プレーが許されないような状態の選手も少なくなかった。
とはいえ、ケガを押してでも試合に出たいという選手の気持ちは痛いほどにわかった。日本にプロがなかった時代、高校サッカーはサッカー選手にとって、最初にして最後となる晴れの舞台でもあったからだ。たとえここで選手生命が終わってもいい。なんとしてもプレーしたい。そう訴えられたら、どんな指導者であってもクビを横に振るのは難しい。
だが、「それでもプレーさせるべきではない」と言い続けたのがセルジオ越後さんだった。一時の激情で将来を台無しにするべきではない。高校サッカーからテーピングを巻いてプレーする選手をなくそう。「それが大人の責任だ」というのが彼の持論だった。
トレーニング方法が進化したためか、それともJリーグという卒業後の目標が生まれたからか、最近の高校サッカーから痛々しいほどに足を固めてプレーする選手の数は激減した。燃えつき症候群という言葉ももはや死語になりつつある。日本サッカーの将来を考えれば、好ましい方向に進んできたのは間違いない。
だが、今年の高校サッカーで気になることが一つあった。優勝した山梨学院大付の2年生、加部未蘭(かべみらん)について、である。
ユース年代の選手を多く見てきた指導者によれば、彼は明らかに突出した才能の持ち主だという。確かに、静と動の切り替えの速さ、そしてそのギャップの大きさなどは、日本人離れしたものがあった。
だが、彼は右足の甲を疲労骨折していたという。
出場は20分に限定されていた。横森監督としても、できる限りの配慮はしていたということだろう。
それでも、使うべきではなかったとわたしは思う。ケガを抱えてのプレーは、問題のなかった個所にまで故障を生じさせる可能性がある。選手の将来を考えるならば、なんとしても我慢をしていただきたかった。
だが、それ以上に気になったのは、ケガを押してプレーする加部の姿を美談とするメディアの姿勢だった。現場には、現場にしかわからない事情があったのかもしれない。しかし、外部の人間でしかない伝える側が、選手の将来も考えずに美談化するのは、単なる「大人の無責任」である。
メディア野室の向上も必要か?