公開シンポジウム「文化財の保存と修復Ⅱ」~博物館の役割と未来~
今頃なってですが、10月28日に行ったシンポジウムの内容に関して書きたいと思います。
前に書いたのは、国立博物館の会場出入口の位置が遠かったとか、アンケート用紙がみつからなかったとか、くだらないことばかりで、肝心なことを書いていませんでした。
実は、シンポジウムの内容はすごく充実していて、自分でまとめるとお粗末になってしまうので、なかなか書けなかったのです。しかし、日がたつにつれて記憶も薄れるばかりですし、自分の表現力の欠如を理由に書かないというのは逃避でしょう。不完全でもやはりまとめなくちゃいけないなと思いました。
一番記憶に残っているのは、九州国立博物館の館長さんの話でした。
九州国立博物館は2年前にできた新しい国立博物館だそうです。
日本の国立博物館は、19世紀に京都と奈良と東京にできたそうです。京都は日本の国風文化の中心地であり、奈良は仏教が伝来した中心地であり、東京は近代文化の中心地ということでしょう。そして、20世紀には新しい国立博物館はできなかったのですが、100年以上も間をおいてこのたび九州に博物館ができたということ。なぜ九州なのかと言えば、昔から九州は外国からの文化の入り口だったのであり、中国や朝鮮からの文化もそうですが、中世や鎖国時代にヨーロッパからの文化が入ってきたのも九州だとのことです。
なるほど、そのとおりですね。
今、国立博物館は、この4箇所のほかに、東北にミンパク(民族博物館)ができたようです。これで、日本列島にバランスよく位置したなという感じがします。
九州国立博物館は新しいので、いろいろなことが工夫されているようです。
今回のシンポジウムのテーマは「保存と修復」なので、そこに焦点が当てられますが、当然のことながら切り離せないのが「展示」であり、博物館は文化財の保存と修復をしながら同時に展示もしていく必要があるわけでした。
そうなると、展示によって文化財が痛んだりしてはいけないし、また、そこに訪れる人々にとっても博物館の中は快適でなければならず、物と人、両方にとっての良い環境を提供することが重要な要素とのことです。
また、博物館は経営のために集客も必要なので、多くの人が来館するのが望ましく、そうするとますます混雑による不快さや危険なども考慮する必要があります。
そういう点で、この博物館は様々な工夫がされているとのことでした。
人に対する安全は同時に展示品に対する安全でもあり、この博物館は耐震構造になっているそうです。展示物も倒れないような設備がされています。
そして、この耐震構造を来館者にも見学できるようにしてあり、また、保存庫のようすも通路などから見学が可能になっており、博物館のウラの様子も公開され、一般の人に理解できるような工夫がなされているとのことでした。
文化財を展示する時に、世界の各地から借りてくる場合もありますが、その博物館の環境や安全管理が行き届いているという信用があると、貸すほうも快く貸してくれるそうです。
このような話を聞いていて、「物と人にとっての博物館環境」というものに非常に興味を感じました。
そのほかの方の話では、日本の文化財は紙・木・布というデリケートな素材でできているのが特徴で、西洋の石や金属など永久的な材質とは違うため、独特の保存や修復技術が必要であり、そのための努力がされているとのことでした。日本人はそうやって文化財を守ってきたのだなあ、と再認識しました。
実物を保存するためには、空気中にさらしておけないことも多々あるでしょうし、どんなに大切にしても限界があるのかもしれません。そのような場合、同じ製法を再現して複製品を作って展示するという方法もあるでしょうし、映像や写真を撮って、それを公開するということもあるでしょう。
博物館の業務というのは、昔ながらの技法を再現して補修したり複製したりする作業と、一方で最新の科学技術によって環境の管理をしたり、文化財の劣化を防いだりするという両面性の要素があり、非常に興味深く思いました。
その他、文化財を保存修復するには、人間の医学と同じように、壊れてから直すのではなく、予防することが大切だという話も印象に残りました。
また、現在博物館にいる学芸員は、保存修復の専門家がいない場合が多く、展示・収集・保存・教育・研究などを分業せずに掛け持ちでやらざるを得ないようです。国立博物館でさえ保存修復の人材が足りないという厳しい状況にあるようです。
学芸員の多くは、歴史・芸術・文学系の大学を出た人で、自然科学系の大学を出た人は少ないため、保存修復のための知識が足りない状況にもあると言えます。
保存修復のためには、たとえば湿度を保つとか、殺菌・脱酸素・脱塩なども必要ですし、解体修理などもするため、自然科学系のノウハウが必要となるということでしょう。
そのようなわけで、今後保存担当にふさわしい人材の配置が望まれるし、そのようなことを実現することによって、博物館がさらによい方向に発展していくことが望まれるということでした。
私は、放送大学で、博物館の科目をとった時に、ちょうどこの保存技術について感心を持ったので、このシンポジウムは非常に興味深い内容でした。
今頃なってですが、10月28日に行ったシンポジウムの内容に関して書きたいと思います。
前に書いたのは、国立博物館の会場出入口の位置が遠かったとか、アンケート用紙がみつからなかったとか、くだらないことばかりで、肝心なことを書いていませんでした。
実は、シンポジウムの内容はすごく充実していて、自分でまとめるとお粗末になってしまうので、なかなか書けなかったのです。しかし、日がたつにつれて記憶も薄れるばかりですし、自分の表現力の欠如を理由に書かないというのは逃避でしょう。不完全でもやはりまとめなくちゃいけないなと思いました。
一番記憶に残っているのは、九州国立博物館の館長さんの話でした。
九州国立博物館は2年前にできた新しい国立博物館だそうです。
日本の国立博物館は、19世紀に京都と奈良と東京にできたそうです。京都は日本の国風文化の中心地であり、奈良は仏教が伝来した中心地であり、東京は近代文化の中心地ということでしょう。そして、20世紀には新しい国立博物館はできなかったのですが、100年以上も間をおいてこのたび九州に博物館ができたということ。なぜ九州なのかと言えば、昔から九州は外国からの文化の入り口だったのであり、中国や朝鮮からの文化もそうですが、中世や鎖国時代にヨーロッパからの文化が入ってきたのも九州だとのことです。
なるほど、そのとおりですね。
今、国立博物館は、この4箇所のほかに、東北にミンパク(民族博物館)ができたようです。これで、日本列島にバランスよく位置したなという感じがします。
九州国立博物館は新しいので、いろいろなことが工夫されているようです。
今回のシンポジウムのテーマは「保存と修復」なので、そこに焦点が当てられますが、当然のことながら切り離せないのが「展示」であり、博物館は文化財の保存と修復をしながら同時に展示もしていく必要があるわけでした。
そうなると、展示によって文化財が痛んだりしてはいけないし、また、そこに訪れる人々にとっても博物館の中は快適でなければならず、物と人、両方にとっての良い環境を提供することが重要な要素とのことです。
また、博物館は経営のために集客も必要なので、多くの人が来館するのが望ましく、そうするとますます混雑による不快さや危険なども考慮する必要があります。
そういう点で、この博物館は様々な工夫がされているとのことでした。
人に対する安全は同時に展示品に対する安全でもあり、この博物館は耐震構造になっているそうです。展示物も倒れないような設備がされています。
そして、この耐震構造を来館者にも見学できるようにしてあり、また、保存庫のようすも通路などから見学が可能になっており、博物館のウラの様子も公開され、一般の人に理解できるような工夫がなされているとのことでした。
文化財を展示する時に、世界の各地から借りてくる場合もありますが、その博物館の環境や安全管理が行き届いているという信用があると、貸すほうも快く貸してくれるそうです。
このような話を聞いていて、「物と人にとっての博物館環境」というものに非常に興味を感じました。
そのほかの方の話では、日本の文化財は紙・木・布というデリケートな素材でできているのが特徴で、西洋の石や金属など永久的な材質とは違うため、独特の保存や修復技術が必要であり、そのための努力がされているとのことでした。日本人はそうやって文化財を守ってきたのだなあ、と再認識しました。
実物を保存するためには、空気中にさらしておけないことも多々あるでしょうし、どんなに大切にしても限界があるのかもしれません。そのような場合、同じ製法を再現して複製品を作って展示するという方法もあるでしょうし、映像や写真を撮って、それを公開するということもあるでしょう。
博物館の業務というのは、昔ながらの技法を再現して補修したり複製したりする作業と、一方で最新の科学技術によって環境の管理をしたり、文化財の劣化を防いだりするという両面性の要素があり、非常に興味深く思いました。
その他、文化財を保存修復するには、人間の医学と同じように、壊れてから直すのではなく、予防することが大切だという話も印象に残りました。
また、現在博物館にいる学芸員は、保存修復の専門家がいない場合が多く、展示・収集・保存・教育・研究などを分業せずに掛け持ちでやらざるを得ないようです。国立博物館でさえ保存修復の人材が足りないという厳しい状況にあるようです。
学芸員の多くは、歴史・芸術・文学系の大学を出た人で、自然科学系の大学を出た人は少ないため、保存修復のための知識が足りない状況にもあると言えます。
保存修復のためには、たとえば湿度を保つとか、殺菌・脱酸素・脱塩なども必要ですし、解体修理などもするため、自然科学系のノウハウが必要となるということでしょう。
そのようなわけで、今後保存担当にふさわしい人材の配置が望まれるし、そのようなことを実現することによって、博物館がさらによい方向に発展していくことが望まれるということでした。
私は、放送大学で、博物館の科目をとった時に、ちょうどこの保存技術について感心を持ったので、このシンポジウムは非常に興味深い内容でした。