今回は、新刊ではありません。
最近は、図書館に行き、入荷したばかりの本を借りるのがマイブームとなっていますが、先日でかけていったら、入荷日の翌々日だったため、本棚に残っていたのは学術書ばかりで、一般の本はほとんどありませんでした。それで、普通の書架から探してきました。
「人はこうしてみすみす損をする」森川洋昭著(河出書房新社)2007年6月発行。
今から7年も前のものです。
これは、人がお金を使う時に生じる心のからくりをわかりやすく解説したもので、「行動心理学」の分野になるようです。
この本を選んだのは、最近の自分がどうも「みすみす損をする」ような行動をしていることに思い当たるふしがあったからです。
まず、ニーサの積み立てなんか申し込んじゃいましたし、セールスマンにのせられて生協の宅配をやりそうになったし、夏物最終バーゲンで要りもしない安物服を何枚も買ったし、昼ご飯の弁当代は必死に節約しているくせに、休日はその10倍もの高い外食を繰り返しているし…こりゃどうもおかしいぞ、と思っていたのです。
それは、節約疲れであり、変化を求める気分もあり、けちけちしている自分が嫌になったり、あるいは、お金がありそうな気分になろうとしたり、そのように人に見せかけたい虚栄心があったりするからかもしれません。
この本は、そのような行動を取る人間の心理やしくみをとてもわかりやすく解説していました。
細かい物にはこせこせと節約するくせに大きなものを買う時には、その端数は微々たるものだと思ってしまう。弁当が400円を超えないように398円に抑えるなど、たったの2円の節約に必死になっているくせに、7500円のパンプスを買う時に、店員に進められた700円の中敷きをいとも簡単に買ってしまう。(100円ショップにも中敷きは売っているとのことだし、中敷きはなくてもよかったのだが・・・。)
それで、8000円をとうに超えてしまっても、クレジットカードで買って、あとは野となれ山となれ。
自動車保険は、最初にディーラーで進められた保険会社のものを続けていて、とても高い。これがネット申し込みの自動車保険で、「走った分だけ」という走行距離に応じたものや、「40~50代は安い」という、事故を起こしにくい年代に有利な保険にすれば、掛け金は数万円も安くなるというのに、変更しない。人間は最初に設定したものを続ける傾向があるそうだ。
以上は、自分のことです。
この本に書いてあること。
1章 「金銭感覚の摩訶不思議」
・人は「後悔するよりまし」と、損を承知で出費する。
2章 間違いだらけの「損得勘定」
・人は損失にこだわるあまり、傷口をさらに広げてしまう。
3章 「特価」に迷走する消費心理
・人は得した気分を味わうと、積極的に金を使いたくなる。
4章 「買う、買わない」の分岐点
・人は大きな買い物のついでに、小さな衝動買いを重ねる。
5章 「人気」に潜む心理の罠
・人は行列のできる店に「満足しよう」と努力する。
大見出しはこんな感じです。
そうして、損をしてしまう人間の行動様式がわかったものの、だからといって、この本を読んだら、賢くなって損をしなくなるのかといえば・・・
たぶん無理でしょう。
「人はこういう行動を取る習性があります」ということが分かっただけにすぎません。
例えば、世の中の女性は、莫大な交通費をかけて遠くのアウトレットに買いものに行ったり、要りもしないものが入っている福袋を買ってみたりと、バカなことを繰り返していますが、それが楽しければいいのかもしれません。
私は要りもしない車を買って、バッテリーの充電のために意味も無く走り、ガソリンを使い、貴重な時間と費用を浪費していますが、「コンピテンスモチベーション」というらしいです。
2~3歳の子供が、意味もなくバケツを手で動かしたりして楽しんでいるのは、その行為によって何の成果もなくご褒美もないものの、バケツを動かせる自分の能力を自分で認めて「自己満足」を喜びとしているのだそうです。私が車を買って運転しているのも、単に車を所有しているぞ、動かせるぞという「自己満足」にすぎないのかもしれません。
とりあえず、この本を読んだおかげで、自分がいかに日常的にバカなことを繰り返し、みすみす損をしているのかがわかりました。無意識でやっているより、自覚を持てただけいいかなと思います。