公演のあと、ロビーでサイン会が開催されるということで、せっかくなので買ったCDにサインをしていただくことにしました。
実は、ちょうど1年前に、トッパンホールでナタリーシュトゥッツマンの歌を聴きに行きました。それはピアノ伴奏のシューベルトの歌曲でした。弦楽と歌の公演もあったのですが、チケットが売り切れてしまい、ピアノ伴奏のほうに行きました。
そのときは、CDも買わなかったし、公演後はすぐに帰ってしまいました。
しかし、それは大きなチャンスを逃してしまったなと思っていたのです。今度チャンスがあれば、せっかく同時代に生きていて、同じ時と場所を共有しているのですから、本人に目の前でサインをしていただけたら嬉しいと思いました。
どこでやるのかなとボヤボヤしていて、気がつくと、もう100人は軽く超えるほどの、ものすごい長い列ができていました。
その最後に並びました。その後からもさらに人が並びました。
サインは買ったCDのどこかにしてもらうので、それぞれに希望の場所を決めますが、大部分の人はCD本体にサインをしてもらっていました。
私はちょっと変わり者で、CDの中にある冊子のページを開いてシュトゥッツマンとオルフェオ55の写真が載っているページにサインをしていただくことにしました。
長い列になっていましたが、どんどん進んだので、それほど待ちませんでした。
サインの列にならんでいるときに、近くにいた人と話をしました。
最初はCDのパッケージが開けられなくて困っていたら、そばにいた若い女性が開けてくださいました。
そんなことから、2列に並んだ隣の人と後ろの2人の計4人(女性)でナタリー・シュトゥッツマンの話をすることになりました。
どの人も連れはいなくて1人できていました。そのうち2人の方は、都内ではなく、遠くの県から来ていたので驚きました。
そして、驚くべきは、私と同じように日々、ユーチューブを聴いているのだそうです。
やはりナタリー・シュトゥッツマンの歌声が抜群なので、その虜になり、ユーチューブを見るとついつい時間が経ってしまうのだそうです。
そして、昨年、セイジ・オザワ松本フェスティバルのシュトゥッツマンの公演にも目をつけていましたが、チケットが手に入らなかったなど、考えることが同じなのでした。
どの方も、私とは違いクラシック音楽に詳しくて、日頃から別の音楽家の演奏などにも精通しているようでした。コーラスや声楽を勉強している人もいました。
ナタリー・シュトゥッツマンの公演を目指して、かなり遠くからでもやってくるというのは、クラシックの世界にも「追っかけ」というものが存在することを知りました。
とはいえ、もしかしたら、自分もその一人なのかもしれません。
娘が、ある映画の試写会で知り合った人たちと友達になり、その後も付き合いを続けているということを聞いたことがありますが、そういうことは大いにあるもんだと実感しました。
1人のアーティストについて、自分と同じように関心を持ち、魅力に取りつかれている人間が存在すれば、そのつながりで仲良くなるのも当然です。
特に名前や連絡先を教え合ったりはしませんでしたが、もしかしたら、今後もまた音楽を通して再会するかもしれません。そういうことで、偶然に何度も合うことがあれば、どんどん親しくなって行くのも自然です。
同じような趣味の人に出会ったことは、驚きでもあり、自分が変わり者ではないということも判明しました。
しかし、それと同時に、自分のクラシック音楽に対する無知さ加減も痛感することになり、もっと勉強しないといけないなと思いました。
あ、話題がそれましたが、そうこうするうちに順番が巡ってきて、ナタリーシュトッツマンさんの座っている机の前に立ち、サインを書いてもらうべく冊子のページを開いて指差しました。
サインは「Nathalie」だけ書いているのかな?だから早いのですね。
日本語だけしかしゃべれないので「ありがとうございました」と言ってシュトゥッツマンさんの目を見ると、こちらの目をしっかり見て笑顔を返してくださいました。
本当に素敵な人です。
サインをもらっている人々は大部分女性だったように思います。
シュトゥッツマンのファンは、女性の方が多いようです。
男性はやはり女性らしい華やかな歌手の方が好きなのでしょうか?
シュトゥッツマンは中性的で、服装も地味ですが、容姿もきれいで本当にかっこいいです。
演奏中、私の隣の席に座っていた男性は、終始プログラムを見つめて聴いていて、舞台にほとんど目をくれることもなかったので、本当に不思議でした。
そして、用事があるのかアンコール曲を聴かないで帰って行きました。そういう人も珍しいです。
なんとしてもシュトゥッツマンが見たくて、彼女の声が聴きたくて来た人もいれば、クラシック全般のファンで、クラシックの中の1つとして足を運んだ人とが居るのでしょう。
そして、好みに合う人もいれば、まれに合わない人もいるのかもしれません。
サインをもらっている人は、やはりナタリー・シュトゥッツマンだからこそやってきた人が多いです。
帰りは、サイン会の列で言葉を交わした人たちと一緒に四ツ谷駅まで帰りました。
楽しく有意義な体験でした。