ゴールデンウィーク中に小路幸也と言う人の「あの日に帰りたい 駐在日記」という小説を読みました。
これは、図書館の閉館間際にあわてて借りてきたもので、目の前にある本を適当に選んできたものです。
題名に興味を持ったからこれになったのでしょう。
神奈川県の小さな村のようなところに赴任した駐在さん夫婦とその土地の人々との出来事が、駐在さんの妻の日記に綴られているという形です。
一言で印象を言えば、素人が書いたような物語だなと思いました。
駐在さんの妻は、外科医にしては、あまりにも素直で平易な心を持った人で、簡単な日常会話のような言葉で記されています。
内容も、滝に身を投げて自殺したとされる指名手配の人が、目撃情報だけでその当人と断定されるような筋書き。
そんなことで、本人が特定できるわけがなかろうと、現実との乖離を感じてしまうのでした。
猟銃を持った人の脅しをやめさせるために、元刑事で射撃の上手な駐在が、銃をかすめて打って解決するなど、それもあり得ない。そして、発砲したのはどこかで何かを熊と間違えたことにして報告するなど、そんなことが罷り通るわけないです。
数々の非現実的な詰めの甘い設定に、なんとなく興ざめしてしまい、いやいや、これは子ども騙しみたいな小説だからそれでいいんだろうと思うわけでした。
その他にも、突っ込みどころ満載な伏線の設定や物語の展開ですが、まあ、娯楽小説というところで、テキトーな連続テレビ番組にでもしたら面白いかもしれません。
この主人公は、元外科医だったけど、どうして右手を怪我して動かなくなってしまったのだろうか?
駐在さんは、高卒でよく刑事になれたものですが、その後、僻地の交番のお巡りさんになったのは何故なのでしょうか?
指名手配で滝に自殺したとされた人は、本当はどこかにいるのか?
猟銃騒ぎを起こし、村を出た登場人物と劇団をやってるホステスは、その後どこへ行ったのだろうか?
他の様々な登場人物たちも、その後はどうなるのだろうか?
この物語は、今後も色々な不明点を展開させて続編が作られていけそうです。
そういうことも計画済みなのかもしれません。
2019年9月発行。書下ろし。
裏表紙を見ると、既に「駐在日記」というのが発行されていたみたいなので、この物語の前の出来事やいきさつが載っているのかもしれません。
・・・
例えば、絵には画風というものがあり、緻密な絵もあればパステル画のような絵もあります。
文にも様々な文体や構成があるのでしょう。
この小説は、絵に喩えればパステル画のようなものかもしれません。
そして、全体的に平和な世界ですが、時にヒヤヒヤドキドキすることもあり、面白いと言えば面白いかもしれません。
私が最後まで読み終えたということは、面白かったということでしょう。