1996年
「二十日間も実戦で投げていなかったし、東京ドームのマウンドも初めて。不安もあったが、あのアウトで自信がついた」八回以降は、前評判通りの素晴らしい内容だった。制球が良く、変化球も切れるうえに、「真っすぐが素直じゃない」(江藤)。その代表が八回の正田への投球。140㌔そこそこの速球を微妙に変化させて、ファウル二つでカウントを稼ぐと、3球目に得意のフォーク。見逃せば完全なボールだが、バットは止まらなかった。四者連続の三振はすべてフォークが決め球。長嶋監督が「あれは振るよ。ストライクゾーンから落ちるから」と言う通りの絶妙のコントロールだった。堀内コーチは「ガルベスが剛ならマリオは柔。カウントを取る球と三振させる球が違う。目を見張る球があるわけじゃないけど、野球をよく知っている」と評価する。タフな精神力と巧みな投球術。巨人が待ち焦がれた抑えの切り札になり得ることを、マリオはデビュー戦で証明してみせた。
フォーク、フォークで押してきたマリオが変身。この日は、最後のミューレンこそフォークで三振に仕留めたが、それ以外は直球やスライダー、シンカーで2回無失点に抑えた。村田真は「パターンを変えた投球もしっくりいった」。