1984年
年棒だけ見ると川口や津田とそんなに変わらないところまで詰め寄られてきている。「何クソ」山根の闘志に火がついた。1月20日から始まったベテラン組の自主トレで、目立つ動きをしていた二選手、それは高橋慶とこの山根である。昨年まで歯を見せて練習する場面がよく見られた。しかし今年はグッと唇をかみしめ、ほとんど笑顔を見せない。それは今年にかける意欲の表れであろう。キャンプに入ってもこの表情は変わらないどころかますます激しくなっていった。北別府の次に位置するエース級の扱いを受け常に二番手をキープしていた。それが川口、津田の台頭もあって、今年の成績いかんにせよってはランクを下げられる可能性があるのだ。「エース級の扱いを受けるのと四番手では全然違いますからね。中四日である程度一年間投げられるのが、四番手となると雨が降ればいつ自分の出番がやってくるのか分からなくなる。ペースも狂うだろうし、それこそ勝つことが難しくなってきますよ」ここ数年、目立った成績が残せないのはフォークボールを使えなくなったため。54年、55年の日本シリーズで披露した快速球とフォークの落差はどこにいってしまったのだろうか。「結局、腕が下がってしまったため、フォークが落ちにくくなった。落ちないフォークはホームランボールですからね。投げるのが怖くなり、スライダー、シュートが多くなったんです」と語る。山根自身、自らが復活するには、フォークの復活以外にはないと考えている。勝負どころで伝家の宝刀を抜けるかどうか。そのために「自分は速球投手である」という考えを改めた。「自分の球は速い」だから下位打線のときは真っすぐ一本で押すことが多かった。でも、それが裏目に出て、昨年は下位打線にずい分つかまりました」あっさりとした性格が災いしてしまったのだ。しかし、決して勝負に対する執着心が無いわけではない。むしろ人一倍勝ち星を欲しがっている「今のローテーションは中四日になっていますが、僕は中三日。中二日でも投げろと言われればマウンドに立ちますよ。また投げる機会が多ければ多いほど勝ち星が転がり込むチャンスが多いですからね」もう一つ山根は今年、フォークの復活と共に人気の回復を狙っている。北別府、川口、津田らと比べて、山根の人気は今一歩劣る。なぜ、人気が出ないのかと悩んだ。「ある一つのことに気が付いたんです。それは広島球場で勝てないことに原因があるんじゃないかと。一昨年は0勝と出るたびにKO。昨年は4勝しましたが、8敗ですからね。地元で勝てないようではファンも声援してくれないでしょう。今年は内弁慶になろうと思っています。シーズンの半分は市民球場でゲームをするんですから、市民球場のマウンドが好きにならないと勝ち星も増えないでしょうし」首脳陣のノルマは最低でも15勝。それに負け星を減すことだった。今年からピッチングコーチに就任した安仁屋コーチは、北別府と二人で競争させるつもりでいる。「ベイ(北別府)と山根は、1年間セットで投げさせたい。互いに良いライバル意識を植え付けさせあいつが勝ったんだからオレも負けられないの気持ちがあれば、二人で35勝出来るはずだ。川口、津田が出てきたといっても、実績から見てまだまだ及ばない。この二人には1年間フルに柱となって働いてもらわなければ困るのだ」厳しい注文だが、まだまだ老け込む年齢ではないということだ。巨人に江川、西本聖と太い柱があるとすれば、赤ヘルでそれに対抗できるのは北別府と山根以外考えられない。「自分でも15勝はしなくてはと思ってます。勝たないと給料があがりませんからね。月に最低2勝、このペースにあと2つ3つプラスされれば目標に達する。決して無理な数字じゃないと思います」この意気込みに今季は大いに期待してよさそうである。
年棒だけ見ると川口や津田とそんなに変わらないところまで詰め寄られてきている。「何クソ」山根の闘志に火がついた。1月20日から始まったベテラン組の自主トレで、目立つ動きをしていた二選手、それは高橋慶とこの山根である。昨年まで歯を見せて練習する場面がよく見られた。しかし今年はグッと唇をかみしめ、ほとんど笑顔を見せない。それは今年にかける意欲の表れであろう。キャンプに入ってもこの表情は変わらないどころかますます激しくなっていった。北別府の次に位置するエース級の扱いを受け常に二番手をキープしていた。それが川口、津田の台頭もあって、今年の成績いかんにせよってはランクを下げられる可能性があるのだ。「エース級の扱いを受けるのと四番手では全然違いますからね。中四日である程度一年間投げられるのが、四番手となると雨が降ればいつ自分の出番がやってくるのか分からなくなる。ペースも狂うだろうし、それこそ勝つことが難しくなってきますよ」ここ数年、目立った成績が残せないのはフォークボールを使えなくなったため。54年、55年の日本シリーズで披露した快速球とフォークの落差はどこにいってしまったのだろうか。「結局、腕が下がってしまったため、フォークが落ちにくくなった。落ちないフォークはホームランボールですからね。投げるのが怖くなり、スライダー、シュートが多くなったんです」と語る。山根自身、自らが復活するには、フォークの復活以外にはないと考えている。勝負どころで伝家の宝刀を抜けるかどうか。そのために「自分は速球投手である」という考えを改めた。「自分の球は速い」だから下位打線のときは真っすぐ一本で押すことが多かった。でも、それが裏目に出て、昨年は下位打線にずい分つかまりました」あっさりとした性格が災いしてしまったのだ。しかし、決して勝負に対する執着心が無いわけではない。むしろ人一倍勝ち星を欲しがっている「今のローテーションは中四日になっていますが、僕は中三日。中二日でも投げろと言われればマウンドに立ちますよ。また投げる機会が多ければ多いほど勝ち星が転がり込むチャンスが多いですからね」もう一つ山根は今年、フォークの復活と共に人気の回復を狙っている。北別府、川口、津田らと比べて、山根の人気は今一歩劣る。なぜ、人気が出ないのかと悩んだ。「ある一つのことに気が付いたんです。それは広島球場で勝てないことに原因があるんじゃないかと。一昨年は0勝と出るたびにKO。昨年は4勝しましたが、8敗ですからね。地元で勝てないようではファンも声援してくれないでしょう。今年は内弁慶になろうと思っています。シーズンの半分は市民球場でゲームをするんですから、市民球場のマウンドが好きにならないと勝ち星も増えないでしょうし」首脳陣のノルマは最低でも15勝。それに負け星を減すことだった。今年からピッチングコーチに就任した安仁屋コーチは、北別府と二人で競争させるつもりでいる。「ベイ(北別府)と山根は、1年間セットで投げさせたい。互いに良いライバル意識を植え付けさせあいつが勝ったんだからオレも負けられないの気持ちがあれば、二人で35勝出来るはずだ。川口、津田が出てきたといっても、実績から見てまだまだ及ばない。この二人には1年間フルに柱となって働いてもらわなければ困るのだ」厳しい注文だが、まだまだ老け込む年齢ではないということだ。巨人に江川、西本聖と太い柱があるとすれば、赤ヘルでそれに対抗できるのは北別府と山根以外考えられない。「自分でも15勝はしなくてはと思ってます。勝たないと給料があがりませんからね。月に最低2勝、このペースにあと2つ3つプラスされれば目標に達する。決して無理な数字じゃないと思います」この意気込みに今季は大いに期待してよさそうである。