想風亭日記new

森暮らし25年、木々の精霊と野鳥の声に命をつないでもらう日々。黒ラブは永遠のわがアイドル。

大雨の降る日に

2019-10-25 22:27:33 | Weblog


(夏のおだやかな日の川)

9月10月と関東と東北は台風の大雨で
甚大な被害を受けた。
大震災時の津波、放射能、今度は大雨と
川の氾濫、洪水だ。
家をまた失ったという人が何人もいて
言葉につまる。

母が病床からTVを見ながら深くため息を
ついて、どうしてかねえ、どうするかねえ
と独り言。長生きさせてもらって、何の役
にも立たん、と次は言う。
言葉をさがしても、間抜けなことしか思い
つかない。
いいの、たくさんやってきたから
母さんはいいの、
ありがたいだけでいいの、
と、また今日も言ってみる。

避難しようと声をかけた隣人に
おれはここでいい と言って1階で溺れた
おばあさんは100年近く生きてきた。
この30年は一人暮らしだった。
母も50歳で夫と死別してからもう45年、
近くに娘がいても一人で暮らしてきた。
母も多分、わたしはいい、と言うだろう。

おぶってでもいけなかったかと思ったり
するけれど、みな自分が逃げることに必死
だから他人に気がまわらない。
なんてこった、と胸の中でつぶやく。


雨が落ち着いてから、無事ですか?
という連絡を受け、無事ですと応える。
被害の大きさをニュースで知ってから、
無事ですというのが憚られる気持ちになる。
おかげさまで、とも何だか言えない。

東北は多くの人が3.11からの再出発
なのだから…またか、これはないだろうと
天を仰ぐ。
うなだれる。
だけど、うつむいていられないから
生き延びた者は黙って働く。
浸水1メートルから修理代が補助されて
99センチはどうなの?80センチ?
いや50センチでもダメなんだ、という話。
どれもみな、セシウム降下の汚染田んぼ
や牧場の話と似ていて、国は冷たい。


上の、黄色いバラは名前を忘れた…けど
ビニールハウスのおかげで、今年は春秋
二度咲いてくれた。
大雨のなか、しっかりと立っていた。
M君がスマホで撮って仕事で帰れない私に
送ってくれた。バラが心配だったから嬉し
かった。いや、バラも、心配だ。

東京は多摩川の氾濫と八王子あたりの被害
をニュース映像で見ながら翌日の約束が
多摩川近くだったことを思い憂鬱だった。
自分の都合がまず頭にあることの業。

交通機関が全て止まり、百貨店が閉まり
都心の人通りのない道は、雨風の音だけ。
早朝のまだ日射しを待っている前の静寂
とは違う灰色の静けさだった。

バラが無事なことも、家が無事なことも
ダムが溢れなかったことも。山が崩れて
こなかったことも。
ありがたかった、本当に。
この20年のあいだに通り道にある川が
氾濫し、なんども通行止めになった。
大きなブロックで護岸してあっても川の
勢いを知っているから心配だったのだ。


(四月、暖かくなった日の川)







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