花 石牟礼道子

石牟礼道子さんの詩です。
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「花」

花が
この世でもっとも悲しい人々の為に
ひらくように

平和は
泥にまみれ　けりやられ　つばをかけられ
してきた人々のためにある

今のあなたの暮しが平和だから
平和を守れ　というな
人々の貧困とうらみを土台にして
いる限り

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自民党総裁が交代した。
新しい総裁が首相になったので
地元選挙区である商店街の入口
に「ご就任おめでとうございます」
と横断幕が掲げられたという
NHKニュース。
秋田の実家、二階建て民家にも
祝賀の垂れ幕が軒先から下がり
宮城から来たという見物客を
映し出していた。

顔を模したという饅頭も登場、
庶民の商魂がここぞとばかり
発揮される。
横断幕は地元に金を落として
くれることへ期待を込めた祈願
祈祷の幟、忘れるなという旗印。

にこにこと万歳三唱した人々の
願いが叶ったたためしはないが
いまはまだ、幟制作代や菓子箱
代金のことは誰も口にしない。
今はまだ。

「人々の貧困とうらみを土台にして」
上りつめた者たちの
得意顔の揃い踏み。
どうして我が慶びと勘違いするか
うらやむか
万歳の意味を取り違えるか

どこまでも愚か、蒙昧の群れを
テレビが映し出す。
チャンネルを替えても同じ祝賀の
ニュース。
ニュースではなく情報操作か刷込か。

花は
今日は飾らない。
明日も、、

慰められている間に
根ごと土ごと
奴らに奪われてしまうから