夜道を走っていたら前方、道の真ん中でミチクサを喰っている!驚くことなく草を食み続けて通せんぼ。
あー、あの庭に来てた瓜坊たちだ。シマシマがとれて独り立ちしたのか、きょうだい仲良く夜の散歩中かよ!
車をソロソロ前進させる。やっと端によけてくれたが食べるのはやめない。どうにか通り抜けた。
こぎつね、小鹿、ネコ、そしてイノ君。
いつぞやはツキノワグマの子どもが呆然と立ちすくみ、それから慌てて川の方へ、茂みを踏み分けて渡って行った。それきり熊とは会わないが、あのときは夜ではなくまだ明るい時間だったから胸元に白い毛がみえた。熊に注意と書かれた立札がまだ立っていない頃だった。今ではヒトに注意と標を立てた方がいい…
会いたい会いたいと思うときは何にも起きないが、こんなににぎやかな夜はめずらしい、おかげで昼間の出来事でそれまで気分が塞いでいたのがいっぺんに明るくなった。
ここでは野生の中にいることを感じる。混ぜてもらっている側である。
けれど、このところ山道のすぐ近くまで大型ダンプとブルドーザーの音が騒がしく聞こえてくるようになって、雑木林の木々が伐採された。数日で真っ黒な平らな地面が現れる、そういう場所が数カ所ある。何をしようとしているのか工事の告知板がないし、村はずれだから人知れず行われている様子。まるでわからない。
環境省の除染土埋め戻しかもしれなくて、ザワザワと不安になる。イノ君やキツネ、小鹿がいるところが人災の後始末のために侵されるのは腹立たしい。
なぜだろう。
こうして、人はやらなくてもいいことを欲張ってやり続けている。
何故の答えは金のために。
金を天下に回さず、我欲で自分の懐に集めるだけのヤツを守銭奴というと教わった。そういう者は金より価値があるものがあることを知らず、またそれに一生出会うことはない。目の前にあっても気づかないからだ。
野生の友の近くは楽園だぜ、金はないが。