しっとり濡れた樹々の色はいい。
晴れた日のよりも、いくぶん好きで眺めてて飽きない。
時間が止まった世界にいるようで。
しかし…雨が上がると…
庭の草むらでくつろぐ(腹ごなし…)親子たち。
望遠レンズで観察中。
右がチャプ、よく見えないがおっぱいあげの最中。
左がジョリコとその子。この子はおっぱい卒業し、
やんちゃ盛りである。
何かを狙っている。
じゃ~んぷ、したが、逃げられたらしく
まだ小さなバラの木にて爪研ぎでごまかそうと
して、うさこにパンと手を叩いて呼ばれ止める。
呼びにくいことこのうえない
「ジョリコの子!」「だめよ!」
イトコのチャプコをどけて叔母チャプを襲う
ジョリコの子。猫はシッパイすると、かようにごまかし
さっぱりと忘れる、ノーテンキさが最高である。
格闘中、どさくさにまぎれ、おっぱい泥棒か…
ジョリコは右手から背後へ移動。
ついにチャプ叔母はキレる。
うっせーよ。
母ジョリコはくつろぎ場所を移動して背後へ。
緑の大きな葉の後にジョリコ、だまし絵みたいに
隠れているが、全員の視線はカメラ(縁側)を注視。
縁側のおばちんが呼んでるから~って呼んでない。
呼んでない。
来なくていい。
そこで止まれ、と言っても犬のように聞いてはくれず。
一番乗りじゃ。
たぶん、チャプの脳内にはミルクのお皿が浮かんでいる。
秋雨が激しく降って、ちょっとした晴れた間の
やさしい風景。
みどりの草むらに、紅く染まった桜の葉が落ちて
樹々も夏の名残りの夢をみているようだ。
楽しさのあとの、やすらぎ。
これから実りの季節。
木の実が成り、黄や赤の恵みの色に染まっていく。
夏櫨(ナツハゼ)の実もたくさんついて赤くなって
きた。赤から赤黒くなったら収穫する。
収穫した実は今年も放射能測定所へ持って行く予定。
ジャムにしたい気持ちは山々だが、まだ食べない。
まだ4年半、でも4年半、そういう葛藤よりも
冷静に観察する、という苦手なことをやっとります。
木の実は一つのバロメーターになると思うので。
政府が決めた放射能安全基準値は100ベクレル上限。
都合にあわせた数値だ。誰の都合か?
東電関係各所関係かたがたの都合である。
食べて応援はできない。
本来はゼロ。自然のなかに元々あるものはかぎりなく
ゼロに近い数値で検出される。
前回測定時は5ベクレル/kg検出だった。NDではない。
このくらい食べてもいいんじゃないか~と測定所の
兄さんは言った。オレなら喰うね、と。
そばで聞いていた受付の姉さんは、この人の話は
いつもこんなふうだから相手にしなくていいです、
と半笑いだった。
冗談にできる数値だったから暗くはみんな暗くは
ならずに済んで、でも食べないよ~と返した。
実際、2本しかない夏櫨の収穫全部を測定に使った
のでもう食べる分はないのであった。
夏櫨の樹が大きくなるころ、わたしがおばあさんに
なっている頃、測定に出しても余るほどの実がつく
頃には、セシウム137は減っているだろう。
またまた上から降ってこなければの話だが。
再稼働に賛成する人々は、何も失っていない人か
失ったことに気づいていない人である。
あるいは自分の持ち物を失なっても、
また手に入れればいいと、金さえあれば手に入ると
思っている人だろう。
この庭の夏櫨は、この世でひとつ。
この樹のいのちは、この樹だけのもの。
代わりはないのである。