山の家から東京へ戻る道、電話が鳴った。
LINEの着信音は姉だ、ちょうど思って
いたところだった。
姉のスマホから母の声がした。
お月さんを観たね?
いま歩きながら観てるよ。
まんまるだよ、そっちも見えるね、
ああ、いまちょうどね。
お昼に白玉を作ったよ、あんこをのせて
食べたよ、お月見団子じゃなくて
おなか空いておやつに作ったの
そしたら満月だったんだね、
あんたはいつもそんなこと言うて
おかしな子じゃ
お団子はお月見、お礼にお供えするの
ああ、そうそう、そうだね
秋だもんね、一番の満月。
夜の神様に照らされて実るもんね
おかさんも昔、父さんとおっかさんと皆で
お月見したさ、いつも
さっきお母さんの声が聞きたいなあと
思いながら歩いてたよ
お父さんが月の光がきれいだと言ってた話
したっけ。とてもきれいだと言ってた
そうかい、そうならよかった
いいところに行ったね、お父さんは
それはよかった
家に着くまでの道を、ほわほわと歩いた。
父と死別して独り身になって数十年、
母は父を恋しがりながら百歳になった。
月の光に気づくと昔から父を思った。
いつか母のことも思うだろう。
母さんのことは昼も夜も思いそうだ。
離れていてもいっしょに観ている今
ひとときが永遠
LINEの着信音は姉だ、ちょうど思って
いたところだった。
姉のスマホから母の声がした。
お月さんを観たね?
いま歩きながら観てるよ。
まんまるだよ、そっちも見えるね、
ああ、いまちょうどね。
お昼に白玉を作ったよ、あんこをのせて
食べたよ、お月見団子じゃなくて
おなか空いておやつに作ったの
そしたら満月だったんだね、
あんたはいつもそんなこと言うて
おかしな子じゃ
お団子はお月見、お礼にお供えするの
ああ、そうそう、そうだね
秋だもんね、一番の満月。
夜の神様に照らされて実るもんね
おかさんも昔、父さんとおっかさんと皆で
お月見したさ、いつも
さっきお母さんの声が聞きたいなあと
思いながら歩いてたよ
お父さんが月の光がきれいだと言ってた話
したっけ。とてもきれいだと言ってた
そうかい、そうならよかった
いいところに行ったね、お父さんは
それはよかった
家に着くまでの道を、ほわほわと歩いた。
父と死別して独り身になって数十年、
母は父を恋しがりながら百歳になった。
月の光に気づくと昔から父を思った。
いつか母のことも思うだろう。
母さんのことは昼も夜も思いそうだ。
離れていてもいっしょに観ている今
ひとときが永遠