想風亭日記new

森暮らし25年、木々の精霊と野鳥の声に命をつないでもらう日々。黒ラブは永遠のわがアイドル。

聞き上手の日

2012-02-29 23:04:32 | Weblog
ある人が昨日のベイビーの写真を見ましたよ、と言って
「さすがだなあ、大人な顔をしてると思いましたよ、わたしなんか
かなわない、さすがだ、知っている眼をしてますね~」と言うので
帰ってしげしげと見つめてみた。

ベイビーはたしかにオヤジ顔であった。
かわいいオヤジ顔をして、知ってるよという眼でわたしを見る。
知られていて安心なわたしは、うん、と眼で返した。

今日は特に疲れた。
疲れたなどと直裁に書いてつまらん話だが、実に疲れた。
嘘つきと2時間近くも話をしていたからである。
いい歳をしているのだが、少しも大人でないその人は自分の言って
いる矛盾にちっとも気づかないのであった。
自分が頭がいいと思っているのだろう。
そしてダメだと思われたくないのだろう。自慢話みたいな時代遅れの
話をしゃべるしゃべる。木に昇りつめ、てっぺんからしゃべりまくるのを。
テーブルのコーヒーにブラウンシュガーを入れ、かき混ぜ、聞いていた。

本日のわたしは実に聞き上手を演じた。そして相手の泥をすっかりと
吐かせ、上機嫌で席を立つその人はわたしにバレてることなどたぶん思いも
よらないだろうと思った。見送って、とたんに身体が重くなった。
次の仕事へ移動するのに困るほどであった。

わたしは本来嘘がつけないので、嘘つきの話など3分も聞いていられず
ツッコミ倒すタイプである。大人げない性分である。
それが2時間、相手の話をさまたげずに聞いていることができた。
なぜだろうかと思うが、一つ思い当たるのは、恥ずかしかったからである。

相手があまりにも品がないので恥ずかしくて、ただ聞いていたという事。
聞きながら少しだけ、ほんの少し聞き返すと、さらに恥ずかしいことを
バンバン垂れ流して返してくれるのである。
泥だらけのテーブルを前に、やや呆然としつつ頭は冴えて回転していた。

人の生き方はいろいろだろうが、ある一線を越えると目もあてられない
くらい醜くなってしまうのだが、越えた人はもうこちらには戻らない。
戻らないまま久しく向こう側で暮らすとケモノ臭を放っていても自分では
あら、いい匂いと思うようだ。
隣人を騙し、誹り、平気で裏切って、その隣人と飯を食い、自分が勝った
と思っている。それは人ではない、と思う。

ベイビーを大人ですね、と言った人はまだこちら側にいたいのだと
思った。大人を意識するということは、人としての生き方を考えて
いるということだから。
それにしても、ひさかたぶりにびっくりして疲れた日であった。
東京の雪にも、そして強烈な二枚舌さんにも、驚いてしまった。
その舌で舐める味は苦いと思うんだけどな。

ゆだんしているといろんな人に出会う。嗚呼、人生哉。
気晴らしにマツコと有吉を見て寝るうさこであります。












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まだまだ雪です

2012-02-28 11:16:17 | Weblog
ベイビーの後ろ、外は雪景色。
除染作業から戻り道降り始め、山の中はたくさん積もり
坂道はソロソロと昇り降りしなければなりません。
休日の来訪者は都会の人なので不慣れで、すごく時間が
かかりましたが、雪国に慣れつつあるうさこは大丈夫であります。



スリップ事故を経験して、運転の腕を上げたわけですわよ。
っていうか、前が知らなすぎたわけで、無知で事故った。
びくびくしてばかりでは、人生もスリップしますわよん。
よく観て、よく考え、よく智って、行う。
行うときも慎重に、謙虚に、と思いながら、お願いしながら
やっています。(けっきょくのところ心配性ですわよん)

では、ちょい忙しいのでこの辺で。また書きます。

PS:人の道を歩くということは祈り。そうことだと思います。
祈りの意味が違えば解釈が違ってくるのですが、実感として
そう思います。
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セラフィーヌの庭

2012-02-23 11:35:09 | 

セラフィーヌという掃除婦が霊的に導かれ絵を描く、樹に抱かれ
樹を抱く。木の実を砕いてラッカーに混ぜて絵の具を作る。
床にモップをかけ、床に這ってワックスで磨きあげる。
残り物の肉を雇い主や画材屋の主人にもらい、礼は言わず。
腹を満たすでもなく肉を食べパンをほおばり、こぼれたパン屑は
エプロンのポケットに入れ、樹のある草原へ歩く。



コレクターで画商のドイツ人ウーデがその奇妙な絵を見いだす
まで掃除婦だったセラフィーヌ。さげすまれ世の中の最底辺に
生きてきたセラフィーヌは類型的な無垢の人として描かれては
いない。じゅうぶんすぎるほど俗臭を放つ、美しくない姿。
魂もまた、同じで汚濁の中で救いを求めあがいているだろうと
その描かれた奇妙な絵からうかがえる。

先日の「共喰い』に併録された『第三紀層の魚』を読み終えた
時の感じもそうだったが、今起きている目の前にある諸々の面倒
とは関係のない世界に一時避難し、回復した自分自身があった。
セラフィーヌが生きていたんだからわたしも生きてていいように
思うわけだった。
ウーデでも妹のアンヌ・マリーでもなく醜いセラフィーヌは
とても身近に感じる女だった。
セラフィーヌ年を取らない、老女だけれど、女、女の子。

森の中で樹々と、猫と、風の奏でる音、声。
それらが空にも土にもつながっていて、つながった間に抱かれ
わたしは回復する。しばしの天上の心地の後、諸々の面倒が思い
出されてきて、またわたしは怒りっぽい掃除婦に戻っていく。
くりかえしながら、また森へ戻る。どこへも行かず、ここへ。
戻れればいい、そう思った。

映画の話なんだけど独り言のメモ。
いい映画なので何度でもみるといいと思う。セラフィーヌを観て
旅した気分になったりもしてお得であった。
本もいい本で、まあ三回は軽く読める(読んだ)。
いいものはやっぱりいい、沁みてくる。
外界から逃げたい方はいいんじゃなかろうか。

アッハーアッハー、実は諸々の面倒はガンガン続いているだー。
メゲナイぜ。JAE◉、除染の妨害するんだもんね、役所は強い、
まいってしまう。でもメゲナイぜ。
勝つのは我々市民だ。

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人生のコツ

2012-02-22 00:09:08 | Weblog
鬼は外、じゃなくて外は雪。
僕はウチだもんね。



あと二週間と少しであの日だ。あの日が近づいて、ああ、あの日が
もう巡ってくる、と思うだけで胸の奥に鋭い痛みがさす。
すぐに痛みは消えるけれど、首筋や背中が重たい。
重たさもじきに消えた気がして、僕ちゃんと遊ぶときみたいな
ほんわかしたやさしい気持ちになれるかというと、そうでもなく
重くもないけど凝りのようなものが身体の奥に居座っている。
どこか遠くへ行きたくなる。

人生に幾度も試練の時は訪れる。
今もそうかもしれないが、かつて試練だなあと思ったときの酷さに
比べるとたいしたことではない気もして、怖さや底知れない不安は
感じない。けれども重たいのである。どんよりとした濁った水の
重さだ。そこに足先をつけたまま足を引き抜きたいと思いながら
立ち止まっているのも自分の意志なのだからしかたない、みたいな。

なにごとにもコツがある。
コツがわかればなんなくこなしていく。
何をするにもやるにもそういうコツがあって、それを呑み込むと
物事はたやすくなり、面白くなってくる。
コツがあたりまえになって飽きてしまったりもする。
するとまた次の上級のコツを模索する、人の生きる時間とはコツ
との出会いの連続ではないかしらん。

ある時、カメが「人生のコツ」と言った。

人生のコツとはまた、デカイ話であるので、わたしには遠い。
今のわたしが会得したいコツはもっと卑近で、小さいものだ。
いつもそうなのだ。わたしは小さいものを求める。
小さいもので安心する。

ありがとうとこんにちは、みたいな小ささ。
それがあればじゅうぶんに一日生きていけるから。
一日に一日が数珠のようにつながって、人生。
ありがとう、ありがとう、といいながら毎日過ごしたいのだ。

小さいコツもなかなかに大変で、半人前。
もういい歳なんだが‥、一人前は遠い。
誰かの助けなくしてはいつも何か足らない。







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想う心はどこからやってくるのだろうか

2012-02-13 11:39:49 | Weblog
(5年前3月18日、思い煩うことなき森の日々だった‥)

想いやるこころを仁と書き表す(旧事本紀)。
仁の意味は愛より広く深い。
まだ生まれたてで浅い仁、小さな仁でもないよりはマシだ。
その仁、想いやる心はどこからやってくるのだろうか、と
あまりにもあさましく醜いものに出会って考えてしまった。
そんなに難しいことだろうか、と。


(オヤツは寝て待てが座右の銘)

この黒い毛皮の人(わたしには人なのであるよ)を撫でて
いると、ふわっと包まれるここち。それは仁である。
仁は想いやるこころなのだけれど、実は与えられることを
知ったときに芽生えてくるのではなかろうか。
感謝する気持ちは仁の種、それもすばやく芽生える種である。

もの言わぬものから受け取る数々の恵みを、受けて、それぞれが
生きている。
オレがオレがとのし歩かなくても、のし歩く土台をそもそもが
用意されていたのではなかったかと、自分の足元にはたと気づく。
時すでに遅しの無力になってからしかないのだとしたら、
それは恨みや憎しみをともなって、己を省みることなどなく
恵まれていたことなど気づく余裕すらないのだろう。
堂々回りで出て来れない。

小さなこと。小さなもの。とるにたらないような、人が気づかない
ようなところに、仁の種は落ちている。ここそこあそこに落ちて
拾われるのを待っている。


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「共喰い」の味わい

2012-02-09 16:15:14 | 
新芥川賞作品「共喰い」は一言でいうと充実した読後感を与えて
くれた小説で、ひさかたぶりにほっとする感じでもあった。
小説の筋は血しぶきほとばしる凄まじいものであるのに、終始、
人の温もりがある、人間のものがたりであった。

温もりはあたたかな血であり、血脈であり、人間存在の根本を
ぎゅっと閉じ込めた物語は、受賞会見で物議をかもした作家の
言葉通り「もらっといてやる」にふさわしい作品であると思った。
これに△つけたと偉そうに記者に答えていた老作家は喰うに
足りて鈍ってしまったのだろうなあと、余計なことも思い出した。

本を読んでいる数日、せわしい仕事で日中はおだやかならざる
状態であったので夜、風呂場に新刊本をぬらさぬようにタオル
にくるんで持ち込んで読んだのであった。
温かな湯でからだがほぐれるのより早く、物語世界の情感が、
じんわりとしみるように伝わって、昼間の雑音と気持ち悪さを
消していってくれた。
読み終わっても身体の芯があたたかく、もう数日たつが、
まだ冷めない。好きか嫌いかで問われるとどちらでもないと
答えてしまいそうな小説である。

好き嫌いを超えて、普遍の物語だからぬくもりがあるのか、
そんなことを思ったりした。
純文学というジャンルは売れないと言われるが事故のような
記者会見が評判になって予想以上の予約注文で増刷だった
らしい。なにがきっかけでもこの本を手にとった人が同じような
温みをどこかで感じているかもしれないことを想像すると、
少し救われる気がする。
こんな不信の世の中であっても。

親があって、子がある。親にもまた子の時代があって親がある。
それが人間であるが、人間から人になるには、道を歩まねば
ならない、そういう一見あたりまえなことをほんとうは行われず、
ほとんどの人間が無軌道に道などないシャバで生きていく。
他人を押しのけたり裏切ったりふんづけたり、平気で嘘をつき、
うまくいったと喜んだり、損をしたと八つ当たりしたりしながら、
歳だけとって醜くなっていく。親から子へそれが連鎖する。

しかしそういう醜さにまだ馴れていない心が身体の芯に隠れて
いるのではないか、間に合うのではないか、誰にもそれはある
のではなかろうかと思いながら、時としてうちひしがれるけれど
やはり思いつづけていたい、そう思っている。








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サバイバル犬生

2012-02-03 08:29:28 | Weblog
みたいな~mmm言ってみたいもんだ、サバイバル。
室内犬と化しつつある親分、雪となれば本能が騒いでしまう。
雨ニモ負ケズ雪ニモ負ケズってなかっこうで前屈み上目使い、
老犬の域にしてはよくやるなあ。
雪の白に黒いボディが映える。

若々しかったころ跳ねまわっていた写真がたくさんある。
今の、こんなふうな、よたよたした歩きかたなんだが、
好きである。
いや、今のほうがもっと好きかもしれないなあ。
いつも今が一番好きだと思っているんだろうけど。



写真だと、足元がおぼつかないのはわからないでしょ?
息切れしてゼーゼー言いながら足もつれながら歩いている。
ある朝、生きるってコミカルだな、と思った。
そしてこの朝、生きるってサバイバルなんだわ、と知ったね。
文明も科学も情報もまるごと含んでサバイバルだと。
嘘を見抜いて騙されないよう智慧をはたらかせて生きること、
それが優れているとか進んでいるとか美徳とかいうもんじゃ
なくて、野生のサバイバルとほぼ変わらない。
勘違いしている人間を自然が笑ってる。
いや、笑ってもくれないのが自然であるね。

放射能の威力は命を破戒するだけでなく、現代人の驕った頭を
ぶん殴ってますね、ガガガガーン。
感受性があればかなり痛いんですが、痛くない現代人病罹患者多数。
痛みに負ケジと犬に教わっているんであります。








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