フレコンバッグ(「汚染」土を入れて運ぶための袋)という
物を、あちこちで目にする。
「原発稼働した方が地域が活性化する」という意見に
接するたびに、あなたの住んでいるところにこれがあると
したらどうだろうかと訊きたい。
規制委員会で審査が通ったからだいじょうぶと言う人に
いや、今まだこれがあちこちにあって暮らしているのだ
この袋はどう片付けるのか決まらないのだ、あなたの家
の庭先にあったらどうだろうか? と訊きたい。
胸のうちで、その思いがいつも湧き上がる。
この地域は不幸中の幸いという言葉が当てはまる処だ。
雨と風に運ばれて、隈なく降った放射能の量がほんの
少し中通りや北部より少なかった。
もちろんホットスポットはあって、3km離れた牧場は
そこで牛を飼い続けていいのか?というほどに汚れた。
村じゅうで除染が続き、夏から山奥のこのあたりまで
順番がまわってきた。
けれども写真の場所は別荘地で、誰も住んではいない。
建物はあるが原発事故以後は、一度見に来たきりで
その後は姿を見かけない。
それ以前も草刈りや庭の手入れをする持ち主ではなかった
が、無惨に荒れ放題なのだった。
村では人が住んでいるところは0.23μsv以下を目標に除染
すると通知してきた。
ここは住んでいないけれども対象になった。
都内に住む持ち主が承諾書にサインしたからだろう。
庭はきれいに草刈りされ、土が剥がされ、置きっぱなし
になっていた廃材も汚染物として回収されたので、
建物以外は新築時のようにきれいに片付いた。
黒い土肌が露出した庭には山砂が撒かれるのだろう。
草はとうぶん生えない。モノグサな持ち主には都合がいい
だろうが…
建物のある百坪余りを除染したところで、その周囲に
広がる林と薮は捨て置かれる。空間線量は一時的に下がる
が強い風が吹けば上がる。
環境庁は山林の除染はしない方針だから宅地だけ行うと
いう話だが、人口比に対して山林面積が大きい村には
放射性物質が今後数十年に渡り放置されることになる。
不景気で税収も落ち込んだ村では除染事業は雇用促進に
つながったというが、ごく一部の人々のためでしかない。
それは目先の活気に過ぎず、豊かな自然だけが取り柄の
この村が以前に戻るための施策はなされていないのが
とても残念だ。
官製談合というオマケ付きの除染、絶望した住民を再び
背後から突き落とすような裏切りかたではなかろうか。
樹木や竹薮は一度刈り取り、下草を払い、表土を剥がす
ことで放射線量はぐんと下がり、全体的に下がる。
放射線量が下がったことはガイガーカウンターだけでなく
身体で感じてわかる。
息をして、なんとなく軽い感じがするのだ。
まとわりつく息苦しさは心因性だけではないと思う。
我が家の敷地内で色々と試してみた。
風のない日の線量は、東京とほぼ同じになった。
数値を見て、気持ちが明るくなるのがわかって、そういう
ことなのだとしみじみ思う。
水がきれいなことが救い…これを守っていけるかどうか
不安といつも隣り合わせなのだが…。