時計を外して出かけることができる。
いや、スマホがあるからね、という
話ではないよ。
今の人はそうらしいけど、じゃない人
だから。
お盆の始め、山のなかで過ごした。
ずっと雨だった。
仕事漬けの脳みそをほぐすには3日間
では足りなかったが、よく眠れた。
ひさしぶりに昼寝もした。
たまらん…。
洗濯が好きである。
洗剤が切れたままになっているのに
気づいて、しかたないから麓のコンビニへ。
セブンイレブンは、帰省した村人で混雑
していた。もっと先の大型スーパーまで
行く気になれないので、ここで済ます。
にわかに増加した人の吐息でなんだか
村全体の空気がゆだっているよう、
清涼な空気は失せて都会的活気なんである。
息を止めて、急いで山へ戻った。
洗濯機を回しながら、雨であることに
思い至る。
しかたない、乾燥機を回そうと気を
取り直すが、乾燥機禁のマーク発見。
で、扇風機を回して当てることを
思いついて、我ながらエライと褒める。
しかし、そんなことで乾くほど山の
暮らしは楽ではないのである。
夏の湿気ときたら、雨ときたら、
延々と続き、ああと思っている間に
逝ってしまう、そういう夏である。
それでも、夏を愛しんで味わう。
いきものに戻り、ここちいい。
脳みそほど重いものはなーいと、
外して降ろして扇風機に当てた。
その間、ごろ寝の枕元に置いた本を
めくる。全部詩集である。
漢詩も一冊、江戸時代の女性の詩人。
詩人てのはやはり切ないいきもの、
いや存在だとしみじみする。
人がしない苦労をわざとしたりして
労しいかぎり。
すこーし湿気が取れた脳みそを
乗っけて、盆明け残暑を乗り切る。
ああ、軽い軽い
…元々そう詰まってはいないし。