韓国には「88万ウォン世代」という言葉があるそうな。日本の「ワーキングプア」と同じような文脈で用いるのだろう。これよりもさらに劣悪な条件、最低賃金以下で働く若者を指して「44万ウォン世代」と呼ぶそうな。
最低賃金以下で「奴隷契約」、韓国でアルバイト雇用問題が深刻に
現在、韓国で定められている最低賃金は1時間あたり4110ウォン(約327円)で、1日8時間27日勤務した場合、1カ月で88万7760ウォン(約7万600円)受け取れる計算になる。これを「88万ウォン世代」と呼び、厳しい雇用状況の中で安い賃金で働く若者を指す言葉として韓国では使われている。
しかし、最近になって「88万ウォン世代」よりもさらに劣悪な条件で働く「44万ウォン世代」という言葉が登場している。「44万ウォン世代」とは、1カ月どんなに頑張って働いても50万ウォン(約4万円)以上稼ぐことができない10代アルバイターのことを指す。
最低賃金以下の条件でアルバイトを雇用するのは、コンビニやピザの配達などさまざまな職種に広がっている。「遅刻5000ウォン、無断欠勤20万ウォン」と一方的な契約を結び、10代アルバイターたちの労働力を悪用するところも見つかっている。しかし、10代アルバイターたちは大学の学費などを稼ぐために、最低賃金以下の条件でも契約せざるをえず、現実はほぼ「奴隷契約」状態だという。
さてここで、正義感を発揮して
「劣悪な労働条件で働かせるのは許せない!最低賃金の遵守を徹底させよう!違反した雇用主には厳罰を!」
と主張し、この主張のとおりに政府が動き、規制が強化されたらどうなるか。
「44万ウォン世代」の半分以上は「0ウォン世代」になるんじゃないか。
最低賃金以下で雇うことによって得られる収益と、処罰されることによって生じる損失とを天秤にかけ、損失の方が大きいなら、そもそも雇用しないという結論に達する雇用主は多いだろう。
最低賃金以下でも学費を稼ぐために仕方なく契約していた学生のうち、多くの者はバイト先を失うことになるだろう。そのために、学費を稼ぎだすことができなくなり、最悪の場合自主退学ということになるかもしれない。バイト先を確保できた者は、最低賃金を得ることができるようになるかもしれないが、シフト等はさらに過酷なものとなるだろう。
と、ここまで書いて、以前に自分が書いたものを思い出す。
先進的な法律は悪法だ - 若年寄の遺言
劣悪な労働環境、悲惨な生活状況。これらを目の当たりにして同情し、義憤にかられ、その改善を雇用主に要求する。雇用主が改善に向けて動き出さなければ、その正義感の矛先を政府に向け、公権力による規制を要求する。
しかし、規制によって新たな弱者を生み、新たな矛盾や歪みを生む。当事者間の契約を規制したところで、問題は何も解決しない。これは韓国も日本も同じこと。
ではどうすれば良いのか。
あなたが。
政府ではなく、既存の雇用主達ではなく、他の誰でもない。
あなたが、最低賃金を始めとする各種労働関係規定を徹底的に遵守した上で、継続的な事業を立ち上げ、雇用を生み出すのだ。起業に必要であろう度胸と才覚に加え、「劣悪な労働環境を改善したい」という正義感に満ち溢れたあなたが、あなたの考える「まともな雇用」を生み出せば良い。
正義感だけでは、腹の足しにもならない。正義感だけでは、むしろ状況を悪化させる。度胸と才覚が必要だ。
私には雇用を生み出す度胸と才覚がない。だから、「政府は規制を強化しろ」とは言わない。
言うのは簡単だ。言うだけならだれでもできる。しかし、言ったところでどうにもならない。賃金を始めとする労働条件を決めるのは雇用主と労働者の契約であり、これを最終的に評価するのは消費者だ。
L.v.ミーゼス著『ヒューマン・アクション』村田稔雄訳 642頁
他の市民たちが、賃金生活者のサービスと業績に対して認める価値によって、賃金率は究極的に決定される。労働は商品のように価格評価されるが、それは、企業家と資本家が不人情かつ無神経であるからではなく、彼らは、今日、賃金生活者と給料生活者が大部分を占めている消費者主権に無条件で支配されているからである。消費者は、誰の厚かましい要求も、ずうずうしさも、うぬぼれも満足させる気はなく、彼らは最も安い価格でサービスを受けたいのである。
最低賃金以下で「奴隷契約」、韓国でアルバイト雇用問題が深刻に
現在、韓国で定められている最低賃金は1時間あたり4110ウォン(約327円)で、1日8時間27日勤務した場合、1カ月で88万7760ウォン(約7万600円)受け取れる計算になる。これを「88万ウォン世代」と呼び、厳しい雇用状況の中で安い賃金で働く若者を指す言葉として韓国では使われている。
しかし、最近になって「88万ウォン世代」よりもさらに劣悪な条件で働く「44万ウォン世代」という言葉が登場している。「44万ウォン世代」とは、1カ月どんなに頑張って働いても50万ウォン(約4万円)以上稼ぐことができない10代アルバイターのことを指す。
最低賃金以下の条件でアルバイトを雇用するのは、コンビニやピザの配達などさまざまな職種に広がっている。「遅刻5000ウォン、無断欠勤20万ウォン」と一方的な契約を結び、10代アルバイターたちの労働力を悪用するところも見つかっている。しかし、10代アルバイターたちは大学の学費などを稼ぐために、最低賃金以下の条件でも契約せざるをえず、現実はほぼ「奴隷契約」状態だという。
さてここで、正義感を発揮して
「劣悪な労働条件で働かせるのは許せない!最低賃金の遵守を徹底させよう!違反した雇用主には厳罰を!」
と主張し、この主張のとおりに政府が動き、規制が強化されたらどうなるか。
「44万ウォン世代」の半分以上は「0ウォン世代」になるんじゃないか。
最低賃金以下で雇うことによって得られる収益と、処罰されることによって生じる損失とを天秤にかけ、損失の方が大きいなら、そもそも雇用しないという結論に達する雇用主は多いだろう。
最低賃金以下でも学費を稼ぐために仕方なく契約していた学生のうち、多くの者はバイト先を失うことになるだろう。そのために、学費を稼ぎだすことができなくなり、最悪の場合自主退学ということになるかもしれない。バイト先を確保できた者は、最低賃金を得ることができるようになるかもしれないが、シフト等はさらに過酷なものとなるだろう。
と、ここまで書いて、以前に自分が書いたものを思い出す。
先進的な法律は悪法だ - 若年寄の遺言
劣悪な労働環境、悲惨な生活状況。これらを目の当たりにして同情し、義憤にかられ、その改善を雇用主に要求する。雇用主が改善に向けて動き出さなければ、その正義感の矛先を政府に向け、公権力による規制を要求する。
しかし、規制によって新たな弱者を生み、新たな矛盾や歪みを生む。当事者間の契約を規制したところで、問題は何も解決しない。これは韓国も日本も同じこと。
ではどうすれば良いのか。
あなたが。
政府ではなく、既存の雇用主達ではなく、他の誰でもない。
あなたが、最低賃金を始めとする各種労働関係規定を徹底的に遵守した上で、継続的な事業を立ち上げ、雇用を生み出すのだ。起業に必要であろう度胸と才覚に加え、「劣悪な労働環境を改善したい」という正義感に満ち溢れたあなたが、あなたの考える「まともな雇用」を生み出せば良い。
正義感だけでは、腹の足しにもならない。正義感だけでは、むしろ状況を悪化させる。度胸と才覚が必要だ。
私には雇用を生み出す度胸と才覚がない。だから、「政府は規制を強化しろ」とは言わない。
言うのは簡単だ。言うだけならだれでもできる。しかし、言ったところでどうにもならない。賃金を始めとする労働条件を決めるのは雇用主と労働者の契約であり、これを最終的に評価するのは消費者だ。
L.v.ミーゼス著『ヒューマン・アクション』村田稔雄訳 642頁
他の市民たちが、賃金生活者のサービスと業績に対して認める価値によって、賃金率は究極的に決定される。労働は商品のように価格評価されるが、それは、企業家と資本家が不人情かつ無神経であるからではなく、彼らは、今日、賃金生活者と給料生活者が大部分を占めている消費者主権に無条件で支配されているからである。消費者は、誰の厚かましい要求も、ずうずうしさも、うぬぼれも満足させる気はなく、彼らは最も安い価格でサービスを受けたいのである。