先の参院選で、れいわ新撰組から二人の障害者が当選しました。
れいわ新撰組が参議院の事務方との間で為すべきは、
・議員の発言や議決・投票の方法をどうするか?
・議員をサポートする介護者を本会議や委員会の場に入れて良いのか?
・介護者が付き添って入場する際の手続きはどういうものか?
の打ち合わせ、確認です。そして、通路が狭くて必要な器具が入れられない等があれば、物理面の改修が必要になるでしょう。
さて、当の二人が参議院で活動するに際し会見を開いているのですが、これが腑に落ちないものでした。
【動画&文字起こし全文】れいわ新選組 記者会見 舩後靖彦・木村英子 2019年7月26日(金)参議院議員会館
======【引用ここから】======
ただ私たちにとって1番大切なのは、身の回りの介護をしてくれる介護者がいなければ、お水を飲むことも、家から出ることも、トイレも、着替えもすべて出来ない。
======【引用ここまで】======
重度の障害を持っていて、自分だけでは身の回りのことができず、移動もままならないという人は多くいることでしょう。冒頭のこの部分は、そうした状態を述べた文章として素直に受け止めます。
しかし、これに続く文章がどうもおかしい。
======【引用ここから】======
国会議員になったものの、重度訪問介護という制度が使えなくなるということで、初登院にも参加できないっていう状況に今、なっています。
======【引用ここまで】======
重度訪問介護という「制度」が使えないから登院できない、この発言は間違っています。
登院のために必要なのは介護者の助けなのであって、制度ではありません。重度訪問介護という制度そのものは、原則として自費負担である介護者への代金を公費(税金)で分担する際の、費用分担の方法、対象、要件を定めたに過ぎません。
○参考 重度訪問介護 | 風福祉会
======【引用ここから】======
ご利用者負担の参考費用
重度訪問介護サービスをご利用される方が負担される概算費用は、以下のとおりとなっています。
「役所が税金から9割支払い、残り1割を自己負担として利用者が支払う。」
「役所が税金から支払うための条件として、これこれの形をヘルパー事業所が備えておく必要がある。」
「ヘルパーがAをした時は税金支出の対象になるが、ヘルパーがBをした場合は算定の対象外。」
といったルールや運用方法の集合体が「制度」であって、あくまでカネ、カネ、カネの話です。重度訪問介護制度を通した形でなくても、カネを工面しヘルパーを手配できれば何ら問題ありません。今まで公費補助を受ける中で利用していたヘルパー事業所と相談して、今度から、議員活動をする時間帯は原則に戻って自費契約にすれば良いのではないでしょうか。
彼らは議員です。
日本の国会議員です。
議員歳費世界一とも言われる日本の国会議員です。
さらに、政策秘書や公設秘書の人件費が支給され、JR無料券や飛行機代も支給されるのが、日本の国会議員です。これほどの高給で厚遇を得られる職場を私はあまり知りません。
公費で多額の歳費を受けるにも関わらず、
「さらに制度(=公費支出の枠組み)を広げて自分のために支出せよ」
と、立法府の人間が行政府の人間に対し圧力をかけてその実現を図っている・・・それが今回の記者会見です。
議決権や質問権を持つ議員によるこうした行為を「お手盛り」と呼ぶことができるでしょう。
高給取りの身分を得たのと同時に、上乗せの公費負担を求める姿は非常に醜い。議員としての最初の仕事が自分への利益誘導なのですから、その醜さは格別です。以前、熊本市議会のお手盛り市議を取り上げましたが、今回のお手盛りはそれ以上ですね。
歳費をはじめ、多額の税金が議員に支払われます。であるならば、れいわ新選組の二人はこのカネの中からヘルパーの費用を捻出することをまずは考えるべきです。議員活動をしていく上で議員歳費を受け取り、その他様々な手当てを受け取り、所属政党からの補助も受け、ヘルパーの費用を支払い、それでも資金繰りが困難になって、その時はじめて「重度訪問介護の対象を議員活動中にも広げてくれ」と要望活動をするのが、せめてもの順序ではないでしょうか。
======【引用ここから】======
記者:
生活面においてはこれまでと変わらないけれど、家を出て通勤すると国会活動においての介護が?
木村英子:
そうですね、家から出た途端にいなくなるんですね。出た途端というか、出るところからいなくなります。
記者:
そこからは自費負担でというのが現状のルールになってしまうということ?
木村英子:
そうですね。
記者:
それは現状としてはもう不可能な状態?
木村英子:
それは不可能ですね。低所得なので。
======【引用ここまで】======
低所得!?!?
ここでもうアウト。まったくの認識不足。自分が議員、しかも世界一の高額歳費を支給される日本の国会議員になったことを当選後数日で忘れてしまったというのは、何ともお粗末な話です。仮に今の時点での預貯金額が少なかったとしても、あと1か月もすれば二人の口座に百万円単位のカネが振り込まれることでしょう。
ですからそれを使わなければ、私たちは生活が出来ないので、お金の問題は分かりませんが、この制度がなければ、障がい者の自立っていうのは実現しなかったと思います。なので、とてもこれは生命線なんです。これがないと何も出来ないんです。この制度がないと。
======【引用ここまで】======
繰り返しになりますが、これは、介護者に支払われるべき費用を誰がどのように分担するかという、カネの問題です。「お金の問題は分かりませんが」では済まされません。人権がどうとか、スウェーデンがどうとかという次元ではありません。
もし、このれいわ新撰組の議員二人の要望を受けて、厚生労働省や参議院の事務方が協議し、議員としての仕事時間を例外的に重度訪問介護制度の対象にしたら、これは「政治とカネ」の問題です。厚生労働省が「議員の記者会見」という圧力に屈し、二人の議員に介護者費用の9割相当分のカネを提供する構図がここにあります。
ちなみに、うろ覚えで恐縮ですが、スウェーデンの国会議員の歳費は日本のそれと比べると遥かに少額だった記憶があります。高すぎる議員歳費の削減どころか、当選直後に議員自身への公費支出拡大を求めるれいわ新選組は、「身を切る改革」に真っ向から対立するダーティな政党であるというのが、私の印象です。
れいわ新撰組が参議院の事務方との間で為すべきは、
・議員の発言や議決・投票の方法をどうするか?
・議員をサポートする介護者を本会議や委員会の場に入れて良いのか?
・介護者が付き添って入場する際の手続きはどういうものか?
の打ち合わせ、確認です。そして、通路が狭くて必要な器具が入れられない等があれば、物理面の改修が必要になるでしょう。
さて、当の二人が参議院で活動するに際し会見を開いているのですが、これが腑に落ちないものでした。
【制度すなわちカネ】
【動画&文字起こし全文】れいわ新選組 記者会見 舩後靖彦・木村英子 2019年7月26日(金)参議院議員会館
======【引用ここから】======
ただ私たちにとって1番大切なのは、身の回りの介護をしてくれる介護者がいなければ、お水を飲むことも、家から出ることも、トイレも、着替えもすべて出来ない。
======【引用ここまで】======
重度の障害を持っていて、自分だけでは身の回りのことができず、移動もままならないという人は多くいることでしょう。冒頭のこの部分は、そうした状態を述べた文章として素直に受け止めます。
しかし、これに続く文章がどうもおかしい。
======【引用ここから】======
国会議員になったものの、重度訪問介護という制度が使えなくなるということで、初登院にも参加できないっていう状況に今、なっています。
======【引用ここまで】======
重度訪問介護という「制度」が使えないから登院できない、この発言は間違っています。
登院のために必要なのは介護者の助けなのであって、制度ではありません。重度訪問介護という制度そのものは、原則として自費負担である介護者への代金を公費(税金)で分担する際の、費用分担の方法、対象、要件を定めたに過ぎません。
○参考 重度訪問介護 | 風福祉会
======【引用ここから】======
ご利用者負担の参考費用
重度訪問介護サービスをご利用される方が負担される概算費用は、以下のとおりとなっています。
時間:1時間未満
費用:1,830円
自己負担額:183円
(~~中略~~)
時間:20時間以上24時間未満
費用:34,330円(20時間まで)に30分増すごとに+810円
自己負担額:3,433円に30分増すごとに+81円
======【引用ここまで】======費用:1,830円
自己負担額:183円
(~~中略~~)
時間:20時間以上24時間未満
費用:34,330円(20時間まで)に30分増すごとに+810円
自己負担額:3,433円に30分増すごとに+81円
「役所が税金から9割支払い、残り1割を自己負担として利用者が支払う。」
「役所が税金から支払うための条件として、これこれの形をヘルパー事業所が備えておく必要がある。」
「ヘルパーがAをした時は税金支出の対象になるが、ヘルパーがBをした場合は算定の対象外。」
といったルールや運用方法の集合体が「制度」であって、あくまでカネ、カネ、カネの話です。重度訪問介護制度を通した形でなくても、カネを工面しヘルパーを手配できれば何ら問題ありません。今まで公費補助を受ける中で利用していたヘルパー事業所と相談して、今度から、議員活動をする時間帯は原則に戻って自費契約にすれば良いのではないでしょうか。
【日本の国会議員は世界一(歳費が)】
さて。彼らは議員です。
日本の国会議員です。
議員歳費世界一とも言われる日本の国会議員です。
議員歳費: 15,528,000円(年額)
期末手当: 6,350,000円(年額)
文書通信交通滞在費:12,000,000円(年額)
立法事務費: 7,800,000円(年額)
期末手当: 6,350,000円(年額)
文書通信交通滞在費:12,000,000円(年額)
立法事務費: 7,800,000円(年額)
さらに、政策秘書や公設秘書の人件費が支給され、JR無料券や飛行機代も支給されるのが、日本の国会議員です。これほどの高給で厚遇を得られる職場を私はあまり知りません。
公費で多額の歳費を受けるにも関わらず、
「さらに制度(=公費支出の枠組み)を広げて自分のために支出せよ」
と、立法府の人間が行政府の人間に対し圧力をかけてその実現を図っている・・・それが今回の記者会見です。
議決権や質問権を持つ議員によるこうした行為を「お手盛り」と呼ぶことができるでしょう。
高給取りの身分を得たのと同時に、上乗せの公費負担を求める姿は非常に醜い。議員としての最初の仕事が自分への利益誘導なのですから、その醜さは格別です。以前、熊本市議会のお手盛り市議を取り上げましたが、今回のお手盛りはそれ以上ですね。
歳費をはじめ、多額の税金が議員に支払われます。であるならば、れいわ新選組の二人はこのカネの中からヘルパーの費用を捻出することをまずは考えるべきです。議員活動をしていく上で議員歳費を受け取り、その他様々な手当てを受け取り、所属政党からの補助も受け、ヘルパーの費用を支払い、それでも資金繰りが困難になって、その時はじめて「重度訪問介護の対象を議員活動中にも広げてくれ」と要望活動をするのが、せめてもの順序ではないでしょうか。
======【引用ここから】======
記者:
生活面においてはこれまでと変わらないけれど、家を出て通勤すると国会活動においての介護が?
木村英子:
そうですね、家から出た途端にいなくなるんですね。出た途端というか、出るところからいなくなります。
記者:
そこからは自費負担でというのが現状のルールになってしまうということ?
木村英子:
そうですね。
記者:
それは現状としてはもう不可能な状態?
木村英子:
それは不可能ですね。低所得なので。
======【引用ここまで】======
低所得!?!?
ここでもうアウト。まったくの認識不足。自分が議員、しかも世界一の高額歳費を支給される日本の国会議員になったことを当選後数日で忘れてしまったというのは、何ともお粗末な話です。仮に今の時点での預貯金額が少なかったとしても、あと1か月もすれば二人の口座に百万円単位のカネが振り込まれることでしょう。
【れいわ新選組の「政治とカネ」】
======【引用ここから】======ですからそれを使わなければ、私たちは生活が出来ないので、お金の問題は分かりませんが、この制度がなければ、障がい者の自立っていうのは実現しなかったと思います。なので、とてもこれは生命線なんです。これがないと何も出来ないんです。この制度がないと。
======【引用ここまで】======
繰り返しになりますが、これは、介護者に支払われるべき費用を誰がどのように分担するかという、カネの問題です。「お金の問題は分かりませんが」では済まされません。人権がどうとか、スウェーデンがどうとかという次元ではありません。
もし、このれいわ新撰組の議員二人の要望を受けて、厚生労働省や参議院の事務方が協議し、議員としての仕事時間を例外的に重度訪問介護制度の対象にしたら、これは「政治とカネ」の問題です。厚生労働省が「議員の記者会見」という圧力に屈し、二人の議員に介護者費用の9割相当分のカネを提供する構図がここにあります。
ちなみに、うろ覚えで恐縮ですが、スウェーデンの国会議員の歳費は日本のそれと比べると遥かに少額だった記憶があります。高すぎる議員歳費の削減どころか、当選直後に議員自身への公費支出拡大を求めるれいわ新選組は、「身を切る改革」に真っ向から対立するダーティな政党であるというのが、私の印象です。