○福岡市政:「屋台課長」決まる 総務省キャリア 2011年7月19日
======【引用ここから】======
福岡市は19日、福岡名物の屋台の営業規制見直しを検討する庁内プロジェクトチーム(PT)で実務を担当する通称「屋台課長」に、同日付で総務省から着任した臼井智彦・企画調整部企画課長(26)を起用する人事を発表した。
臼井課長は茨城県ひたちなか市出身。東大法学部卒後の07年、総務省入りし、前職は同省選挙課調査係長。PTでは、道路占用許可の「一代限り」ルールなどを規定した市屋台指導要綱制定(00年)以降の現状や課題を洗い出し、関係部局の調整にあたる。福岡の屋台は未体験という。
======【引用ここまで】======
屋台に、どのような規制の網がかかっているか。
このニュースで言及されている「屋台指導要綱」を見てみよう。
○福岡市屋台指導要綱
国の法律として、
道路運送車両法、道路法、道路交通法
都市公園法、食品衛生法。
市の条例・規則として、
福岡市公園条例、福岡市公園条例施行規則、
福岡市道路占用料徴収条例、福岡市道路占用規則。
法律などの名前を並べただけで、複数の省庁、県、市が
重なって網をかけて、雁字搦めになっている印象を受ける。
次に、「一代限り」ルールが実際にどのように規定されてるか、
見てみよう。
○福岡市屋台指導要綱
======【引用ここから】======
(権利義務の承継)
第11条 屋台営業者の占用許可に係る権利義務は,承継できないものとする。ただし,占用許可を受けた屋台営業者が死亡し,又は長期療養その他やむを得ない事由により屋台営業を継続することが困難である場合において,屋台営業による収入により主たる生計を立てている者(原則として当該屋台営業者の配偶者又は直系血族の子である相続人に限る。)が自ら屋台営業を行うときは,この限りでない。
2 前項ただし書の規定により屋台営業者の占用許可に係る権利義務を承継しようとする者は,市長に申請してその許可を受けなければならない。
(権利譲渡等の禁止)
第12条 占用許可を受けた屋台営業者は,占用許可に係る権利を他人に譲渡し,転貸し,又は担保に供してはならない。
======【引用ここまで】======
一応例外はあるものの、
「屋台営業者の占用許可は承継できない」
「占用許可を第三者へ譲渡できない」
という厳しいルールを定めている。
新規参入が無ければ、屋台は減る一方だ。現にそうなっている。
では、承継ではなく、屋台営業許可の新規取得はできるか?
○福岡市屋台指導要綱
======【引用ここから】======
(占用許可)
第5条 道路において屋台営業を行う屋台営業者は,道路法の規定に従い占用許可を受けなければならない。
2 占用許可の申請は,次の各号に掲げる書類を提出して行わなければならない。
(1) 福岡市道路占用規則(昭和31年福岡市規則第31号。以下「道路占用規則」という。)第2条第1項及び第3項に規定する道路占用許可申請書及び添付書類
(2) 関係法令等及び占用許可の条件を遵守する旨の誓約書
(3) 第35条第2項の規定により交付を受けた講習会受講証の写し
(4) 占用予定場所の背後地の所有者の承諾書(背後地を屋台の設置場所として利用する場合,屋台を移転する場合等で市長が必要と認めるときに限る。)
(5) その他市長が必要と認める書類
(行為許可)
第21条 公園において屋台営業を行う屋台営業者は,福岡市公園条例の規定に従い行為許可を受けなければならない。
2 行為許可の申請は,次の各号に掲げる書類を提出して行わなければならない。
(1) 福岡市公園条例施行規則(昭和33年福岡市規則第21号)第3条に規定する申請書
(2) 関係法令等及び行為許可の条件を遵守する旨の誓約書
(3) 第35条第2項の規定により交付を受けた講習会受講証の写し
(4) その他市長が必要と認める書類
(講習会の開催)
第35条 市長は,屋台営業者を対象として,屋台営業に関し必要な知識を習得させること等を目的とする講習会を年1回開催するものとする。
2 市長は,講習会の受講者に対し,講習会受講証を交付する。
3 前2項に定めるもののほか,講習会に関し必要な事項は,市長が別に定める。
======【引用ここまで】======
・・・お見事。
この要綱を読んだとき、要綱を書いた者の
「屋台は戦後復興の遺物!」
「屋台は汚い!粗雑過ぎる!治安悪化につながる!」
といった、屋台への憎しみ、悪感情を感じ取ってしまった。
「よし、博多ラーメンの屋台で一旗上げるぞ!」という新参者が、
警察署から、道路の使用許可を得ることができ、
保健所から、屋台営業の許可を得ることができた、とする。
ところが、彼は福岡市から道路の占用許可を得ることができない。
占用許可を得るには福岡市の実施する講習会を受けなければならない。
講習会の対象は「屋台営業を行う者」であって、
「これから屋台営業を行おうとする者」ではないからだ。
屋台営業をするには講習会を受けなければならない。
講習会を受けられるのは屋台営業を行う者のみ。
講習会は「既存屋台業者の許可更新」と位置づけられている。
これで、新参者はシャットアウト。
(抜け道はあるかもしれないが。)
この規制はあまりにも厳しすぎる。
道路、公園管理者として、他の利用者への配慮が必要なのは理解する。
しかし、これでは新規参入が実質上不可能だ。
ゾーニングなどの緩やかな手段もあると思うのだが、
現行制度では営業の自由への制約が非常に大きい。
もし、福岡市長が
「博多の屋台を存続させよう。観光資源として活用できる」
と考えているのなら、話は簡単だ。
占用許可は一代限り、承継不可、譲渡不可、新規取得不可と
定めている規定を要綱から取っ払えば良いだけの話。
総務省官僚を課長としてお招きする必要はどこにもない。
首長が、部下へきちんと指示、指導できれば、それで済む話。
要綱だから、議会にかける必要もない。
ましてや、総務省にお伺いをたてる必要もない。
総務省から26歳のキャリアをお招きし、マスコミを呼び、
辞令交付から屋台への食べ歩きまでを取材、放送してもらう。
市長自ら「私は中央の狗です」とアピールすることはなかろうて。
・・・でも、もしこの屋台課長が、
福岡市の規制を大胆に撤廃し、
総務省へ帰った時に、各種規制の撤廃を提言するような人物なら、
私も全力でエールを送ろう。
期待を込めて、頑張れ、屋台課長。
こうした問題は、福岡だけの話ではない。
全国で屋台は減っているし、弁当の路上販売への規制など、
消費者のニーズと真っ向から対立する規制は数多い。
行政は、民間の足を引っ張って仕事した気になるのではなく、
「自分達は不公平、不効率を生み出す邪魔な存在だ」という
戒めの気持ちを持つ必要がある。
======【引用ここから】======
福岡市は19日、福岡名物の屋台の営業規制見直しを検討する庁内プロジェクトチーム(PT)で実務を担当する通称「屋台課長」に、同日付で総務省から着任した臼井智彦・企画調整部企画課長(26)を起用する人事を発表した。
臼井課長は茨城県ひたちなか市出身。東大法学部卒後の07年、総務省入りし、前職は同省選挙課調査係長。PTでは、道路占用許可の「一代限り」ルールなどを規定した市屋台指導要綱制定(00年)以降の現状や課題を洗い出し、関係部局の調整にあたる。福岡の屋台は未体験という。
======【引用ここまで】======
屋台に、どのような規制の網がかかっているか。
このニュースで言及されている「屋台指導要綱」を見てみよう。
○福岡市屋台指導要綱
国の法律として、
道路運送車両法、道路法、道路交通法
都市公園法、食品衛生法。
市の条例・規則として、
福岡市公園条例、福岡市公園条例施行規則、
福岡市道路占用料徴収条例、福岡市道路占用規則。
法律などの名前を並べただけで、複数の省庁、県、市が
重なって網をかけて、雁字搦めになっている印象を受ける。
次に、「一代限り」ルールが実際にどのように規定されてるか、
見てみよう。
○福岡市屋台指導要綱
======【引用ここから】======
(権利義務の承継)
第11条 屋台営業者の占用許可に係る権利義務は,承継できないものとする。ただし,占用許可を受けた屋台営業者が死亡し,又は長期療養その他やむを得ない事由により屋台営業を継続することが困難である場合において,屋台営業による収入により主たる生計を立てている者(原則として当該屋台営業者の配偶者又は直系血族の子である相続人に限る。)が自ら屋台営業を行うときは,この限りでない。
2 前項ただし書の規定により屋台営業者の占用許可に係る権利義務を承継しようとする者は,市長に申請してその許可を受けなければならない。
(権利譲渡等の禁止)
第12条 占用許可を受けた屋台営業者は,占用許可に係る権利を他人に譲渡し,転貸し,又は担保に供してはならない。
======【引用ここまで】======
一応例外はあるものの、
「屋台営業者の占用許可は承継できない」
「占用許可を第三者へ譲渡できない」
という厳しいルールを定めている。
新規参入が無ければ、屋台は減る一方だ。現にそうなっている。
では、承継ではなく、屋台営業許可の新規取得はできるか?
○福岡市屋台指導要綱
======【引用ここから】======
(占用許可)
第5条 道路において屋台営業を行う屋台営業者は,道路法の規定に従い占用許可を受けなければならない。
2 占用許可の申請は,次の各号に掲げる書類を提出して行わなければならない。
(1) 福岡市道路占用規則(昭和31年福岡市規則第31号。以下「道路占用規則」という。)第2条第1項及び第3項に規定する道路占用許可申請書及び添付書類
(2) 関係法令等及び占用許可の条件を遵守する旨の誓約書
(3) 第35条第2項の規定により交付を受けた講習会受講証の写し
(4) 占用予定場所の背後地の所有者の承諾書(背後地を屋台の設置場所として利用する場合,屋台を移転する場合等で市長が必要と認めるときに限る。)
(5) その他市長が必要と認める書類
(行為許可)
第21条 公園において屋台営業を行う屋台営業者は,福岡市公園条例の規定に従い行為許可を受けなければならない。
2 行為許可の申請は,次の各号に掲げる書類を提出して行わなければならない。
(1) 福岡市公園条例施行規則(昭和33年福岡市規則第21号)第3条に規定する申請書
(2) 関係法令等及び行為許可の条件を遵守する旨の誓約書
(3) 第35条第2項の規定により交付を受けた講習会受講証の写し
(4) その他市長が必要と認める書類
(講習会の開催)
第35条 市長は,屋台営業者を対象として,屋台営業に関し必要な知識を習得させること等を目的とする講習会を年1回開催するものとする。
2 市長は,講習会の受講者に対し,講習会受講証を交付する。
3 前2項に定めるもののほか,講習会に関し必要な事項は,市長が別に定める。
======【引用ここまで】======
・・・お見事。
この要綱を読んだとき、要綱を書いた者の
「屋台は戦後復興の遺物!」
「屋台は汚い!粗雑過ぎる!治安悪化につながる!」
といった、屋台への憎しみ、悪感情を感じ取ってしまった。
「よし、博多ラーメンの屋台で一旗上げるぞ!」という新参者が、
警察署から、道路の使用許可を得ることができ、
保健所から、屋台営業の許可を得ることができた、とする。
ところが、彼は福岡市から道路の占用許可を得ることができない。
占用許可を得るには福岡市の実施する講習会を受けなければならない。
講習会の対象は「屋台営業を行う者」であって、
「これから屋台営業を行おうとする者」ではないからだ。
屋台営業をするには講習会を受けなければならない。
講習会を受けられるのは屋台営業を行う者のみ。
講習会は「既存屋台業者の許可更新」と位置づけられている。
これで、新参者はシャットアウト。
(抜け道はあるかもしれないが。)
この規制はあまりにも厳しすぎる。
道路、公園管理者として、他の利用者への配慮が必要なのは理解する。
しかし、これでは新規参入が実質上不可能だ。
ゾーニングなどの緩やかな手段もあると思うのだが、
現行制度では営業の自由への制約が非常に大きい。
もし、福岡市長が
「博多の屋台を存続させよう。観光資源として活用できる」
と考えているのなら、話は簡単だ。
占用許可は一代限り、承継不可、譲渡不可、新規取得不可と
定めている規定を要綱から取っ払えば良いだけの話。
総務省官僚を課長としてお招きする必要はどこにもない。
首長が、部下へきちんと指示、指導できれば、それで済む話。
要綱だから、議会にかける必要もない。
ましてや、総務省にお伺いをたてる必要もない。
総務省から26歳のキャリアをお招きし、マスコミを呼び、
辞令交付から屋台への食べ歩きまでを取材、放送してもらう。
市長自ら「私は中央の狗です」とアピールすることはなかろうて。
・・・でも、もしこの屋台課長が、
福岡市の規制を大胆に撤廃し、
総務省へ帰った時に、各種規制の撤廃を提言するような人物なら、
私も全力でエールを送ろう。
期待を込めて、頑張れ、屋台課長。
こうした問題は、福岡だけの話ではない。
全国で屋台は減っているし、弁当の路上販売への規制など、
消費者のニーズと真っ向から対立する規制は数多い。
行政は、民間の足を引っ張って仕事した気になるのではなく、
「自分達は不公平、不効率を生み出す邪魔な存在だ」という
戒めの気持ちを持つ必要がある。