当ブログでは、否定的な立場から数年にわたり福岡県行橋市の「図書館等複合施設建設問題」を追いかけてきた。
○不可解な自己評価100点市長 - 若年寄の遺言
○ハコモノ行政は止まらない ~ 応募がなければ予算額を増やせばいいじゃない ~ 行橋市図書館等複合文化施設 - 若年寄の遺言
○墓標の候補 ~ 行橋市図書館等複合施設整備事業 ~ - 若年寄の遺言
建設計画をめぐり議会は真っ二つ。住民が地方自治法の直接請求権を行使して住民投票条例の制定を求める事態にまで発展。
この一連の動きが、平成29年12月21日に一応の決着をみた。
議会は住民投票条例案を否決し、多額な建設費を要する契約案を可決。
議会は行政による歳出拡大を抑制することができなかった。
非常に残念である。
原則としての間接民主制と、例外としての直接民主制。
どちらも所詮は民主制である。
民主制は、将来世代に対する無責任な支出の誘発という欠陥を持つ。民主制の欠陥を民主制で是正しようとするのは無理な話だったのだろうか。
○行橋市議会 住民投票条例案否決 - NHK北九州のニュース
======【引用ここから】======
行橋市が計画している、図書館などが入る複合施設の建設の是非を問う住民投票の条例案について、行橋市議会は21日の本会議で否決しました。
この計画は行橋市がJR行橋駅の東側に、およそ55億円をかけて図書館やカフェなどが入る複合施設を建設するというものです。
計画に対し地元の市民グループは、市に対して施設の建設の是非を問うための住民投票の実施を求める直接請求を行い、行橋市議会で住民投票の条例案について審議を行ってきました。
21日開かれた本会議では、住民投票の実施を求めた市民グループの山下宏道さんが意見を述べ、「高額な費用を使って、子どもたちに納得できない事業の負担を強いることはできません」と理解を求めました。
このあと条例案について討論が行われ、賛成、反対それぞれの立場から意見が出されました。
そして議長と退席した3人を除く、16人の議員で採決が行われました。
その結果賛成、反対が8票ずつで同数となり、最後、諫山直議長の判断で条例案は否決されました。
======【引用ここまで】======
平成29年12月定例会 本会議5日目(H29.12.21)① 行橋市議会(youtube動画)
======【動画から確認】======
1時間21分50秒~採決結果確認(敬称略)
賛成8人:西本、田中(次子)、瓦川、工藤、藤木、鳥井田、二保、徳永
反対8人:井上、村岡、大池、澤田、藤本、田中(建一)、城戸、豊瀬
退席:小坪、小原、西岡
議長:諫山
⇒ 可否同数で議長裁決により否決※1
======【動画から確認】======
動画では、3人が賛成討論、2人が反対討論を行っている。反対討論2人のうち1人は退席の理由を述べたもの。重要案件の採決に臨み、判断の理由を公の場で述べるのは良いことである。議場で述べた内容が公開され、それを元にこうやって論評することができるようになる。
この討論の中に、気になるものがあった。
井上市議の反対討論(上記動画57分~1時間6分)に登場した「ゼロベース」という単語。
ちなみに、ゼロベースについては
○ゼロベース思考とは - コトバンク
======【引用ここから】======
「ゼロベース思考」とは既存の枠組みにとらわれず、目的に対して白紙の段階から考えようとする考え方の姿勢のことを指す。既存の枠組みでは、過去の事例や様々な規制などが思考の幅を狭くし、目的への最適な方法への到達を難しくなるため、「ゼロベース思考」で考えようとする姿勢が重要であるとされている。
======【引用ここまで】======
ということなのだが、はてさて、この建設計画に関し「ゼロベース」での議論は存在しただろうか。
ゼロベースでの議論でないことは、次の会議録を読めば明白である。
【 平成27年 9月 定例会(第16回)-09月07日-02号 】行橋市議会会議録
======【やりとり抜粋】======
◆15番(横溝千賀子君)
2点目の旧ミラモーレ跡地整備の核です。核は何でしょうかということを問いたいと思います。
こういう言い方は、非常に大雑把で、お答えする方にとっても難しい面も正直あります。けれども、あの跡地の核は何でしょうかというのは、これはやっぱり図書館という言い方もされれば、具体的な図書館という言い方ではなくて、教育文化施設という言われ方をする。教育文化施設イコール図書館では、これはないわけですよね。その幅があるわけです。教育文化施設と言われると、幅がある。じゃあ本当は何なんですかと。本当は何が跡地の核になるんでしょうかということを、ひとつ聞きたいと思います。
◎副市長(山本英二君)
教育文化施設ということにつきましては、もともとこの土地を防衛の補助事業で購入した経緯がございます。その中で、補助事業の目的として、教育文化施設を建設するための用地として取得したというところから、まずもって教育文化施設ということが出ているのかと思います。補助目的に即したところで教育文化施設ということがございますので、そういう枠組みの中で、核を何にするのかといったときに、図書館を中心とした、というものを決定しております。
======【やりとり抜粋】======
防衛補助を伴う土地購入の補正予算は平成25年3月に成立。
平成26年3月に市長が変わり、その後、ここで答弁している副市長が就任している。
図書館等複合施設建設計画を立てた市長、副市長は、予め設定された教育文化施設という補助目的の枠組みの中で検討し、図書館とすることを決定したと語っている。
ゼロベースでの検討には、場合によっては防衛補助の返還も辞さないという決意が必要なのだが、そういった検討をした痕跡は見られない。
【 平成28年12月 定例会(第4回)-12月12日-02号 】行橋市議会会議録
======【やりとり抜粋】======
◎市長(田中純君)
最初は、今さらこんなことを言ってもしようがないですが、あそこに住宅を、という観点も非常に強かったわけですよ。ただ、地元の皆さん方が、やっぱり集客力のある公共施設は図書館だろうということの意見が強く出て、それを我々がまとめて提案させていただいた、ということであって、・・・
・・・(略)・・・
◆8番(藤木巧一君)
どうも図書館ありきで、要はあの土地を防衛省から7千万円の補助金を貰って、文教施設という名目で買ったから、7千万円のために55億円使おうとしているんじゃないですか。その辺はどうですか。
◎副市長(山本英二君)
確かにあの土地を購入したときには、防衛予算を活用いたしまして、教育文化施設をという名目で購入したと聞いております。
しかしながら、それを果たすために、わざわざ図書館を造るということではございません。やはり何をしているかと言いますと、将来の行橋市のためを思って、そういう施設が必要だという判断をしております。
◆8番(藤木巧一君)
どう聞いても、何か図書館ありきで、文教施設と言えば、もう民間の住宅を建てるということにはならないわけですよね。7千万円返せばよかったんですよ。そういうことも含めて、次から次へと項目はいっぱいありますので、次にいきますが、・・・
======【やりとり抜粋】======
この文中の市長答弁を平成27年9月の副市長答弁で補完し要約すると、
「あそこに住宅を、という観点も非常に強かった。ただ、地元の皆さん方から集客力のある公共施設は図書館だという意見が強く出て、(教育文化施設という補助目的に即した枠組みの中で)我々が意見をまとめて提案させていただいた」
ということになろう。
だから、議員側から
「文教施設と言えば、もう民間の住宅を建てるということにはならないわけですよね」
という指摘が生じるのだ。
教育文化施設なので住宅は選択肢に入らない。
「住宅が良いのではないか」という声があり、これがゼロベースで考えた時に最善の方法だったとしても、選択することはできない。
学校か図書館か美術館か史料館か。
教育文化施設名目の枠組みが先に設定されており、この限られた選択肢の中から選んだ決定に対し「中心市街地の活性化のため」と後付けで理由を付けているに過ぎない。
補助金には条件が付いている。
国の官僚が
「市町村や事業者に対し補助金を交付し、我が省の目標達成に資する活動を後押ししよう」
と考え、補助メニューを作成する。官僚は、市町村や事業者の活動を省の目標に沿ったものに矯正するため、補助金の対象となる活動の内容、期間について様々な条件を設定する。
補助を受ける側の市町村や事業者から見たとき、
「国の補助メニューを眺めていたら、うちの事業と似たのがあった。うちの事業内容を修正して、補助メニューに引っかけられないか?」
というパターンが多いだろう。
あるいは、補助を受ける側の市町村や事業者が、たまたま
「うちでやろうとしていた活動が、国の補助メニューにピッタリ該当している」
と判断して補助申請するケースもあるかもしれない。
ただ、このケースであっても、補助を受け事業を開始した後に、
「従来の方法より新しい方法に修正した方が効率良いし、利用者数も売上げも伸びそう」
と気づくことがあるだろう(開始後に何らかの軌道修正を要しない事業の方が少ないのではないか)。
そう気づいたとしても、補助を受けている限り、補助条件から外れる路線変更はできない。
事業者側が
「A名目で補助金を貰っているが、Bに補助金を投じる方が良い成果が出るのではないか」
と判断し、補助金を交付した省庁の許可なく使途を変更したら詐欺となってしまう。
○スパコン詐欺、社長ら2人起訴へ 東京地検特捜部
合理的な事業展開、きめ細かいサービス提供が可能な体制に変えようとしても、補助金がこれを妨げる。
補助金は、事業の開始時や内容変更に制約を生じさせる。
本件の図書館問題では何を建てるか決める前に補助を貰って土地を買っているので、事業内容に関する制約の度合いが特に大きい。
例えるなら、広場に子ども数十人集めて500円ずつ渡して両手を縄で縛り、
「さぁみんな、野球でもテニスでもサッカーでも好きに遊んでいいよ」
と言うようなものだ。
子ども達が話し合いの末、
「両手を縛って野球やテニスが成立するか!仕方ないからサッカーしよう」
という結論に至った時、これはゼロベースの議論の結果でないことは明らかだ。
話は平成20年頃に遡る。
とある財団法人の所有する宴会場が、利用者低迷のため閉館。
財団法人は元宴会場を市へ無償貸与。市が維持管理費を負担した。
その後、建物を解体。
残った土地を財団法人から市へ売却する話が持ち上がり、市が財団法人から購入。
その際、国に対し市が「教育文化施設建設のための土地取得」という理由で補助金を申請。
この土地こそが、図書館等複合施設の建設用地である。
お荷物となった土地・建物を市に押付け、維持管理経費を軽減でき、売却代金を手にすることができた財団法人。
(「美術館の半分を押し付けて名誉市民の称号を得た」もあるが、これは本件とは別の話。)
古い建物と隘路に囲まれた土地を押付けられ、国から補助を受けて購入資金を捻出した市。
「根拠不明な配慮」
「過剰な便宜供与」
が核となり、維持管理費や土地購入費、補助金による束縛、そして図書館建設を誘発してしまい、後世の住民に対する負担はまさに雪だるま式に膨れ上がった。
予算・債務負担が成立し、契約案も可決。
これに異議を唱える請願や住民投票条例は否決。
計画見直しの機会を逸し、この市は公共施設の維持管理と利権に食いつぶされる。
※1 可否同数の場合における議長の裁決権行使については、議会の慣習として「現状維持の原則」というものがある。
議会のあらまし(議長は表決に加わらない原則)
======【引用ここから】======
議長は、問題に対する表決に加わらないという原則である。会議規則14の「議長の中立公平の原則」から派生したものである。
地方自治法は「議長は、議員として議決に加わる権利を有しない」(第116条第2項)と定めている。議長は、このように表決権は持たないが、「可否同数のときは、議長の決するところによる」(同条第1項)と議長の裁決権を認めている。
この裁決権の行使に当たり、議長は現状維持に決する原則がある。これも、議長の中立公平の原則から派生したものである。
======【引用ここまで】======
○不可解な自己評価100点市長 - 若年寄の遺言
○ハコモノ行政は止まらない ~ 応募がなければ予算額を増やせばいいじゃない ~ 行橋市図書館等複合文化施設 - 若年寄の遺言
○墓標の候補 ~ 行橋市図書館等複合施設整備事業 ~ - 若年寄の遺言
建設計画をめぐり議会は真っ二つ。住民が地方自治法の直接請求権を行使して住民投票条例の制定を求める事態にまで発展。
この一連の動きが、平成29年12月21日に一応の決着をみた。
議会は住民投票条例案を否決し、多額な建設費を要する契約案を可決。
議会は行政による歳出拡大を抑制することができなかった。
非常に残念である。
原則としての間接民主制と、例外としての直接民主制。
どちらも所詮は民主制である。
民主制は、将来世代に対する無責任な支出の誘発という欠陥を持つ。民主制の欠陥を民主制で是正しようとするのは無理な話だったのだろうか。
【住民投票を拒否した行橋市】
○行橋市議会 住民投票条例案否決 - NHK北九州のニュース
======【引用ここから】======
行橋市が計画している、図書館などが入る複合施設の建設の是非を問う住民投票の条例案について、行橋市議会は21日の本会議で否決しました。
この計画は行橋市がJR行橋駅の東側に、およそ55億円をかけて図書館やカフェなどが入る複合施設を建設するというものです。
計画に対し地元の市民グループは、市に対して施設の建設の是非を問うための住民投票の実施を求める直接請求を行い、行橋市議会で住民投票の条例案について審議を行ってきました。
21日開かれた本会議では、住民投票の実施を求めた市民グループの山下宏道さんが意見を述べ、「高額な費用を使って、子どもたちに納得できない事業の負担を強いることはできません」と理解を求めました。
このあと条例案について討論が行われ、賛成、反対それぞれの立場から意見が出されました。
そして議長と退席した3人を除く、16人の議員で採決が行われました。
その結果賛成、反対が8票ずつで同数となり、最後、諫山直議長の判断で条例案は否決されました。
======【引用ここまで】======
平成29年12月定例会 本会議5日目(H29.12.21)① 行橋市議会(youtube動画)
======【動画から確認】======
1時間21分50秒~採決結果確認(敬称略)
賛成8人:西本、田中(次子)、瓦川、工藤、藤木、鳥井田、二保、徳永
反対8人:井上、村岡、大池、澤田、藤本、田中(建一)、城戸、豊瀬
退席:小坪、小原、西岡
議長:諫山
⇒ 可否同数で議長裁決により否決※1
======【動画から確認】======
動画では、3人が賛成討論、2人が反対討論を行っている。反対討論2人のうち1人は退席の理由を述べたもの。重要案件の採決に臨み、判断の理由を公の場で述べるのは良いことである。議場で述べた内容が公開され、それを元にこうやって論評することができるようになる。
この討論の中に、気になるものがあった。
井上市議の反対討論(上記動画57分~1時間6分)に登場した「ゼロベース」という単語。
ちなみに、ゼロベースについては
○ゼロベース思考とは - コトバンク
======【引用ここから】======
「ゼロベース思考」とは既存の枠組みにとらわれず、目的に対して白紙の段階から考えようとする考え方の姿勢のことを指す。既存の枠組みでは、過去の事例や様々な規制などが思考の幅を狭くし、目的への最適な方法への到達を難しくなるため、「ゼロベース思考」で考えようとする姿勢が重要であるとされている。
======【引用ここまで】======
ということなのだが、はてさて、この建設計画に関し「ゼロベース」での議論は存在しただろうか。
【ゼロベースでないことの証拠】
ゼロベースでの議論でないことは、次の会議録を読めば明白である。
【 平成27年 9月 定例会(第16回)-09月07日-02号 】行橋市議会会議録
======【やりとり抜粋】======
◆15番(横溝千賀子君)
2点目の旧ミラモーレ跡地整備の核です。核は何でしょうかということを問いたいと思います。
こういう言い方は、非常に大雑把で、お答えする方にとっても難しい面も正直あります。けれども、あの跡地の核は何でしょうかというのは、これはやっぱり図書館という言い方もされれば、具体的な図書館という言い方ではなくて、教育文化施設という言われ方をする。教育文化施設イコール図書館では、これはないわけですよね。その幅があるわけです。教育文化施設と言われると、幅がある。じゃあ本当は何なんですかと。本当は何が跡地の核になるんでしょうかということを、ひとつ聞きたいと思います。
◎副市長(山本英二君)
教育文化施設ということにつきましては、もともとこの土地を防衛の補助事業で購入した経緯がございます。その中で、補助事業の目的として、教育文化施設を建設するための用地として取得したというところから、まずもって教育文化施設ということが出ているのかと思います。補助目的に即したところで教育文化施設ということがございますので、そういう枠組みの中で、核を何にするのかといったときに、図書館を中心とした、というものを決定しております。
======【やりとり抜粋】======
防衛補助を伴う土地購入の補正予算は平成25年3月に成立。
平成26年3月に市長が変わり、その後、ここで答弁している副市長が就任している。
図書館等複合施設建設計画を立てた市長、副市長は、予め設定された教育文化施設という補助目的の枠組みの中で検討し、図書館とすることを決定したと語っている。
ゼロベースでの検討には、場合によっては防衛補助の返還も辞さないという決意が必要なのだが、そういった検討をした痕跡は見られない。
【 平成28年12月 定例会(第4回)-12月12日-02号 】行橋市議会会議録
======【やりとり抜粋】======
◎市長(田中純君)
最初は、今さらこんなことを言ってもしようがないですが、あそこに住宅を、という観点も非常に強かったわけですよ。ただ、地元の皆さん方が、やっぱり集客力のある公共施設は図書館だろうということの意見が強く出て、それを我々がまとめて提案させていただいた、ということであって、・・・
・・・(略)・・・
◆8番(藤木巧一君)
どうも図書館ありきで、要はあの土地を防衛省から7千万円の補助金を貰って、文教施設という名目で買ったから、7千万円のために55億円使おうとしているんじゃないですか。その辺はどうですか。
◎副市長(山本英二君)
確かにあの土地を購入したときには、防衛予算を活用いたしまして、教育文化施設をという名目で購入したと聞いております。
しかしながら、それを果たすために、わざわざ図書館を造るということではございません。やはり何をしているかと言いますと、将来の行橋市のためを思って、そういう施設が必要だという判断をしております。
◆8番(藤木巧一君)
どう聞いても、何か図書館ありきで、文教施設と言えば、もう民間の住宅を建てるということにはならないわけですよね。7千万円返せばよかったんですよ。そういうことも含めて、次から次へと項目はいっぱいありますので、次にいきますが、・・・
======【やりとり抜粋】======
この文中の市長答弁を平成27年9月の副市長答弁で補完し要約すると、
「あそこに住宅を、という観点も非常に強かった。ただ、地元の皆さん方から集客力のある公共施設は図書館だという意見が強く出て、(教育文化施設という補助目的に即した枠組みの中で)我々が意見をまとめて提案させていただいた」
ということになろう。
だから、議員側から
「文教施設と言えば、もう民間の住宅を建てるということにはならないわけですよね」
という指摘が生じるのだ。
教育文化施設なので住宅は選択肢に入らない。
「住宅が良いのではないか」という声があり、これがゼロベースで考えた時に最善の方法だったとしても、選択することはできない。
学校か図書館か美術館か史料館か。
教育文化施設名目の枠組みが先に設定されており、この限られた選択肢の中から選んだ決定に対し「中心市街地の活性化のため」と後付けで理由を付けているに過ぎない。
【補助金の呪縛】
補助金には条件が付いている。
国の官僚が
「市町村や事業者に対し補助金を交付し、我が省の目標達成に資する活動を後押ししよう」
と考え、補助メニューを作成する。官僚は、市町村や事業者の活動を省の目標に沿ったものに矯正するため、補助金の対象となる活動の内容、期間について様々な条件を設定する。
補助を受ける側の市町村や事業者から見たとき、
「国の補助メニューを眺めていたら、うちの事業と似たのがあった。うちの事業内容を修正して、補助メニューに引っかけられないか?」
というパターンが多いだろう。
あるいは、補助を受ける側の市町村や事業者が、たまたま
「うちでやろうとしていた活動が、国の補助メニューにピッタリ該当している」
と判断して補助申請するケースもあるかもしれない。
ただ、このケースであっても、補助を受け事業を開始した後に、
「従来の方法より新しい方法に修正した方が効率良いし、利用者数も売上げも伸びそう」
と気づくことがあるだろう(開始後に何らかの軌道修正を要しない事業の方が少ないのではないか)。
そう気づいたとしても、補助を受けている限り、補助条件から外れる路線変更はできない。
事業者側が
「A名目で補助金を貰っているが、Bに補助金を投じる方が良い成果が出るのではないか」
と判断し、補助金を交付した省庁の許可なく使途を変更したら詐欺となってしまう。
○スパコン詐欺、社長ら2人起訴へ 東京地検特捜部
合理的な事業展開、きめ細かいサービス提供が可能な体制に変えようとしても、補助金がこれを妨げる。
補助金は、事業の開始時や内容変更に制約を生じさせる。
本件の図書館問題では何を建てるか決める前に補助を貰って土地を買っているので、事業内容に関する制約の度合いが特に大きい。
例えるなら、広場に子ども数十人集めて500円ずつ渡して両手を縄で縛り、
「さぁみんな、野球でもテニスでもサッカーでも好きに遊んでいいよ」
と言うようなものだ。
子ども達が話し合いの末、
「両手を縛って野球やテニスが成立するか!仕方ないからサッカーしよう」
という結論に至った時、これはゼロベースの議論の結果でないことは明らかだ。
【最初から間違っていた図書館等複合施設建設計画】
話は平成20年頃に遡る。
とある財団法人の所有する宴会場が、利用者低迷のため閉館。
財団法人は元宴会場を市へ無償貸与。市が維持管理費を負担した。
その後、建物を解体。
残った土地を財団法人から市へ売却する話が持ち上がり、市が財団法人から購入。
その際、国に対し市が「教育文化施設建設のための土地取得」という理由で補助金を申請。
この土地こそが、図書館等複合施設の建設用地である。
お荷物となった土地・建物を市に押付け、維持管理経費を軽減でき、売却代金を手にすることができた財団法人。
(「美術館の半分を押し付けて名誉市民の称号を得た」もあるが、これは本件とは別の話。)
古い建物と隘路に囲まれた土地を押付けられ、国から補助を受けて購入資金を捻出した市。
「根拠不明な配慮」
「過剰な便宜供与」
が核となり、維持管理費や土地購入費、補助金による束縛、そして図書館建設を誘発してしまい、後世の住民に対する負担はまさに雪だるま式に膨れ上がった。
予算・債務負担が成立し、契約案も可決。
これに異議を唱える請願や住民投票条例は否決。
計画見直しの機会を逸し、この市は公共施設の維持管理と利権に食いつぶされる。
※1 可否同数の場合における議長の裁決権行使については、議会の慣習として「現状維持の原則」というものがある。
議会のあらまし(議長は表決に加わらない原則)
======【引用ここから】======
議長は、問題に対する表決に加わらないという原則である。会議規則14の「議長の中立公平の原則」から派生したものである。
地方自治法は「議長は、議員として議決に加わる権利を有しない」(第116条第2項)と定めている。議長は、このように表決権は持たないが、「可否同数のときは、議長の決するところによる」(同条第1項)と議長の裁決権を認めている。
この裁決権の行使に当たり、議長は現状維持に決する原則がある。これも、議長の中立公平の原則から派生したものである。
======【引用ここまで】======