当たり前のように予算計上される。
お手盛りで可決される。
物見遊山?観光旅行?
それが、地方議会の委員会視察。
目的は不明確。
効果はもっと不明確。
「納税者は自分の納めた税金が有効に使われているかどうかをチェックするため、議員を代表として送り込んでいる」
というのが議会制民主主義の建前なのだが、その議員が実施する委員会視察こそが、よくよくチェックしなければならない危険箇所である。
・・・ということで、以前、このネタについて論じたことがある。
○行政をチェックする議員をチェックする ~ 観光旅行ですか、行政視察ですか ~ - 若年寄の遺言
=====【引用ここから】=====
議会がチェックするどころか、実際のところ、チェックを受けなければいけないのは議会そのものだったりする。その中でも、よくよくチェックしなければならないのが「行政視察」だ。
=====【引用ここまで】=====
委員会視察のあり方については、よくよくチェックしなければならない。
こんな↓事が実際に起こるのだから。
○行橋市議会基地特委:視察中に別行動、吉永委員長が辞任 /福岡 毎日新聞 2013年09月10日 地方版
=====【引用ここから】=====
行橋市議会の基地対策特別委員会で、委員長の吉永直氏と副委員長の小坪慎也氏が視察研修中に公務を中座したことが問題となり9日、吉永氏は委員長を辞職した。
研修は先月21〜22日、基地対策の在り方をテーマに沖縄県宜野湾市内で行われ、4議員が参加。防衛省の職員が随行して普天間基地を高台から視察している途中で、2人が抜け出した。吉永氏は「視察準備でお世話になった地元国会議員にあいさつに行った。行程外の行動を取り申し訳なかった」と話した。吉永氏は本会議で謝罪し、9日開いた委員会で辞職を全会一致で許可された。
小坪氏は責任を取り同日「政朋会」の会派を離脱。基地対策特別委員は各会派から出ているため、自動的に委員と副委員長職を失職した。【山本紀子】〔京築版〕
=====【引用ここまで】=====
○とんでもない委員会研修 No2: こんにちは 徳永克子:です
=====【引用ここから】=====
午後1時からの基地対策特別委員会は、委員5名のところ委員外議員6名と、多くの傍聴者で開会されました。この委員会の開催は、正副委員長を除く3名が話し合い、委員長に申し入れて開かれたものです。
冒頭に吉永委員長は、若干の説明の後「国会議員の先生にお骨折りをいただいたのでお礼に行った。悪いとは思っていない」と述べ、私は大変びっくりしました。
正副委員長と他の3名の委員の話し合いの後、私は会議規則に則り「委員外議員の発言」を委員長の許可をもらい、2・3点質問をしました。
この委員会で分かった事は、
①委員会では「普天間基地には入れたらいいね」との話はあったが、同基地に入るとは決めていない。
②小坪副委員長は、個人で普天間基地に入れるように国会議員に頼みやり取りをした。その事は委員長は知っていた。
③宜野湾市役所での研修の後、嘉数高台公園から基地を見降ろしての視察は防衛施設局の職員が説明をした。この際、正副委員長は参加せずに施設局の車で国会議員の所に行った。一緒に行っていた2人の委員は、正副委員長の行動を知らされていなかった。
=====【引用ここまで】=====
米軍の普天間基地に入ろうが入るまいが、国会議員に依頼をしたとかしないとか、そんな事はどうでも良い(共産党的にはそこが問題かもしれないが)。
問題は、税金を使った視察行程を勝手に省略し、私的な用事を優先したこと。
なぜ視察行程より私的な用事を優先したのか。
考えられる理由として、税金を使って実施する視察であるにもかかわらず、事前に視察の目的を明確にしていない、ということが挙げられる。
目的は何か。そのために、視察は有効な手段かどうか。目的達成のために、どこの、何を視察することが有効か。その成果を得るために、委員会の人数分の旅費を投じることは妥当か。
これらが明確になっていれば、「視察行程を抜け出す」なんて有り得ない。目的達成のために視察行程を組んでいれば、当然、視察を優先しただろう。「普天間基地には入れたらいいね」というコメントが紹介されているが、何のために普天間基地に入ろうとしたのか、何のために宜野湾市役所に行ったのか、そこが明示されていない。テーマが「基地対策の在り方」って、漠然もいいとこ。
中座した委員長や副委員長(freejapanの小坪氏?)の行為は当然非難されるべきもの。では、他の委員はどうだろうか。宜野湾市役所で研修を受け、防衛施設局の職員から説明を受けたというが、ちゃんと成果を持ち帰っているだろうか。その成果は議員の旅費や随行者の人件費、応対した宜野湾市や防衛施設局の職員の人件費に見合ったものだろうか。税金の無駄遣いという観点からは、委員長、副委員長も、他の委員も同列ではなかろうか。
漠然とした「勉強になるから」では甘い。これだけでは、行政視察をわざわざ実施する理由にならない。昨今は、インターネットで様々な情報が手に入る。先進地の状況や取組みをネットで調べて、必要であれば資料を取り寄せて、議員間で事前に勉強会をして、「これは実際に現地で担当者に聞いてみないと分からない」というものを浮かび上がらせ、この疑問点を明らかにすることが旅費に見合ったものと評価することができて、初めて委員会視察は有意なものになろう。
「視察に行きました。説明を受けました。資料を貰いました。この説明や資料の内容は、自治体や基地の公式サイトで事前に把握可能なものがほとんどです。」
・・・これでは、旅費は全くの無駄。納税者の金をドブに捨てたも同然。
今回、委員長と副委員長が視察行程を中座するという異常事態が発生したことで、ことが公になった。しかし、公になった本件以外にも、納税者から見て「本当に行く意味あるの?」と疑問が生じる委員会視察というのは、実際のところ山ほどあるのだろう。これは氷山の一角にすぎない。
もし身近な所に、都道府県議会、市区町村議会の議員がいたら、尋ねてみてほしい。
「去年、一昨年と、委員会視察で何を学び、何をうちの自治体に持ち帰りましたか?」
と。具体的な答えが返って来なかったら、あなたの払った税金は、その議員が観光地に行くために費やされたと評価してほぼ間違いない。
○地方議会議員の視察旅行は廃止を考えるべきである(半田伸明) - BLOGOS(ブロゴス)
=====【引用ここから】=====
もう1つ例を出しましょうか。議員が学ぶことに意味があるというのなら、何も出かけることなく、テーマに相応しい候補地に依頼して、講師を三鷹市に呼んで勉強会する方が意味があるのでは?交通費その他考えると、委員全員で行くよりはるかに安いですよね。
地方議会の場合、委員会視察費用を廃止し、その分官僚の出張費をどこかで計上する方がより効率的ではないでしょうか?もう委員全員で視察に行く時代ではないと思いますよ。ただでさえ、行財政改革やらなければならないのに。
=====【引用ここまで】=====
~2013.9.20追記~
本記事を書いた翌日には、こんなニュースも飛び込んできた。
○山梨県議海外視察:旅費返還訴訟で住民逆転勝訴 東京高裁 毎日新聞 2013年09月19日 20時35分(最終更新 09月19日 22時08分)
=====【引用ここから】=====
山梨県議がエジプトなどを公費で視察したのは「個人旅行と同じ」として、住民らが旅費などの返還を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は19日、住民敗訴の甲府地裁判決を取り消し、参加した県議11人(当時)に計約850万円の返還を求めるよう県に命じた。貝阿弥誠裁判長は「海外研修に名を借りた観光中心の私的旅行」と断じ、住民側の請求を全額認めた。
争われたのは、2009〜10年に米国、エジプト・トルコ、韓国、鹿児島県・屋久島へ行った視察4件。富士山の世界遺産登録を目指すなどの名目で県が支給した旅費や政務調査費などが使われた。
各旅行では自由の女神やピラミッド、カッパドキアなどを巡っており、貝阿弥裁判長は「大部分が観光名所の見学に費やされた」と判断。県議が視察後に提出した報告書も「日本でも入手できる資料で、観光ガイドのような説明」と厳しく指摘した。県議が「ホワイトハウス見学で識見を深めた」などと法廷で釈明したことについては「政治家個人の研さんに属すること。自費で行うべきだ」としている。
判決について横内正明知事は「海外研修は正式な手続きを踏まえて行われており、判決は誠に残念」とコメント。米国旅行に参加した県議の一人は「海外視察は必要。誤解を受けた部分は改善したい」と話した。【片平知宏、藤河匠】
=====【引用ここまで】=====
最後に掲載されている、知事や県議のコメントのぬるいこと、ぬるいこと。
視察目的として
「富士山の世界遺産登録を目指す」
とある。米国、エジプト、トルコ、韓国、屋久島に行くことで、富士山の世界遺産登録にどうつながるのか、どのような効果があるのか、明示してもらいたいものだ。
・・・できないだろうけど。
お手盛りで可決される。
物見遊山?観光旅行?
それが、地方議会の委員会視察。
目的は不明確。
効果はもっと不明確。
「納税者は自分の納めた税金が有効に使われているかどうかをチェックするため、議員を代表として送り込んでいる」
というのが議会制民主主義の建前なのだが、その議員が実施する委員会視察こそが、よくよくチェックしなければならない危険箇所である。
・・・ということで、以前、このネタについて論じたことがある。
○行政をチェックする議員をチェックする ~ 観光旅行ですか、行政視察ですか ~ - 若年寄の遺言
=====【引用ここから】=====
議会がチェックするどころか、実際のところ、チェックを受けなければいけないのは議会そのものだったりする。その中でも、よくよくチェックしなければならないのが「行政視察」だ。
=====【引用ここまで】=====
委員会視察のあり方については、よくよくチェックしなければならない。
こんな↓事が実際に起こるのだから。
○行橋市議会基地特委:視察中に別行動、吉永委員長が辞任 /福岡 毎日新聞 2013年09月10日 地方版
=====【引用ここから】=====
行橋市議会の基地対策特別委員会で、委員長の吉永直氏と副委員長の小坪慎也氏が視察研修中に公務を中座したことが問題となり9日、吉永氏は委員長を辞職した。
研修は先月21〜22日、基地対策の在り方をテーマに沖縄県宜野湾市内で行われ、4議員が参加。防衛省の職員が随行して普天間基地を高台から視察している途中で、2人が抜け出した。吉永氏は「視察準備でお世話になった地元国会議員にあいさつに行った。行程外の行動を取り申し訳なかった」と話した。吉永氏は本会議で謝罪し、9日開いた委員会で辞職を全会一致で許可された。
小坪氏は責任を取り同日「政朋会」の会派を離脱。基地対策特別委員は各会派から出ているため、自動的に委員と副委員長職を失職した。【山本紀子】〔京築版〕
=====【引用ここまで】=====
○とんでもない委員会研修 No2: こんにちは 徳永克子:です
=====【引用ここから】=====
午後1時からの基地対策特別委員会は、委員5名のところ委員外議員6名と、多くの傍聴者で開会されました。この委員会の開催は、正副委員長を除く3名が話し合い、委員長に申し入れて開かれたものです。
冒頭に吉永委員長は、若干の説明の後「国会議員の先生にお骨折りをいただいたのでお礼に行った。悪いとは思っていない」と述べ、私は大変びっくりしました。
正副委員長と他の3名の委員の話し合いの後、私は会議規則に則り「委員外議員の発言」を委員長の許可をもらい、2・3点質問をしました。
この委員会で分かった事は、
①委員会では「普天間基地には入れたらいいね」との話はあったが、同基地に入るとは決めていない。
②小坪副委員長は、個人で普天間基地に入れるように国会議員に頼みやり取りをした。その事は委員長は知っていた。
③宜野湾市役所での研修の後、嘉数高台公園から基地を見降ろしての視察は防衛施設局の職員が説明をした。この際、正副委員長は参加せずに施設局の車で国会議員の所に行った。一緒に行っていた2人の委員は、正副委員長の行動を知らされていなかった。
=====【引用ここまで】=====
米軍の普天間基地に入ろうが入るまいが、国会議員に依頼をしたとかしないとか、そんな事はどうでも良い(共産党的にはそこが問題かもしれないが)。
問題は、税金を使った視察行程を勝手に省略し、私的な用事を優先したこと。
なぜ視察行程より私的な用事を優先したのか。
考えられる理由として、税金を使って実施する視察であるにもかかわらず、事前に視察の目的を明確にしていない、ということが挙げられる。
目的は何か。そのために、視察は有効な手段かどうか。目的達成のために、どこの、何を視察することが有効か。その成果を得るために、委員会の人数分の旅費を投じることは妥当か。
これらが明確になっていれば、「視察行程を抜け出す」なんて有り得ない。目的達成のために視察行程を組んでいれば、当然、視察を優先しただろう。「普天間基地には入れたらいいね」というコメントが紹介されているが、何のために普天間基地に入ろうとしたのか、何のために宜野湾市役所に行ったのか、そこが明示されていない。テーマが「基地対策の在り方」って、漠然もいいとこ。
中座した委員長や副委員長(freejapanの小坪氏?)の行為は当然非難されるべきもの。では、他の委員はどうだろうか。宜野湾市役所で研修を受け、防衛施設局の職員から説明を受けたというが、ちゃんと成果を持ち帰っているだろうか。その成果は議員の旅費や随行者の人件費、応対した宜野湾市や防衛施設局の職員の人件費に見合ったものだろうか。税金の無駄遣いという観点からは、委員長、副委員長も、他の委員も同列ではなかろうか。
漠然とした「勉強になるから」では甘い。これだけでは、行政視察をわざわざ実施する理由にならない。昨今は、インターネットで様々な情報が手に入る。先進地の状況や取組みをネットで調べて、必要であれば資料を取り寄せて、議員間で事前に勉強会をして、「これは実際に現地で担当者に聞いてみないと分からない」というものを浮かび上がらせ、この疑問点を明らかにすることが旅費に見合ったものと評価することができて、初めて委員会視察は有意なものになろう。
「視察に行きました。説明を受けました。資料を貰いました。この説明や資料の内容は、自治体や基地の公式サイトで事前に把握可能なものがほとんどです。」
・・・これでは、旅費は全くの無駄。納税者の金をドブに捨てたも同然。
今回、委員長と副委員長が視察行程を中座するという異常事態が発生したことで、ことが公になった。しかし、公になった本件以外にも、納税者から見て「本当に行く意味あるの?」と疑問が生じる委員会視察というのは、実際のところ山ほどあるのだろう。これは氷山の一角にすぎない。
もし身近な所に、都道府県議会、市区町村議会の議員がいたら、尋ねてみてほしい。
「去年、一昨年と、委員会視察で何を学び、何をうちの自治体に持ち帰りましたか?」
と。具体的な答えが返って来なかったら、あなたの払った税金は、その議員が観光地に行くために費やされたと評価してほぼ間違いない。
○地方議会議員の視察旅行は廃止を考えるべきである(半田伸明) - BLOGOS(ブロゴス)
=====【引用ここから】=====
もう1つ例を出しましょうか。議員が学ぶことに意味があるというのなら、何も出かけることなく、テーマに相応しい候補地に依頼して、講師を三鷹市に呼んで勉強会する方が意味があるのでは?交通費その他考えると、委員全員で行くよりはるかに安いですよね。
地方議会の場合、委員会視察費用を廃止し、その分官僚の出張費をどこかで計上する方がより効率的ではないでしょうか?もう委員全員で視察に行く時代ではないと思いますよ。ただでさえ、行財政改革やらなければならないのに。
=====【引用ここまで】=====
~2013.9.20追記~
本記事を書いた翌日には、こんなニュースも飛び込んできた。
○山梨県議海外視察:旅費返還訴訟で住民逆転勝訴 東京高裁 毎日新聞 2013年09月19日 20時35分(最終更新 09月19日 22時08分)
=====【引用ここから】=====
山梨県議がエジプトなどを公費で視察したのは「個人旅行と同じ」として、住民らが旅費などの返還を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は19日、住民敗訴の甲府地裁判決を取り消し、参加した県議11人(当時)に計約850万円の返還を求めるよう県に命じた。貝阿弥誠裁判長は「海外研修に名を借りた観光中心の私的旅行」と断じ、住民側の請求を全額認めた。
争われたのは、2009〜10年に米国、エジプト・トルコ、韓国、鹿児島県・屋久島へ行った視察4件。富士山の世界遺産登録を目指すなどの名目で県が支給した旅費や政務調査費などが使われた。
各旅行では自由の女神やピラミッド、カッパドキアなどを巡っており、貝阿弥裁判長は「大部分が観光名所の見学に費やされた」と判断。県議が視察後に提出した報告書も「日本でも入手できる資料で、観光ガイドのような説明」と厳しく指摘した。県議が「ホワイトハウス見学で識見を深めた」などと法廷で釈明したことについては「政治家個人の研さんに属すること。自費で行うべきだ」としている。
判決について横内正明知事は「海外研修は正式な手続きを踏まえて行われており、判決は誠に残念」とコメント。米国旅行に参加した県議の一人は「海外視察は必要。誤解を受けた部分は改善したい」と話した。【片平知宏、藤河匠】
=====【引用ここまで】=====
最後に掲載されている、知事や県議のコメントのぬるいこと、ぬるいこと。
視察目的として
「富士山の世界遺産登録を目指す」
とある。米国、エジプト、トルコ、韓国、屋久島に行くことで、富士山の世界遺産登録にどうつながるのか、どのような効果があるのか、明示してもらいたいものだ。
・・・できないだろうけど。