若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

政府と関税からFreeなJapanにしたい

2012年09月07日 | 政治
トリクルダウン政策の後始末|三橋貴明オフィシャルブログ「新世紀のビッグブラザーへ blog」Powered by Ameba
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「東日本大震災の復興を妨げるTPP推進に反対する請願 (http://www.sns-freejapan.jp/2011/04/07/tpp/ )」は、来週、請願を実施するため、署名の受付は22日(金)必着とさせて頂きます。よろしくお願い致します。
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TPP反対請願提出のご報告|三橋貴明オフィシャルブログ「新世紀のビッグブラザーへ blog」Powered by Ameba
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 昨日、ご署名賜りましたTPP反対の請願書(東日本大震災の復興を妨げるTPP推進に反対する請願)の方を、SNS-FreeJapanの皆様と共に、無事に紹介議員の先生方(古屋圭司議院議員、高市早苗衆議院議員、西田昌司参議院議員、野村哲郎参議院議員、山田俊男参議院議員、衛藤晟一参議院議員)にご提出申し上げました。
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で、請願の中身を見ていこう。


東日本大震災の復興を妨げるTPP推進に反対する請願
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請願の目的~東日本大震災からの復興のために

東日本大震災により、東北地方などの農業・漁業は大ダメージを受けました。この状況で、農産物などの自由化であるTPPを推進することは、震災復興の大きな妨げとなってしまうでしょう。日本は今、震災からの復興と全国の防災に注力すべき時期であり、TPPなどの自由化を推進することは間違っています。

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震災によって被害を受けたインフラのうち、必要なものの復旧は急がなければならない。が、農産物などの自由化は果たして復興の妨げになるだろうか。

「海外からの輸入農産物にかけていた関税を撤廃すると、被災地産の農産物を輸入農産物が駆逐してしまうから、被災地の農業復興の妨げになる」
という理由でいくならば、同じ理屈から、
「県外農産物の被災地域への流入を止めなければならない」
ということも言わなければならない。震災により被災地産の農産物の生産供給が滞っている間に、県外産の農産物が被災地域で定着したら、県内産の農産物が今後流通する余地を奪ってしまうかもしれない・・・となるからだ。

そうなると、外国産はもとより、県外産の農産物についても、県境で関税をかける必要が生じてくる。

外からの農産物が入ってこなくなり、困るのは誰か。
被災地に住む消費者である。
元から、国産米は海外の物に比べて割高な上に、多くの農地が被害を受けて生産が低下しており、県内産の農産物は更に割高になっている。生産基盤が残っている県内の農家にとっては、農作物が高く売れるから良いかもしれないが、非農家にとっては被災して生活が大変な上に、食料品の値上がりで生活コストが更に上がることになる。泣きっ面に蜂だ。

「ヨソから入ってくる農産物は駄目。いざという時に売ってくれないと困る。ウチで作った農産物でないと安全保障上問題だ。」
という理屈を推し進めると、最終的には、各家庭で農地を所有し、全国民が自給自足可能な兼業農家とならなければならなくなる。自給率向上の理屈は、自給自足を促す理屈と裏表の関係にある。我々は、分業と交易で成り立っている文明と豊かさを享受してきたが、これを手放すことを余儀なくされそうだ。

被災地の復興、被災地住民の生活安定に必要なのは、それなりの品質の物が安く安定的に流通することだ。関税はこれを妨害している。復興を妨げるのは、自由化ではなく関税である。現在の関税制度のように、消費者に半永久的な負担を強いることは到底許されない。


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経済発展のまやかし~農家を犠牲にして得られる経済的メリットはごくわずか

推進派の前原氏(前外務大臣)は「農業は日本のGDP(経済規模)の1.5%にすぎない」と発言したが、反対派の三橋氏(経済評論家)は利益を得るであろう耐久消費財(家電、自動車など)の輸出総額にしても、日本のGDPの1.6%程度の規模にすぎないと反論している。
GDPのわずか1.6%の輸出の拡大と引き換えに、外国産の安価な農産物に日本市場が席巻され、国の基本たる農業が立ち行かなくなることは看過することはできない。

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関税の問題は、「製造業」対「農業」ではない。
「消費者」対「(農業等の)保護産業」である。
関税で特定の産業を保護するために、消費者たる全国民に負担を強いることは看過できない。


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国家にとっての穀物供給の重要性
世界最大の小麦輸入国であるエジプトは、穀物供給を外国(ロシアなど)からの輸入に頼り、ロシアが天候不順で輸出を禁止した結果、穀物価格が数倍にまで跳ね上がってしまった。ムバラク政権崩壊の一因は、穀物価格の急騰なのである。
農産物の供給とは、単純なビジネスの問題ではなく、国民の安全保障の問題なのである。

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エジプトの人口は、1980年の4400万人から2010年の8400万人に激増した。エジプトにはナイルに沿って農地があるが、ナイルから少し離れたら、後はずーっと砂漠である。あの少ない農地で、8000万を超える人口を賄うことができるとは思えない。

輸入に頼ったからこそ、人口増加を可能にしたと考えるのが自然だ。そりゃ、砂漠を農地化していけば8400万人を賄うだけの小麦生産ができるようになるかもしれない。ただ、そうするためには水や資源、エネルギー、労働力がどれだけ必要になるのだろうか。ちょっと想像がつかない。

食糧を生産するために必要なものを全て自給できるのであれば別だが、そうはいかない。エジプトでは食糧生産に必要な農地が少ないように、日本は食糧生産に必要な燃料が少ない。
ではどうするか?

様々な資源を投じて農地を広げる、
燃料を輸入する、
外国で農地や燃料を使って生産した物を輸入する、
のいずれかの手段を採らなければならない。

全てを自給することはできない。不足する物を他所から買うか、何かを我慢しなければならない。エジプトや日本は、他所から買うことで人口の増加や豊かな生活を実現してきた。

輸入に頼らなければ、海外の農産物価格には左右されない。しかし、輸入に頼らないと、安全保障うんぬんの前に、そもそも、人口規模や生活水準を維持できない。

「安全保障の観点から、食糧自給率を増やそう」
という主張には、
(今の生活水準を落とす覚悟をした上で)
という括弧書きがついている。

請願者や紹介議員に名を連ねる面々に、その覚悟があるかどうか。


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日本の農業とは「育てる農業」である。例えば関東ローム層を三百年に渡り開墾し農地にしてみせた。「現在」という短期的なスパンで考えるものではなく、三世代、四世代に渡って土地を守り、それが治水となり防災となるのが農業である。安易に見た目上の数字のみで損か得かを考えるのはナンセンスなのだ。大規模ビジネス農家も否定はしないが、国土の守り人としての農業を再度見つめ直す必要がある。少なくとも海外との全面自由化は、定量化できない側面においても著しいデメリットがある。
=====【引用ここまで】=====


関東平野の農地が、具体的に治水や防災へどのくらい貢献しているのだろう。ちょっと良く分からない。

さて、関税による特定産業の保護には、定量化できない著しいデメリットがある。
政府による補助や保護は、依存する体質を生み、独立した農家としての気概を損なうのだ。

関税や補助金を貰って少し時間が経つと、農家は「関税があって当たり前」「補助金を貰えて当たり前」となる。関税により吊り上げられた農産物価格や、補助金からの収入を前提として、経営計画を立てるうちに、関税や補助金制度が、他人へ負担を強いていることに気が付かなくなる。他人へ強いている負担を忘れると「関税率を引き上げろ」「もっと補助金よこせ」の大合唱となる。

自立した経営という常識。この常識が、農業で通用しなくなりつつあるが、関税や補助金による半永久的な保護がその一因である。

関東ローム層を開墾した農家達は、農業で食っていける、生計を立てる道になる、儲かる、と考えたからこそ、何代にもわたって自分達で開墾してきたのだ。農家が自立心を失ったら、TPPがあろうが無かろうが農業は衰退する。現に、補助金に頼りきった小規模兼業農家は衰退し、その後継者にとって田畑は「負債」になりつつある。

震災復興をダシに、永続的な関税政策を擁護することは、決して看過することができない。

保守派の経済論の論理的支柱と目される三橋氏が実施した請願だが、中身は全くくだらない。どうしようもない。ただ、この請願が言うように、TPPの中身は不透明だ。政府が交渉に参加して、何をどう交渉し、どういうものを締結するかが分からない、という点に不安を感じるのは同意する。情報がオープンにされていないことが、政府への不信感を高めている。

そこで。

他国政府との交渉の有無に関係なく、関税を無くすことと、恣意的で複雑な農業補助金を廃止することを提案したい。オープンかつ透明なプロセスを経て、シンプルな制度を作るのだ。

政務調査費→政務活動費 

2012年09月04日 | 地方議会・地方政治
地方自治法が改正された。

政務調査費が政務活動費に名前を変えた。
そして、支出の対象が、
議員の調査研究+「その他の活動」
に広がった。

・・・何だ、「その他の活動」って?

改正後の条文を見る限り、条例で定めさえすれば、議員の政治活動や個人的な活動にも政務活動費を支出できることになる。どうも、全国都道府県議会議長会からの要請で、政務活動費に関する修正が追加されたらしい。

・・・余計なことを。

従来の政務調査費のあり方について、個人的には、調査研究というインプット作業の一環としての

・研究会や研修会の開催経費、参加経費
・先進地調査、現地調査のための旅費
・図書、資料等の購入代金

は、まぁ有りとしても、

・議会活動や行政の政策を広報するための印刷代、集会経費
・調査研究をするための事務所家賃、調査員の人件費

は、好ましくないと思っていた。
広報活動や事務所、調査員などは、選挙活動と表裏のものだからだ。

議員個人で発信する議会活動の広報は、
「私が当局に働きかけて、一般質問をして、○○が実現しました」
的な、選挙を視野に入れた支持者・支援団体向けの手柄話、宣伝に流れがちになる。
また、事務所や調査員については
「調査研究のための事務所や人員だ」
と言っても、そのまま政治活動や個人的な活動に流用できる。

インプットの活動は、議員としての政務調査とそれ以外の活動との線引きが容易だが、アウトプットの活動や事務所費、人件費を線引きするのは困難だ。

資料代、研修参加費といったインプットものであれば、領収書を見ればすぐ適正かどうかが分かる。図書でマンガを買っていれば、一目でアウトだと分かる。
しかし、
「事務所の家賃や電気代、ガソリン代の総額のうち、政務調査に3割、政治活動に5割、個人的に2割使ったから、政務調査費から3割分を支出しました」
と言われても、それが妥当ななのかどうかは分からない。

不正支出が続き、「第二の議員報酬」との批判が強く、市町村の中では廃止の流れが強かった政務調査費。それが、支出範囲を限定し明示する方向ではなく、漠然とした支出範囲の拡大を許容する形で地方自治法が改正された。おそらく、全国都道府県議会議長会に関わる者以外にとっては、寝耳に水の話だろう。

政務調査費の目安、相場は、
市議会の場合は月額数万円、
県議会の場合は月額数十万円、
となっている。

都道府県議会の連中が、月額数十万円を返還することなく消化できるようにするため、国に法改正を働きかけて実現した、というのが、今回の地方自治法改正の中身なのだろう。県条例の定め方次第では、県議会議員が所属政党の党大会に出席するための費用を政務活動費から合法的に支出することもできるようになる。

都道府県議会は、市町村議会のように、政務調査費を廃止しようとは考えもしなかったんだろう。そりゃ、欲深で無能な都道府県議会議員どもが、月額数十万円、年間1000万円を超えるような収入を自ら手放すはずがない。



地方自治法第100条(改正前)
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14 普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査研究に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務調査費を交付することができる。この場合において、当該政務調査費の交付の対象、額及び交付の方法は、条例で定めなければならない。
15 前項の政務調査費の交付を受けた会派又は議員は、条例の定めるところにより、当該政務調査費に係る収入及び支出の報告書を議長に提出するものとする。

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下記法律案の修正案(平成24年8月29日可決
議案 閣法 第180回国会 60 地方自治法の一部を改正する法律案に対する修正案
=====【引用ここから】=====
 第百条第二項中「定が」を「定めが」に、「外」を「ほか」に、「前項」を「前項後段」に、「但し」を「ただし」に改め、同条第三項中「第一項」を「第一項後段」に、「禁錮(こ)」を「禁錮」に改め、同条第十四項中「調査研究」の下に「その他の活動」を加え、「政務調査費」を「政務活動費」に改め、「方法」の下に「並びに当該政務活動費を充てることができる経費の範囲」を加え、同条第十五項中「政務調査費」を「政務活動費」に改め、同項の次に次の一項を加える。
  議長は、第十四項の政務活動費については、その使途の透明性の確保に努めるものとする。

=====【引用ここまで】=====

地方自治法第100条(改正後)
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14 普通地方公共団体は、条例の定めるところにより、その議会の議員の調査研究その他の活動に資するため必要な経費の一部として、その議会における会派又は議員に対し、政務活動費を交付することができる。この場合において、当該政務調査費の交付の対象、額及び交付の方法並びに当該政務活動費を充てることができる経費の範囲は、条例で定めなければならない。
15 前項の政務活動費の交付を受けた会派又は議員は、条例の定めるところにより、当該政務活動費に係る収入及び支出の報告書を議長に提出するものとする。
16 議長は、第十四項の政務活動費については、その使途の透明性の確保に努めるものとする。

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議会機能の充実強化を求める緊急要請 平成22年1月21日  全国都道府県議会議長会
=====【引用ここから】=====
3)議会機能の充実強化及び地方議会議員の責務の明確化に伴い、議員又は会派が住民意思を踏まえた活動を展開する上で必要な制度として、現在法文上調査研究活動に特化されている政務調査費制度を見直し、政策立案、議員活動の説明等を加え、幅広い議員活動又は会派活動に充てることができることを明確にするよう法律改正を行うこと。
=====【引用ここまで】=====