自ら美術館を運営しているのに、なぜか、展示施設の無い市役所に美術品を寄贈するという、理解不能な行動をとった美術館長のお話。
約60年間収集の美術品を 貴重な日本画など194点 行橋市に増田さん /福岡 毎日新聞2016年7月8日 地方版
=====【引用ここから】=====
行橋市神田町の元建設会社社長で私設の増田美術館(同市行事)館長、増田博さん(93)が7日、約60年間にわたって収集してきた日本画や陶磁器など個人所有の194点(購入価格計約4億4600万円)を市に寄贈した。横山大観や東山魁夷ら著名作家の作品が多く、増田さんは「手放すのは寂しいが、高齢で子供がおらず、市で役立ててほしい」と話している。【荒木俊雄】
増田さんらによると、30歳ぐらいのころに知り合った著名な美術品収集家の影響で絵画などの収集を始め、会社経営の傍ら、2005年に増田美術館を開設。展示・保管数は絵画や陶磁器、書など339点で、近代日本画のランクでは九州有数という。今回寄贈したのは会社や、美術館を管理する公益財団法人「増田美術・武道振興協会」(理事長=増田さん)が所有する計145点を除いた個人分。
寄贈品には大観の掛け軸「暁山雲」や購入額2000万円超の橋本雅邦の日本画「龍虎図」、文化勲章を受章した二代浅蔵五十吉の陶磁器「和やかな四季の風情を飾る壺(つぼ)」など貴重な品ばかり。目録を受け取った田中純市長は「大変ありがたい申し入れ。広く市民に見ていただく機会を増やし、文化の機運を盛り上げたい」と話した。
市には現在、美術品を展示・保管する施設がなく、当面は現状のまま増田美術館で管理してもらう。このため、美術館側と近く管理に関する契約を結ぶことになるという。
〔京築版〕
=====【引用ここまで】=====
美術館の館長が「手放すのは惜しい」と言いながら、自分が理事長を務める美術館の運営団体(公益財団法人)に所有権を移すのではなく、市に美術品を寄贈した。ところが、寄贈された市の側には美術品を展示・保管する施設がない。そこで、現状のまま美術館で管理を行うそうな。
リバタリアンとしては、私有財産として収集した美術品をわざわざ行政の手に委ねてしまうのは非常に残念。このリバタリアンとしての視点を外したとしても、この寄贈には疑問が残る。
美術館を運営する人が、展示・保管施設の無い市役所へ美術品の寄贈を思い付いたというのが、不思議でならない。
また、寄贈の申出を受けた市役所の側も、普通なら
「ありがたい申出なのですが、194点も保管する場所がないので」
と断るところじゃないだろうか。
・・・うーん、意味が分からない。節税対策だろうか?
美術品の所有権は、美術館の館長から市へ移る。従来、美術館長の所有する美術品を美術館で展示・保管していたが、今後、市の所有する美術品を美術館で展示・保管するようになる。管理形態は従来どおり。市長は「文化の機運を盛り上げたい」などと言っているが、市民の目に触れる機会は今までどおり。実態は何も変わらず、ただ、市と公益財団法人の間に管理契約が発生するということだけが変わる。
美術館で展示・保管するという実態や美術館側の手間は変わらないのだが、契約に基づき、市が公益財団法人に管理料を支払う。公益財団法人は濡れ手に粟で管理料を稼ぐことができる。逆に、市は、美術品の寄贈を受けたことによって、本来なら不要なはずの手間賃を払う羽目になる(この管理契約が無償なら話は別だが)。
もし、この寄贈に関する市側の交渉担当者が、市の負担で公益財団法人側に対し便宜を図ったとすれば、これは大変なことである。場合によっては背任である。仮に公益財団法人から市側の交渉担当者へ金品の授受があれば、贈収賄にもなりかねない。
そうした不正な意図がなかったとしても、この寄贈によって今後、追加の管理費用や展示施設の建設費用が生じる可能性を考えれば、市へのマイナスは大きい。パトロン気取りの交渉担当者が市に負わせたマイナスはすなわち交渉担当者の負担・・・ではなく、市民の負担となる。
この公益財団法人と市の間には、過去にも似たような出来事があった。
時の総務部長が交渉担当者となり、市は土地・建物(ミラモーレという元・宴会場)を公益財団法人から無償で借りることとなった。ところが、市が調査したところ建物には違法建築部分が含まれるということで、一時的に物置として使っただけで終わった。最終的には、建物は取り壊わされ、市がわざわざ補正予算を組んで土地を1億2千万円で買い取るようになった、というものである。
(現在、この土地に25億円かけてハコモノを作ろうとしているが、これについては今回触れません。)
使い道のないモノをタダで貰い、その後処理でお金がかかるというのは、非常に馬鹿馬鹿しい。タダより高いものは無いとは、よく言ったものだ。
約60年間収集の美術品を 貴重な日本画など194点 行橋市に増田さん /福岡 毎日新聞2016年7月8日 地方版
=====【引用ここから】=====
行橋市神田町の元建設会社社長で私設の増田美術館(同市行事)館長、増田博さん(93)が7日、約60年間にわたって収集してきた日本画や陶磁器など個人所有の194点(購入価格計約4億4600万円)を市に寄贈した。横山大観や東山魁夷ら著名作家の作品が多く、増田さんは「手放すのは寂しいが、高齢で子供がおらず、市で役立ててほしい」と話している。【荒木俊雄】
増田さんらによると、30歳ぐらいのころに知り合った著名な美術品収集家の影響で絵画などの収集を始め、会社経営の傍ら、2005年に増田美術館を開設。展示・保管数は絵画や陶磁器、書など339点で、近代日本画のランクでは九州有数という。今回寄贈したのは会社や、美術館を管理する公益財団法人「増田美術・武道振興協会」(理事長=増田さん)が所有する計145点を除いた個人分。
寄贈品には大観の掛け軸「暁山雲」や購入額2000万円超の橋本雅邦の日本画「龍虎図」、文化勲章を受章した二代浅蔵五十吉の陶磁器「和やかな四季の風情を飾る壺(つぼ)」など貴重な品ばかり。目録を受け取った田中純市長は「大変ありがたい申し入れ。広く市民に見ていただく機会を増やし、文化の機運を盛り上げたい」と話した。
市には現在、美術品を展示・保管する施設がなく、当面は現状のまま増田美術館で管理してもらう。このため、美術館側と近く管理に関する契約を結ぶことになるという。
〔京築版〕
=====【引用ここまで】=====
美術館の館長が「手放すのは惜しい」と言いながら、自分が理事長を務める美術館の運営団体(公益財団法人)に所有権を移すのではなく、市に美術品を寄贈した。ところが、寄贈された市の側には美術品を展示・保管する施設がない。そこで、現状のまま美術館で管理を行うそうな。
リバタリアンとしては、私有財産として収集した美術品をわざわざ行政の手に委ねてしまうのは非常に残念。このリバタリアンとしての視点を外したとしても、この寄贈には疑問が残る。
美術館を運営する人が、展示・保管施設の無い市役所へ美術品の寄贈を思い付いたというのが、不思議でならない。
また、寄贈の申出を受けた市役所の側も、普通なら
「ありがたい申出なのですが、194点も保管する場所がないので」
と断るところじゃないだろうか。
・・・うーん、意味が分からない。節税対策だろうか?
美術品の所有権は、美術館の館長から市へ移る。従来、美術館長の所有する美術品を美術館で展示・保管していたが、今後、市の所有する美術品を美術館で展示・保管するようになる。管理形態は従来どおり。市長は「文化の機運を盛り上げたい」などと言っているが、市民の目に触れる機会は今までどおり。実態は何も変わらず、ただ、市と公益財団法人の間に管理契約が発生するということだけが変わる。
美術館で展示・保管するという実態や美術館側の手間は変わらないのだが、契約に基づき、市が公益財団法人に管理料を支払う。公益財団法人は濡れ手に粟で管理料を稼ぐことができる。逆に、市は、美術品の寄贈を受けたことによって、本来なら不要なはずの手間賃を払う羽目になる(この管理契約が無償なら話は別だが)。
もし、この寄贈に関する市側の交渉担当者が、市の負担で公益財団法人側に対し便宜を図ったとすれば、これは大変なことである。場合によっては背任である。仮に公益財団法人から市側の交渉担当者へ金品の授受があれば、贈収賄にもなりかねない。
そうした不正な意図がなかったとしても、この寄贈によって今後、追加の管理費用や展示施設の建設費用が生じる可能性を考えれば、市へのマイナスは大きい。パトロン気取りの交渉担当者が市に負わせたマイナスはすなわち交渉担当者の負担・・・ではなく、市民の負担となる。
この公益財団法人と市の間には、過去にも似たような出来事があった。
時の総務部長が交渉担当者となり、市は土地・建物(ミラモーレという元・宴会場)を公益財団法人から無償で借りることとなった。ところが、市が調査したところ建物には違法建築部分が含まれるということで、一時的に物置として使っただけで終わった。最終的には、建物は取り壊わされ、市がわざわざ補正予算を組んで土地を1億2千万円で買い取るようになった、というものである。
(現在、この土地に25億円かけてハコモノを作ろうとしているが、これについては今回触れません。)
使い道のないモノをタダで貰い、その後処理でお金がかかるというのは、非常に馬鹿馬鹿しい。タダより高いものは無いとは、よく言ったものだ。