政府は、国家公務員の給与を引き下げることに伴い、地方公共団体に対しても、地方公務員給与を引き下げるよう求めている。
これに対し、地方公務員の組合(職員団体)は反発。
GW明けには、こんなチラシも配られた。
○国からの地方公務員給与引き下げ強要 組合員一人ひとりが怒りの声をあげよう!
=====【引用ここから】=====
政権交代により発足した安倍内閣は1月24日、国に準じて地方公務員の給与引き下げを要請することを閣議決定しました。そして、自治体固有の財源としての地方交付税を一方的に削減をし、そのことによって地方公務員給与の引き下げを強制しようとしています。行革、人員削減など血のにじむ努力により、自治体はプライマリーバランスの黒字化を達成してきました。今回の安倍内閣がしようとしていることは、そうしたことを無視し、自治体財源に手を突っ込もうとするものです。
自治体のことは自治体が決めるという「地方自治の本旨」をないがしろにするもので、地方自治、労使自治への介入です。そもそも自治体の給与を決めるのは国ではありません。自治体労使の交渉を経て決定するものです。こうした国の無茶苦茶なやり方に、組合員一人ひとりが怒りの声を上げていくことが大切です。
自治労福岡県本部
=====【引用ここまで】=====
労働組合が給与引き下げに反対するのは、おなじみの反応。「公務員にそもそも労働組合が必要か?給与条例主義で足り、労組の交渉など不要では?」と突っ込みたいところだが、ここでは触れない。
今回ひっかかったのが、
「自治体固有の財源としての地方交付税を一方的に削減をし、そのことによって地方公務員給与の引き下げを強制しようとしています。」
という箇所。
「地方交付税は地方の固有財源だ」
ということは、様々な場面で言われる。
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/scs/kouhuzei/data.htm
=====【引用ここから】=====
地方交付税は、本来は地方の税収入とすべきところを、団体間の財源の不均衡を調整して、全ての地方団体が一定の水準を維持しうるよう財源を保障する見地から、国税として国が代わって徴収して、一定の合理的な基準によって再分配するという、いわば「国が地方に代わって徴収する地方税」(固有財源)という性格をもっています。
=====【引用ここまで】=====
といったように、地方財政を解説した文章では毎度のように見かける言葉なのだが、この「固有財源」とは何か?「固有財源」の意味、効果はハッキリしない。
・「固有財源」だから政府は削減してはいけないのか?
・「固有財源」たる地方交付税に強い排他性があるのか?
どうも分からない。なにせ、地方交付税の大本の法的根拠である地方交付税法に、この文言は出てこないのだ。「固有財源」の根拠になりそうなものを探してみたが、次のものくらいしか見つけられなかった。
○地方交付税制度の概要
=====【引用ここから】=====
平成17年2月15日衆・本会議総理大臣答弁)
地方交付税改革の中で交付税の性格についてはという話ですが、地方交付税は、国税五税の一定割合が地方団体に法律上当然帰属するという意味において、地方の固有財源であると考えます。
=====【引用ここまで】=====
これによると、
「地方交付税は、国税五税の一定割合が地方団体に法律上当然帰属するという意味において、地方の固有財源である」
として、固有であることの意味をかなり限定している。地方交付税法第6条では、国税五税の一定割合を地方交付税の総額とすることが定められており、「地方の固有財源」という言葉はこのことを指しているに過ぎないようだ。
そのため、地方交付税の総額は、国会がこの法律を変えれば変わる。また、法律によって定まった総額をどのように分配するかは、政令や総務省令で定めることとなっている。この分配方法について地方から意見を申し出ることができるようにはなっているが、あくまでも意見でしかない。都道府県や市町村にいくら地方交付税を分配するかを決定する権限と責任は、総務大臣にあると明記されている。
地方交付税は中央政府による課税と中央政府による地方への再分配であり、これは中央集権の作用そのものである。
中央政府が地方交付税の配分額を削減すれば、地方公共団体は歳出を削減せざるを得ない。中央からの配分にどっぷりと依存した状態であり、中央の施策が一つ変更されれば、依存する地方は振り回される。依存すれば振り回されるという、当たり前のこと。
地方交付税が「固有財源」「国が地方に代わって徴収する地方税」であるというのは、口先だけの掛け声に過ぎない。実態は「国から地方へのお小遣い」。小遣いを貰うガキが、偉そうな事を言うな。「小遣いはよこせ、使い道に口を出すな」というのは、以前やった「地方分権=自治体の専制」の一類型だ。
小遣いという表現が悪ければ、山分けと言ったら良いだろうか。
山賊の親分が、村人達から財産を収奪し、アジトに積み上げた。その中の一部分を、「これは子分達にくれてやる。金の少ない奴ほど多く分けてやる」と言って山分けした。これを毎年続けた結果、子分達が「これは俺たち固有の取り分だ!親分が勝手に削るのは許さない!」と不平不満を言い出した。
・・・ということだ。
村人達からすれば、「いやいや、子分の固有の取り分じゃなくて、私達村人の財産でしょ?」と突っ込みを入れたくなる。親分子分の山分け争いはどうでも良いから、収奪を減らして欲しいものだ。
これに対し、地方公務員の組合(職員団体)は反発。
GW明けには、こんなチラシも配られた。
○国からの地方公務員給与引き下げ強要 組合員一人ひとりが怒りの声をあげよう!
=====【引用ここから】=====
政権交代により発足した安倍内閣は1月24日、国に準じて地方公務員の給与引き下げを要請することを閣議決定しました。そして、自治体固有の財源としての地方交付税を一方的に削減をし、そのことによって地方公務員給与の引き下げを強制しようとしています。行革、人員削減など血のにじむ努力により、自治体はプライマリーバランスの黒字化を達成してきました。今回の安倍内閣がしようとしていることは、そうしたことを無視し、自治体財源に手を突っ込もうとするものです。
自治体のことは自治体が決めるという「地方自治の本旨」をないがしろにするもので、地方自治、労使自治への介入です。そもそも自治体の給与を決めるのは国ではありません。自治体労使の交渉を経て決定するものです。こうした国の無茶苦茶なやり方に、組合員一人ひとりが怒りの声を上げていくことが大切です。
自治労福岡県本部
=====【引用ここまで】=====
労働組合が給与引き下げに反対するのは、おなじみの反応。「公務員にそもそも労働組合が必要か?給与条例主義で足り、労組の交渉など不要では?」と突っ込みたいところだが、ここでは触れない。
今回ひっかかったのが、
「自治体固有の財源としての地方交付税を一方的に削減をし、そのことによって地方公務員給与の引き下げを強制しようとしています。」
という箇所。
「地方交付税は地方の固有財源だ」
ということは、様々な場面で言われる。
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/scs/kouhuzei/data.htm
=====【引用ここから】=====
地方交付税は、本来は地方の税収入とすべきところを、団体間の財源の不均衡を調整して、全ての地方団体が一定の水準を維持しうるよう財源を保障する見地から、国税として国が代わって徴収して、一定の合理的な基準によって再分配するという、いわば「国が地方に代わって徴収する地方税」(固有財源)という性格をもっています。
=====【引用ここまで】=====
といったように、地方財政を解説した文章では毎度のように見かける言葉なのだが、この「固有財源」とは何か?「固有財源」の意味、効果はハッキリしない。
・「固有財源」だから政府は削減してはいけないのか?
・「固有財源」たる地方交付税に強い排他性があるのか?
どうも分からない。なにせ、地方交付税の大本の法的根拠である地方交付税法に、この文言は出てこないのだ。「固有財源」の根拠になりそうなものを探してみたが、次のものくらいしか見つけられなかった。
○地方交付税制度の概要
=====【引用ここから】=====
平成17年2月15日衆・本会議総理大臣答弁)
地方交付税改革の中で交付税の性格についてはという話ですが、地方交付税は、国税五税の一定割合が地方団体に法律上当然帰属するという意味において、地方の固有財源であると考えます。
=====【引用ここまで】=====
これによると、
「地方交付税は、国税五税の一定割合が地方団体に法律上当然帰属するという意味において、地方の固有財源である」
として、固有であることの意味をかなり限定している。地方交付税法第6条では、国税五税の一定割合を地方交付税の総額とすることが定められており、「地方の固有財源」という言葉はこのことを指しているに過ぎないようだ。
そのため、地方交付税の総額は、国会がこの法律を変えれば変わる。また、法律によって定まった総額をどのように分配するかは、政令や総務省令で定めることとなっている。この分配方法について地方から意見を申し出ることができるようにはなっているが、あくまでも意見でしかない。都道府県や市町村にいくら地方交付税を分配するかを決定する権限と責任は、総務大臣にあると明記されている。
地方交付税は中央政府による課税と中央政府による地方への再分配であり、これは中央集権の作用そのものである。
中央政府が地方交付税の配分額を削減すれば、地方公共団体は歳出を削減せざるを得ない。中央からの配分にどっぷりと依存した状態であり、中央の施策が一つ変更されれば、依存する地方は振り回される。依存すれば振り回されるという、当たり前のこと。
地方交付税が「固有財源」「国が地方に代わって徴収する地方税」であるというのは、口先だけの掛け声に過ぎない。実態は「国から地方へのお小遣い」。小遣いを貰うガキが、偉そうな事を言うな。「小遣いはよこせ、使い道に口を出すな」というのは、以前やった「地方分権=自治体の専制」の一類型だ。
小遣いという表現が悪ければ、山分けと言ったら良いだろうか。
山賊の親分が、村人達から財産を収奪し、アジトに積み上げた。その中の一部分を、「これは子分達にくれてやる。金の少ない奴ほど多く分けてやる」と言って山分けした。これを毎年続けた結果、子分達が「これは俺たち固有の取り分だ!親分が勝手に削るのは許さない!」と不平不満を言い出した。
・・・ということだ。
村人達からすれば、「いやいや、子分の固有の取り分じゃなくて、私達村人の財産でしょ?」と突っ込みを入れたくなる。親分子分の山分け争いはどうでも良いから、収奪を減らして欲しいものだ。