若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

お役所の慣行 ~ 庁舎内組合事務所供与 ~

2012年02月27日 | 労働組合
まず、一般的な労働組合における、組合事務所の考え方として・・・


○労働組合法
=====【引用ここから】=====
(不当労働行為)
第七条  使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない。
三  労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること、又は労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること。ただし、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことを妨げるものではなく、かつ、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附及び最小限の広さの事務所の供与を除くものとする。
=====【引用ここまで】=====

○最高裁判例 昭和62年05月08日
=====【引用ここから】=====
労働組合による企業の物的施設の利用は、本来、使用者との団体交渉等による合意に基づいて行われるべきものであり、使用者は、労働組合に対し、当然に企業施設の一部を組合事務所等として貸与すべき義務を負うものではなく、貸与するかどうかは原則として使用者の自由に任されているということができる。
=====【引用ここまで】=====


使用者が労働組合に援助を行うことは、労働組合の独立性を侵す不当労働行為として禁じられている。世の中、「金を出せ、口は出すな」は通用しない。支援を受けるということは、一定の場合に口出し、介入されることを許容することを意味するからだ。

ここで、労働組合法は「最小限の広さの事務所の供与」を不当労働行為から除外している。最小限の事務所提供は使用者の禁止行為から除外されているが、では使用者が事務所を提供する義務があるかというと、そうではない。組合に事務所を提供するかどうかについては、使用者側に広い裁量が認められている。


次に。

労働組合法の適用のない地方公務員の組合(職員団体)が、役所内に組合事務所を構える根拠規定としてよく使われているのが次の条文。


○地方自治法
=====【引用ここから】=====
(行政財産の管理及び処分)
第二百三十八条の四
7 行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる。
8 前項の規定による許可を受けてする行政財産の使用については、借地借家法 (平成三年法律第九十号)の規定は、これを適用しない。
9 第七項の規定により行政財産の使用を許可した場合において、公用若しくは公共用に供するため必要を生じたとき、又は許可の条件に違反する行為があると認めるときは、普通地方公共団体の長又は委員会は、その許可を取り消すことができる。

=====【引用ここまで】=====


自治体の行政財産は、何らかの公的な目的を与えられた上で設置されている。税金を使って不動産を買ったり建物を建てたりするのだから、税金を投じるに足る何らかの用途・目的が通常は設定されている。

地方自治法では、庁舎をはじめとする行政財産を特定の個人・団体に使用させることができるとされている。ただこれは、あくまでも公的な用途・目的を妨げないことが必要。行政財産の目的外使用許可を受けたとしても、強い権利が認められたわけではない。賃借人の強い権利を認めている借地借家法を、行政財産の目的外使用については適用除外としている。

この行政財産の目的外使用ということで、自治体は職員組合に対し庁舎の一部を組合事務所として使用することを認めている(大阪市はこのケース)。



さてここで。



役所では、庁舎内の会議室やホールを、私的団体の会議、講習、イベントのために貸し出すことがある。こうした諸団体の会議や講習は公的な用途・目的ではなく、上記の行政財産の目的外使用許可として貸し出しが行われている。

老人クラブや障害者団体、町内会、遺族会、英会話教室、パソコン教室、女性セミナー、健康クラブ、人権団体などの様々な団体が、行政財産の目的外使用許可を得て、日時を指定して会議室を一時的に使用している。

通常の会議、講習、イベントでは、指定した一定の時間帯のみ会議室を占用する。ところが、事務所として使うとなると占用の度合いが大きく異なる。

事務所として会議室の目的外使用許可を受ければ、そこにパソコンやプリンター、事務机、キャビネット等を運び込み、事務所としての体裁を整えるだろう。1年間の使用許可であれば、24時間365日、その団体が独占的に会議室を使用することになる。特定団体の私物の機器や内部資料が並んでいる場所で、他の団体が会議や講演をするというのはまず無理。

会議室を講習の場として一時的に使うのと、事務所として使うのとでは、排他性の強さに格段の違いがある。これだけの排他性を、特定の団体に認めるというのは行政としてどうなのか、という疑問がある。

1年という長期間にわたって、事務所として特定の団体に使用させる。これは、24時間365日、他の団体の会議や講習などでの使用を排除するということを意味する。また、事務所として様々な機器や内部資料があるため、突発的に生じた公用目的の使用にも対応できない。

現在、自治体が既に組合事務所に目的外使用許可を出している場合、自治法の規定により、使用期間の途中で許可を取消すのであれば、一旦許可を与えてしまっている以上、取り消す理由が具体的に予想される、あるいはその理由が既に発生していることが必要だ。

しかし、新規に目的外使用許可申請を出す場合(あるいは、使用期間が終了して再申請する場合)は違う。自治法の規定上、許可をするかしないかの裁量が認められているのだから、公用目的が発生するかもしれないという蓋然性がありさえすれば、特定団体への長期間の排他的利用を許可しないと判断しても裁量権の濫用とはいえないはずだ。



また、平等の観点からも問題がある。

職員組合も上記の諸団体と同様、私的な団体である。職員組合が事務所として庁舎の一部を使用することができるのであれば、その他の諸団体も自治体に事務所としての申請をすれば許可されるはずである。その他の団体に事務所として使用させることができないのであれば、職員組合に対しても認めるわけにはいかない。

憲法第14条「法の下の平等」に最低限含まれる内容、「法適用の平等」である。

私企業であれば、
「自分の会社にある労働組合に事務所を提供はするけど、他の会社の従業員の組合にまで事務所を提供はしないよ。」
というのは当たり前。
だが、行政はそうはいかない。住民に対して、ルールを一律に適用しなければならない。法適用の平等である。自治体で行政財産の目的外使用に関するルールを定めたら、職員組合であれ、老人クラブであれ、他所の労働組合であれ、同じ基準で使用の可否を検討しなければならない。

会議室がたくさんあるビルを行政財産として所有しており、一定の条件を定めて様々な団体に会議室を事務所として貸し出しているような自治体であれば、職員組合に対して事務所として貸し出しても、法適用の平等の観点で問題はない。しかし、そういった自治体は少ないだろう。むしろ、少ない会議室を各部署で融通しあいながら、どうにか対処している自治体の方が多いはずだ。

他の団体から見れば、職員労組にだけ事務所としての長期の排他的利用を認めている現状こそ、自治体の裁量権の濫用と映るのではないだろうか。

労働組合法で保護されている労働組合でさえ、使用者が労働組合に事務所を提供する義務はないのだ。行政財産の排他的利用、法適用の平等の観点という二つに照らして、なお職員組合に組合事務所を提供しなければならない、という理由が私には考え付かない。

公務員の組合は、庁舎以外でどこか空き店舗を事務所として借りたらいい。そして、役員会とか職員が集まる必要がある場合は、他の団体と同様、日時を指定して役所の会議室を借りるようにしたらいい。
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地方公務員法(勝手に)解説 政治的行為の制限 ~ 大阪市アンケート騒動 ~

2012年02月21日 | 労働組合
大阪市の職務命令アンケート騒動をうけて、地方公務員の選挙活動、政治活動について、自分なりの地方公務員法まとめ。
(あくまでも個人的メモなので、「ここの解釈に沿って活動したのに処分された」なんて苦情は受け付けません。)


○地方公務員法
=====【引用ここから】=====
(職務に専念する義務)
第35条 職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない。
(政治的行為の制限)
第36条 職員は、政党その他の政治的団体の結成に関与し、若しくはこれらの団体の役員となつてはならず、又はこれらの団体の構成員となるように、若しくはならないように勧誘運動をしてはならない。
2 職員は、特定の政党その他の政治的団体又は特定の内閣若しくは地方公共団体の執行機関を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、あるいは公の選挙又は投票において特定の人又は事件を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、次に掲げる政治的行為をしてはならない。ただし、当該職員の属する地方公共団体の区域(当該職員が都道府県の支庁若しくは地方事務所又は地方自治法第252条の19第1項の指定都市の区に勤務する者であるときは、当該支庁若しくは地方事務所又は区の所管区域)外において、第1号から第3号まで及び第5号に掲げる政治的行為をすることができる。
一.公の選挙又は投票において投票をするように、又はしないように勧誘運動をすること。
二.署名運動を企画し、又は主宰する等これに積極的に関与すること。
三.寄附金その他の金品の募集に関与すること。
四.文書又は図画を地方公共団体又は特定地方独立行政法人の庁舎(特定地方独立行政法人にあつては、事務所。以下この号において同じ。)、施設等に掲示し、又は掲示させ、その他地方公共団体又は特定地方独立行政法人の庁舎、施設、資材又は資金を利用し、又は利用させること。
五.前各号に定めるものを除く外、条例で定める政治的行為
3 何人も前2項に規定する政治的行為を行うよう職員に求め、職員をそそのかし、若しくはあおつてはならず、又は職員が前2項に規定する政治的行為をなし、若しくはなさないことに対する代償若しくは報復として、任用、職務、給与その他職員の地位に関してなんらかの利益若しくは不利益を与え、与えようと企て、若しくは約束してはならない。
4 職員は、前項に規定する違法な行為に応じなかつたことの故をもつて不利益な取扱を受けることはない。
5 本条の規定は、職員の政治的中立性を保障することにより、地方公共団体の行政及び特定地方独立行政法人の業務の公正な運営を確保するとともに職員の利益を保護することを目的とするものであるという趣旨において解釈され、及び運用されなければならない。
(争議行為等の禁止)
第37条 職員は、地方公共団体の機関が代表する使用者としての住民に対して同盟罷業、怠業その他の争議行為をし、又は地方公共団体の機関の活動能率を低下させる怠業的行為をしてはならない。又、何人も、このような違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおってはならない。
2 職員で前項の規定に違反する行為をしたものは、その行為の開始とともに、地方公共団体に対し、法令又は条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に基いて保有する任命上又は雇用上の権利をもつて対抗することができなくなるものとする。

=====【引用ここまで】=====


ああ嫌だ、法律って。
何書いてあるか全然分かんない。

ということで、必要な部分のみ抜粋して加工。

「大阪市役所の事務職員は、勤務時間中は職務にのみ従事しなければならない。」
「大阪市役所の事務職員は、特定の市長が在職し続ける目的をもって、選挙で投票をするように勧誘運動をしたり、署名運動を企画、主催したり、市庁舎や消耗品を利用ししてはならない」
「大阪市役所の事務職員は、ストライキをしてはならない。誰であっても、職員ストライキを企てたりそそのかしたりしてはならない。」

ちなみに、「勧誘運動」とは、

○人事院規則14―7(政治的行為)の運用方針について(昭和24年10月21日法審発2078)
=====【引用ここから】=====
(六) 第六号関係 本号の行為も当然政治的目的をもつ行為とされる。「勧誘運動をすること」とは、組織的、計画的、又は継続的に、勧誘をすることをいい、たとえば党員倍加運動のような行為はその例である。従つて、たまたま友人間で入党について話し合うようなことは該当しない。
~~~~~( 中  略 )~~~~~
(八) 第八号関係 「勧誘運動」とは、第六号にいう「勧誘運動」に準じて解釈されるべきである。従つて、選挙に際したまたま街頭であつた友人に投票を依頼するような行為は該当しない。
=====【引用ここまで】=====


勧誘運動とは、
「組織的、計画的又は継続的に勧誘をすること」
とあり、
「たまたま友人間で入党について話し合う」
「たまたま街頭であつた友人に投票を依頼する」
は該当しないらしい。

では、


(1).組合役員を務める市役所の職員が、組合加入職員に対し
「□月△日までに、市長後援会の紹介カードを職員1人につき5枚ずつ組合に提出するように」
「○○君、紹介カードがまだ出てないぞ。早く提出するように。」
と指示、催促する行為。

(2).この指示を受け、組合加入職員が親戚や知人に電話で
「◇◇さん、市長後援会に加入しませんか?」
と依頼し、同意を得て住所氏名を紹介カードに記入し、組合に提出する行為。


これらはどうか。期限や人数に関する取り決めがあり、これを実行するための指令系統がある。いかにも計画的で、組織的だ。こうした場合にまで「たまたま」と言い張るのは無理がある。

仮に(2)について、組合加入職員が
「たまたま電話した時に組合からの話を思い出して、お願いしただけですよ」
と言い訳したとしても、(1)の組合役員の指示、催促と併せてみると「たまたま」ではない。

また、紹介カードには住所、氏名、電話番号が書かれるのが通例。この名前入りのカードを集める行為が署名運動と判断されれば、集めるよう指示した者は違反したことになる。


ちなみに。

個人でだと地公法の禁止規定に引っかかるかもしれないが、「労働組合が組合活動の一環として行う活動は自由にできます」と言う主張も存在する。ただ、これは最高裁の考え方に反しているだろう。


○最高裁判例 昭和49年11月06日
=====【引用ここから】=====
政治的行為が労働組合活動の一環としてなされたとしても、そのことが組合員である個々の公務員の政治的行為を正当化する理由となるものではなく、また、個々の公務員に対して禁止されている政治的行為が組合活動として行われるときは、組合員に対して統制力をもつ労働組合の組織を通じて計画的に広汎に行われ、その弊害は一層増大することとなるのであつて、その禁止が解除されるべきいわれは少しもないのである。
=====【引用ここまで】=====


「政治的行為が労働組合活動の一環としてなされたとしても、組合員である個々の公務員の政治的行為を正当化する理由とならない」
「政治的行為が組合活動として行われるときは、組合員に対して統制力をもつ労働組合の組織を通じて計画的に広汎に行われ、その弊害は一層増大する」


 組 合 活 動 の一環だと 
 正 当 化 どころか
 弊 害 が 増 大 ! !




このように、地方公務員が組合員として行っている選挙絡みの行為は、地方公務員法に抵触している可能性の高いものが数多く含まれている。ただ、紹介者カードをはじめとするこうした行為は全国各地で行われている。

ではなぜ、違法の疑いの強い行為が、全国に横行しているのか。

理由は簡単。
罰則がないから。

罰則規定がなければ、警察が介入する余地はない。あとは、地公法違反を理由とする市当局からの処分さえクリアできれば、地公法の規定は有名無実化する。

そのためにも、組合が少しでも多くの票をとりまとめて市長に渡し、組合派市長を当選させることが必要になるのだ。組合派市長が当選すれば、その市長から地公法違反を理由とする処分が出されることは無いのだから。

刑罰を科されることはないし、組合で支援した候補が当選すれば処分されることもない。そのため、「組合に団結しながら旺盛な選挙活動・政治活動の展開に確信を持って活動をすすめてください」と開き直る団体が出現する。また、違法なストライキ体制を確立するため、毎年のように全国の自治体労組でスト批准投票を行い、中央へ指令権を委ねている。違法が大手を振って歩いている。

しかし、こうした「地公法違反?何それ?刑罰が無いんだからいいでしょ」という開き直りは、自治法の規定の穴をついて専決処分を行ったりした阿久根市の竹原前市長と同質のものである。市長や市職員が、罰則や強制力の無い規定を無視して良いとするのは、私の考えに合わない。

法律があり、条例があるから、公務員は公務員でいられる。その公務員が法律や条例を無視することを公言するのは、自分が拠って立つ場所を否定するものだ。やってはいけない。阿久根騒動で前市長への批判をしていた自治労は、罰則のない地公法の規定であっても厳格に遵守するよう傘下の組合へ指示を出すべきだ。


以上、ここまでは労組側への批判。
ここからは、大阪市長が発した「職務命令アンケート」について

・・・は、正式に公表されるのを待つことにしよっと。


ちなみに。
組合員の地公法違反の有無を調査するのであれば、違反となる行為を類型化し、これを念頭に置いた上で、

「組合からの文書が勤務時間内に回覧されてきたことはあるか」
「紹介カード提出にノルマや期限はあったか」

等の内容に限る必要があろう。
違反、合法部分をひっくるめて、組合活動の全容や、組合の政治信条にどれだけ染まっているかをアンケートで把握しようとしたら、思想信条の自由を侵すことになる。

ネット上で拾った今回のアンケートを見た感じでは、「ワザと?」思想良心の自由に抵触しようとしているふうにも思える。そうなると、法律論うんぬんではなく、喧嘩師としてのふっかけ方の話になってくる。

~ 追記 ~
今回の記事は、一般職の非現業職員を対象にしたもので、現業職員(単純な労務に雇用される者)を対象にしたものではない。現業職員については、

○地方公務員法
=====【引用ここから】=====
(特例)
第五十七条  職員のうち、公立学校(学校教育法 (昭和二十二年法律第二十六号)に規定する公立学校をいう。)の教職員(同法 に規定する校長、教員及び事務職員をいう。)、単純な労務に雇用される者その他その職務と責任の特殊性に基いてこの法律に対する特例を必要とするものについては、別に法律で定める。但し、その特例は、第一条の精神に反するものであつてはならない。

=====【引用ここまで】=====

○地方公営企業等の労働関係に関する法律
=====【引用ここから】=====
 附 則
5 地方公務員法第五十七条に規定する単純な労務に雇用される一般職に属する地方公務員であつて、第三条第四号の職員以外のものに係る労働関係その他身分取扱いについては、その労働関係その他身分取扱いに関し特別の法律が制定施行されるまでの間は、この法律(第十七条を除く。)及び地方公営企業法第三十七条から第三十九条までの規定を準用する。この場合において、同法第三十九条第一項中「第四十九条まで、第五十二条から第五十六条まで」とあるのは「第四十九条まで」と、同条第三項中「地方公営企業の管理者」とあるのは「任命権者(委任を受けて任命権を行う者を除く。)」と読み替えるものとする。

=====【引用ここまで】=====

○地方公営企業法
=====【引用ここから】=====
第三十九条
2 企業職員(政令で定める基準に従い地方公共団体の長が定める職にある者を除く。)については、地方公務員法第三十六条の規定は、適用しない。

=====【引用ここまで】=====


と、地方公務員法第36条が適用されないため、政治的行為の制限に関する今回の議論は当てはまらない。(職務専念義務やストライキ禁止は当てはまるけど)
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交際費とか政務調査費って、グレーゾーン多くありません?

2012年02月09日 | 地方議会・地方政治
○行橋市長交際費 市議と会食 3年9ヶ月 11回約37万円支出 西日本新聞20120209朝刊
======【引用ここから】======
 行橋市の交際費取扱指針は「行政の円滑な執行のため、市長などが市を代表して外部と交際する際に支出できる」と規定している。公開された「支出伺」によると、2008~10年度の支出はそれぞれ総額約190万円、11年度は1月12日までで約125万円。このうち約37万円が「議会との懇談時」などと記され、市内の会席料理屋やホテルの請求書が発行されていた。
 市長をはじめ市当局の出席者分を含む費用全額を市長交際費から支出。08年度は4件で約10万6千円、09年度は5件で約17万9千円、10年度は1件で約5万7千円、11年度(1月12日まで)は1件で2万8千円だった。
 市の説明では、市側から呼び掛けて開き、少なくとも毎回1~5人の市議が出席したという。市長のほか副市長や教育長が同席した会もあった。取材に対し八並市長は「政策や議案についての情報交換のために開いた。会食相手の名前は言えない。ただ、市民から誤解を生むかもしれず公費の支出は極力控えたい。交際費の状況は公開し、使途基準も見直したい」と話した。

======【引用ここまで】======
※新聞には請求書の写真が掲載されており、そこには酒、ビール、焼酎の文字がある。

○交際費で市議と会食 行橋市長 3年超で39万円支出 読売新聞20120210朝刊
======【引用ここから】======
 行橋市の八並康一市長(72)が、市長交際費を使って市議と会食し、市議側の飲食費も負担していたことが分かった。今年1月までの約3年9か月では、12回の会食で計約39万円を支出している。市長は「市政の課題に関して意見をいただくため、お礼を込めて支出した」と説明しているが、公費を使うのは不適切と判断し、今後はやめるという。
 市によると、会食は、市長が議員から話を聞きたい場合などに持ちかけ、市内のホテルや料理店で行った。1回で1~5人程度を相手にし、副市長や教育長が同席することもあった。たいていは交際費で全員分を負担したという。
 市長交際費の使途基準を定めた市の指針では、市政を円滑に執行するため市長が外部と交際する際に支出できるとしている。議員との会食について、市は「議員は職員が持ち得ない意見や情報を備えており、外部の人間と受け止めていた」と説明している。
 行橋市は市長交際費の支出を公開しておらず、市は「公開する態勢を整えたい」としている。

======【引用ここまで】======


・主催者:市長
・相手 :議員(1~5人)
・目的 :政策や議案についての情報交換、市政の課題に関する意見
・同席者:副市長、教育長、その他市当局(ときどき)
・費用 :たいていは交際費で全員分を負担


2つ記事を読んで、思いついた論点を挙げてみる。


(1)市長が議員と個別に、会食を伴って政策や議案について情報交換、意見交換することは妥当かどうか?

(2)市長と議員との会食で、市長(と市当局の出席者)の飲食代を交際費から支出することに違法性はあるか?

(3)市長と議員との会食で、議員の飲食代は交際費から支出されているのか?


まず、(1)情報交換の妥当性について。

議員と首長との情報交換は、一律に否定されるべきものではないと思う。政策が実施される時や議案が提出される時に、強固な反対意見を持つ議員、首長と考え方の近い議員、有力な議員に対し、事前に内々の説明をしたり、制度趣旨を理解してもらう、他の議員への説得をお願いする等、いわゆる「根回し」的なものは多かれ少なかれあるだろう。

公の場で説明し、討論をするのは当然必要。ただ、詳細な実情や内情、機微を公の場で伝えるのは難しい、という日本人的感覚は根強い。政策や議案について、情報交換をする場を内々に設けることを全てなれ合いとして否定するのは、厳しすぎる意見だろう。

ただ、これは程度の問題。例えば、提出予定の議案について内々の情報交換をし過ぎると、公開の会議でされるべき審査が秘密裏に終わってしまう「議案の事前審査」に該当する恐れがある。

「議案の事前審査」は地方自治法で禁止されているという人と、明文規定で禁止されてはいないが避けるべきという人とがいる。いずれにせよ、首長と議員のなれ合いと評されるレベルの緊密さは、好ましいことではない。

一部議員が提出前から議案の詳細を知っていて、首長と一体となって議案提出をするような実質を伴ってしまうと、執行機関としての首長、議決機関・チェック機能としての議員の二元代表制を採用している地方自治法の建前に反する。地方議会は議院内閣制ではなく、本来なら与党・野党は存在しない。非公式な場所で政策・議案に関する意見交換をし過ぎると、本会議や委員会での審査が形骸化しかねない。


次に、(2)の違法性に関して。判例を見てみると・・・

○最高裁判例 平成18年12月01日
======【引用ここから】======
(ア) 本件支払1
平成12年2月11日,市内のライブハウスの新店主披露祝賀会に市長が列席するに際して祝金を交付することとし,新店主に対し1万円を支払った。
(イ) 本件支払2
平成11年11月10日,武蔵野市部課長会の研修後の懇親会に市長,助役及び収入役が列席するに際して祝金を交付することとし,同会の会長に対し3万円を支払った。
(ウ) 本件支払3
平成11年11月29日,市内に所在するA寺の第10世住職継承披露祝賀会に市長が列席するに際して祝金を交付することとし,A寺住職に対し1万円を支払った。
(エ) 本件支払4
平成11年12月8日,B大学出身の市議会議員及び市職員から成る武蔵野市役所B会の懇親会に市長が列席するに際して祝金を交付することとし,同会代表幹事に対し1万円を支払った。
(オ) 本件支払5
平成11年12月21日,市議会の会派であるCクラブの忘年会に市長が列席するに際して祝金を交付することとし,同クラブ会派代表者に対し1万円を支払った。
(カ) 本件支払6
平成12年1月30日,宮崎県内の全焼酎製造業者によって結成された同県の特産品の消費拡大等を目的とする団体の定例会に市長が列席するに際して祝金を交付することとし,同団体幹事長に対し5000円を支払った。

~~~(中略)~~~
普通地方公共団体が住民の福祉の増進を図ることを基本として地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとされていること(法1条の2第1項)などを考慮すると,その交際が特定の事務を遂行し対外的折衝等を行う過程において具体的な目的をもってされるものではなく,一般的な友好,信頼関係の維持増進自体を目的としてされるものであったからといって,直ちに許されないこととなるものではなく,それが,普通地方公共団体の上記の役割を果たすため相手方との友好,信頼関係の維持増進を図ることを目的とすると客観的にみることができ,かつ,社会通念上儀礼の範囲にとどまる限り,当該普通地方公共団体の事務に含まれるものとして許容されると解するのが相当である。しかしながら,長又はその他の執行機関のする交際は,それが公的存在である普通地方公共団体により行われるものであることにかんがみると,それが,上記のことを目的とすると客観的にみることができず,又は社会通念上儀礼の範囲を逸脱したものである場合には,当該普通地方公共団体の事務に含まれるとはいえず,その費用を支出することは許されないものというべきである
======【引用ここまで】======

そして、
「支払1~支払3は違法」
「支払4~支払6は違法とはいえない」
というのが、最高裁の出した結論である。


最高裁は、議員会派の忘年会に市長が出席し、交際費から祝金を出すのは、地方公共団体が「行政を自主的かつ総合的に実施」する役割を果たすため、議員との「友好,信頼関係の維持増進を図ることを目的とすると客観的にみることができ」「社会通念上儀礼の範囲にとどまる」から「違法とはいえない」と判断している。

最高裁は、市長から見た議員を「対外的」な立場にある人と考え、市長が議員と交際することに一定の公務性を認めていることになる。

これに照らしてみると、
「会派の忘年会に出席して祝金を出すのが合法なら、市長と議員の情報交換の場で市長と職員分の飲食代を出すのも合法」
とも思える。これをどのように考えるか。

交際費(=公費)で負担をするのであれば、一定の公務性が求められる。公務性がある以上、
・出席する名目が公的なものであること
・出席する名目と支出の内容とが一致すること
が求められる。そして、名目と内容とが一致しない場合、「社会通念上儀礼の範囲を逸脱した」ものと考えることができる。

例えば、
・出席する名目が「老人クラブスポーツ大会」、支出の内容が「賞状代」であれば、名目と内容が一致する。
・名目が「議員忘年会」で、内容が「祝金」であれば、名目と内容が一致する。(最高裁は「儀礼の範囲にとどまる」と判断した。)

議員会派の忘年会を、年に一度のそれなりに改まった行事と捉えると、そこへの祝金は儀礼といえば儀礼なのかもしれない。だが、政策や議案の情報交換という名目で焼酎を飲むのは、儀礼の範囲とは通常言いにくい。

そもそも、名目である「政策、議案に関する情報交換、意見交換」は公的なものかどうか。

(1)で述べたように、内々での情報交換の有用性は否定できない。ただこれは、公の場での議論と対置される非公式のもの。公務性があって公表できる行事、事柄に支出すべき交際費を、内々で行われるものへ支出することは、交際費の性質からして問題だ。


(3)については、「自分は会費を払った」とする声もあるが、新聞記事によると議員分も含めた飲食費が支払われたようだ。



交際費の使途については、ホームページ上での公開が主流と言ってよいだろう。予め公開してあれば、人目を気にするようになる。見られている感覚が「この交際費支出は問題あるかな?」という意識を生み、税金を惰性で支出することを抑制する。

「住民参加」と「情報公開」が、昨今の自治体行政のあり方を考える上でのキーワードとなっている。

ただ、「住民参加」は支出抑制につながるとは思えない。下手をすると、住民からの「あれをしてほしい。これもお願いしたい」といった御用聞きの場になってしまい、歳出を後押しすることになる。

「情報公開」は、いくら公開してもし過ぎということはない。無駄遣いはいくらでもあるのだから。

交際費、政務調査費、各種補助金などは、内容をドンドン公開しようという流れになっている。そうすると、「これは合法?」「あれは効果あるの?」といった批判を常に受けることになる。グレーゾーンな支出を慣例として続けるわけにはいかなくなる。

支出の詳細を公表して検討する。これを徹底して各分野にわたって行うのが、事業仕分けだ。民主党政権でその評価はガタ落ちになってしまったけど、やはり、大雑把な目的や大義名分だけでなく、支出の内容まで検討していくことは必要なのだ。




~ 平成24年2月12日追加 ~

市長交際費で飲食をしていたのは、市長や市議だけではなかったようで・・・

○行橋市長 監査委とも交際費で会食 / 西日本新聞
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 福岡県行橋市の八並康一市長が市長交際費で一部の市議と会食していた問題で、2010年8月に交際費から約5万7千円を支出して監査委員とも会食していたことが11日、西日本新聞が情報公開請求した市の会計資料で分かった。監査委員には行政の効率的運営を促し財務を審査する役割があり、識者は「監査委員の独立、信頼性の観点から好ましくない」と指摘。市は「委員から会費をもらったが、会計処理の行き違いで交際費から支出してしまう事務ミスだった」と釈明している。
 交際費資料などによると、会食は市内の飲食店であり、元市職員と市議が務める監査委員2人と八並市長、監査事務局長ら計6人が出席。市は後日、交際費から全額を支払った。
 市の説明では、会食翌日に委員2人から監査事務局長が会費を徴収し、事務局長分と合わせた3人分を総務部長に渡した。総務部長はしばらく預かっていたが、「正確な代金が分かり次第請求する」と3人分の会費を事務局長に返却。その後、総務部長は事務局長への催促を忘れ、事務局長も委員2人に会費を返してしまったという。
 監査委員の一人は「会費の支払いを何度か申し出たがそのままになってしまった。負担すべきだったと反省している」と話した。西日本新聞の取材後、委員2人と監査事務局長の会費が市側にあらためて支払われた。

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