若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

共産党の「倫理」を問う ~市役所内での赤旗勧誘~

2013年12月10日 | 地方議会・地方政治
○扶川元県議逮捕に関する見解
=====【引用ここから】=====
 何人であれ政治活動の自由は保障されるので、生活保護受給者が政治活動をするのは一向に構わないし、政党が生活保護受給者を勧誘するのもなんら問題はない。だが、相手は恩義を受け、断るにも断れない状況の人達である。そんな人にいくら「断ってくれてもいいから…」と言っても断れるものではないし、
~~~(中略)~~~
 これを共産党機関幹部が読めば、「自発的に入党してもらっている。一切強制はない」と激怒するかもしれないが、強制はないにしても恩義をかぶせた上で入党工作や赤旗拡大はやりやすかったはずである。
=====【引用ここまで】=====

 生活保護を斡旋し、その見返りに赤旗を購読させる。これで、「我が党は政党助成金を受け取っていないクリーンな党」と言うのだから、恐れ入る。生活保護費も政党助成金も、どちらも税金が原資でんがな。
 こんな「しんぶん赤旗」であるが、最近、また赤旗の正当性を疑わせる事例が登場した。

共産党市議、福岡県行橋市役所内で「赤旗」を勧誘・配布・集金 20年以上前から 「政治的中立性」に疑念…+(1/2ページ) - MSN産経ニュース
=====【引用ここから】=====
 福岡県行橋市の管理職職員の多くが、共産党市議らから政党機関紙「しんぶん赤旗」の勧誘を受け、職場で購読していることが9日わかった。少なくとも20年前から市役所内で勧誘や配布、集金が行われており、市議の立場を利用した「心理的強制」にあたる可能性もある。市は、職場での購読は地方公務員法で定める「政治的中立性」に疑念を持たせるとして実態調査を検討している。同様のケースは他の自治体でも表面化しており、全国に広がる可能性がある。(田中一世)
 9日の12月定例議会本会議で、小坪慎也市議(無所属)の一般質問に、松本英樹総務部長が答えた。
 小坪氏は、共産党の市議や元市議らによる勧誘の結果、部課長級職員(約60人)のうち、少なくとも半数が「しんぶん赤旗」の日刊紙(月額3400円)か日曜版(月額800円)を購読しており、職場の机上に配布されていると指摘した。その上で「市議に勧誘されれば職員は断りにくく、心理的強制の可能性がある」と述べ、購読の経緯について実態調査を進めた上で是正を求めた。

~~~(中略)~~~
 小坪氏は「赤旗の購読は事実上、共産党への政治献金だ。職場内は赤旗まみれになり、市民から『市は共産党員が多いのか』と誤解されており、公務員の政治的中立性が疑われる。市役所内での購読や配布を禁止すべきだ」と求めた。
 一方、ある市職員は、産経新聞の取材に応じ、係長級昇任時に日曜版、課長級昇任時に日刊紙の購読を共産党市議に持ちかけられたと明らかにした。現在、共産党支援者らが市役所内の職場を回り、配布しているという。この職員は「共産党は議会での追及が非常に厳しいし、他の管理職職員も大半は購読しているので断るわけにはいかないと思った。まあ購読しても手加減してくれるわけではないのですが…。小坪氏の(購読禁止の)要求が通れば多くの職員は『万歳』ですよ」と打ち明けた。
 共産党の徳永克子市議は産経新聞の取材に対し、「市職員とはいえ個人として申し込みがあり、購読してもらっている。私個人の問題ではないので、今後の対応は党全体で検討したい」と述べた。

=====【引用ここまで】=====

記事を勝手に要約すると、

・共産党市議が市の管理職に対し、赤旗の勧誘、配布、集金を行っている。
・20数年前から。
・市の管理職の半数以上が購読している可能性がある。
・市議から購読を持ちかけられると断りづらい。


となる。

さて。

 この記事の中に、「地方公務員法で定める政治的中立性に疑念を持たせる」とある。
 市役所内で「しんぶん赤旗」を購読、配布することは、地方公務員法に違反するであろうか。条文を見てみよう。

○地方公務員法
=====【引用ここから】=====
(政治的行為の制限)
第三十六条 職員は、政党その他の政治的団体の結成に関与し、若しくはこれらの団体の役員となつてはならず、又はこれらの団体の構成員となるように、若しくはならないように勧誘運動をしてはならない。
2 職員は、特定の政党その他の政治的団体又は特定の内閣若しくは地方公共団体の執行機関を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、あるいは公の選挙又は投票において特定の人又は事件を支持し、又はこれに反対する目的をもつて、次に掲げる政治的行為をしてはならない。ただし、当該職員の属する地方公共団体の区域(当該職員が都道府県の支庁若しくは地方事務所又は地方自治法第二百五十二条の十九第一項 の指定都市の区に勤務する者であるときは、当該支庁若しくは地方事務所又は区の所管区域)外において、第一号から第三号まで及び第五号に掲げる政治的行為をすることができる。
一 公の選挙又は投票において投票をするように、又はしないように勧誘運動をすること。
二 署名運動を企画し、又は主宰する等これに積極的に関与すること。
三 寄附金その他の金品の募集に関与すること。
四 文書又は図画を地方公共団体又は特定地方独立行政法人の庁舎(特定地方独立行政法人にあつては、事務所。以下この号において同じ。)、施設等に掲示し、又は掲示させ、その他地方公共団体又は特定地方独立行政法人の庁舎、施設、資材又は資金を利用し、又は利用させること。
五 前各号に定めるものを除く外、条例で定める政治的行為

3 何人も前二項に規定する政治的行為を行うよう職員に求め、職員をそそのかし、若しくはあおつてはならず、又は職員が前二項に規定する政治的行為をなし、若しくはなさないことに対する代償若しくは報復として、任用、職務、給与その他職員の地位に関してなんらかの利益若しくは不利益を与え、与えようと企て、若しくは約束してはならない。
4 職員は、前項に規定する違法な行為に応じなかつたことの故をもつて不利益な取扱を受けることはない。
5 本条の規定は、職員の政治的中立性を保障することにより、地方公共団体の行政及び特定地方独立行政法人の業務の公正な運営を確保するとともに職員の利益を保護することを目的とするものであるという趣旨において解釈され、及び運用されなければならない。

=====【引用ここまで】====

 行為者ごとに考えてみよう。

 まず、職員が市役所内で赤旗を購読し配布を受ける行為はどうか。
 職員が個々に「しんぶん赤旗」を購読することは、一号~四号のいずれにも該当しない。ただ、配布された赤旗を机の上に放置し、やって来た多数の住民の目につくような状態することが、四号で規定する「掲示」に該当するかもしれない。これは、具体的な状況によるであろう。「職場内が赤旗まみれ」という表現が誇張でなければ「掲示」と評価できるかもしれない。

 次に、市議が市役所内で市職員に対し赤旗購読を勧誘・配布・集金することはどうか。
 これは、市議がそもそも地方公務員法の適用外であるため関係がない。ただ、市議が「赤旗を庁舎の壁に掲示しろ」「カウンターの上に目立つように置け」と職員に依頼をすると、3項に抵触する可能性は残る。

 そして、庁舎管理者が、市議の市職員に対する赤旗勧誘、配布・集金を放置・容認・黙認していることはどうか。
 庁舎管理者が庁舎内を赤旗勧誘、配布、集金場所として市議に「提供」しているとなると、四号の「庁舎を利用させること」に該当する可能性がある。
 これは、他の政党や団体が、庁舎内で機関紙の勧誘・配布・集金を許されているかどうかで異なってくる。他の団体が許可されていなかったのに、共産党市議だけが庁舎管理者から勧誘・配布・集金を容認・黙認されていたとなると、共産党への支持、支援を目的として市議に庁舎を利用させていたと評価される。
 地公法違反の批判を回避するためには、庁舎管理者(上記記事の総務部長?)は、共産党市議の庁舎内での赤旗勧誘・配布・集金を禁止するか、あるいは、あらゆる政党、団体の機関紙勧誘・配布・集金を許可するか、のいずれかを選択することを迫られそうだ。

=====(H26.1.19追記)=====
この市の庁内管理規則を見ると
(管理責任者)
第3条 庁舎及び庁内の管理、取締に関する事務は責任をもつて総務部長がこれにあたる。
とある。今回の事例において、地方公務員法の政治的中立違反を問われる可能性があるのは、ピンポイントで総務部長となる。
==================


 さてさて。

 市議が市役所内で市職員に対し赤旗購読を勧誘・配布・集金することは、地方公務員法に抵触しないと上で述べた。市議は地方公務員法の適用を受けない。
 ただ、自治体によっては、議員の倫理を定める条例が制定されていることがある。議会改革の流れで、議会基本条例とセットで制定されることの多い「政治倫理条例」である。上記記事の自治体でも、政治倫理条例が制定されている。これを見ると・・・

○行橋市政治倫理条例
=====【引用ここから】====
(議員及び市長等の責務並びに政治倫理規準)
第2条 議員及び市長等は、市政に携わる責務を深く自覚し、次に掲げる政治倫理規準を遵守しなければならない。
(1) 市民全体の奉仕者として品位と名誉を損なうような一切の行為を慎み、その職務に関し不正の疑惑を持たれるおそれのある行為をしないこと。
(2) 常に市民全体の奉仕者としての人格と倫理の向上に努め、その地位を利用していかなる金品も授受しないこと。
=====【引用ここまで】====

 条例第2条第2号に、倫理規準として「その地位を利用していかなる金品も授受しないこと」とある。
 もし「赤旗勧誘に来たのがただの共産党支援者なら断れたのに、市議が自ら勧誘してきたから断れなかった」という状況が認定されれば、これはまさに「市議という地位の利用」である。
 上記記事では、市の幹部職員が「共産党は議会での追及が非常に厳しいし、他の管理職職員も大半は購読しているので断るわけにはいかないと思った。」と語っているところを見ると、地位利用が薄っすらと浮かんで見えてくる。

 「瓜田に履を納れず、李下に冠を正さず」
 疑わしきには、自ら襟を正す。それが倫理である。この政治倫理条例は、共産党が全国的に制定を推進している条例である。自らが制定した政治倫理条例に照らし「地位利用でない」という証を立てるため、共産党は一度、全職員の赤旗購読を解約し、改めて市議以外の共産党支援者を勧誘に向かわせてはどうだろうか。
 上記新聞記事では「管理職職員の多く」という表現になっているが、もし、実態が「管理職のほとんど全員」が購読していたとなると、議員の地位利用による圧力の疑いは更に高まる。
 市議の地位を利用しない勧誘と、これに基づく市職員の購読であれば、個人の勝手で済むこと。市議が勧誘するから、「市議の地位を利用して購読圧力をかけたんじゃないの?」という疑念が生じるのである。


・・・さて、市議が勧誘・配布・集金から離れて、どれだけの市職員が購読を継続するだろうか?
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地方議員が出張するための法的根拠 ~議員派遣と委員派遣~

2013年12月10日 | 地方議会・地方政治
地方議員の公務は、

・本会議、委員会への出席
・議会を代表する議長としての、会議や会合への出席
・議員派遣
・委員派遣

の4つに分類される。
この中で、議員派遣と委員派遣の法的根拠を見てみよう。
まずは、議員派遣について。

・地方自治法第100条
==========
第13項 議会は、議案の審査又は当該普通地方公共団体の事務に関する調査のためその他議会において必要があると認めるときは、会議規則の定めるところにより、議員を派遣することができる。
==========

・標準市議会会議規則第167条
==========
第1項 法第100条第13項の規定により議員を派遣しようとするときは、議会の議決でこれを決定する。ただし、緊急を要する場合は、議長において議員の派遣を決定することができる。
第2項 前項の規定により、議員の派遣を決定するに当たっては、派遣の目的、場所、期間、その他必要な事項を明らかにしなければならない。

==========

地方議会において、議長でない議員が公務として議場や委員会室以外の場所へ行くためには、

 派遣の目的 ○○市が実施する△△事業の調査研究
 派遣先場所 □□県○○市役所
 派遣の期間 平成25年10月1日~平成25年10月2日
 派遣対象者 A議員、B議員、C議員


といった、議会の議決が必要である。これが原則。
この原則に対する例外が、閉会中の審査事件についての委員派遣となる。

・地方自治法第109条
==========
第8項 委員会は、議会の議決により付議された特定の事件については、閉会中も、なお、これを審査することができる。
==========

・標準市議会会議規則第106条
==========
第1項 委員会は、審査又は調査のため委員を派遣しようとするときは、その日時、場所、目的及び経費等を記載した派遣承認要求書を議長に提出し、あらかじめ承認を得なければならない。
==========

これは、
・議会の会期中か、あるいは、議会の議決に基づき委員会が特定の事件について閉会中も審査できる状態で
・委員会で決定し
・議長の承認を得て公務としての出張が可能になる、というもの。

 ・本会議で詳細を議決 → 議員が出張 = 議員派遣
 ・本会議で委員会の閉会中審査事項を議決 → 委員会で決定し派遣要求 → 議長が承認 → 委員が出張 = 委員派遣

議会を代表する議長としての行事出席でもなく、会議が行われる本会議場や委員会室へ出向くのでもなく、議員派遣、委員派遣のいずれの手続きも経ていない場合、議会の公務とはならない。公務でなければ、公費(議会費)から旅費や費用弁償は支給できないし、公務災害の適用もない。議会事務局が随行することもできない。

参考 名古屋市:市会だより第125号 議員報酬について考える(市会情報)
=====【引用ここから】=====
現在、議員の行う調査・研究活動は、本会議や委員会の会議の中で行われる審査・調査と、会議体の一員として派遣される場合以外は、単なる議員の活動であり公務ではないと解されています。
=====【引用ここまで】=====


さて。

○議会運営委員会の視察に随行、視察報告書を代筆までした職員は経費を返還すべきです(3月7日受付)[掲載日:平成23年4月18日]
=====【引用ここから】=====
ご意見
1)議会事務局職員、及び一般市職員が、何を目的として随行を要請され承認されているのか
2)一般市職員が議員の視察旅行に随行することを(それぞれの視察に対して)誰が承認しているのか
3)職員の本来の職務と関係しない随行が、税金のムダ遣いではなく、何故、公務として扱われるのか
4)市議員でもない市職員が視察報告書を代筆までしているのは、如何なる理由からか
5)何故、一般市職員が視察報告書代筆まですることが公務でしょうか

回答
名張市議会における行政視察で、議会事務局職員が随行する行政視察は、議会運営委員会・常任委員会・特別委員会など、すべて公式の委員会による、地方自治法第100条第13項および名張市議会会議規則第98条に基づく、議長の委員派遣の承認を得た「公務」です。
また、議会事務局職員の行政視察随行に関する旅行は、すべて直属の上司からの命令を得ています。
最後に、各委員会の視察報告書について、過去の一部の視察報告書では、記録者氏名が随行職員名となっていますが、これらはすべて委員会単位(随行者を含む)で作成しているとのことでございます

=====【引用ここまで】=====

視察報告書を委員会単位で作成するということについて。

「委員会単位で視察に赴いたのだから、委員会として一つの報告書を作成する(だから随行者が作成して良い)」
というのが建前なのだろう。この運用例は多く見受けられるものであるが、違和感が残る。
なぜなら、法律上、派遣を決定するのは「委員会」だが、派遣されて実際に視察に行くのは「委員」だからだ。「委員会」が調査・審査を行うため、「委員会」が「委員」を視察に派遣するのだから、各「委員」が視察内容や所感をまとめて視察報告書を「委員会」へ提出すべきではなかろうか。視察の段取りや交通・宿泊の手配、現地での連絡調整、サポートは随行者がするとしても、派遣された「委員」が報告書を作成しないでどうするのか。

視察へいって調査をするのは議員ですよ。
随行の職員はあくまで事務的サポートですよ。
見聞きした内容を踏まえ、これを今後どう活用していくか、どのように地元に反映させていくかを考えるために視察に行くのに、その内容の報告を随行者が作成するというのは、本末転倒である。

視察を止めますか?それとも議員を辞めますか?
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