役所は、強制力を背景に税金を徴収し、手間賃と職員の給料を差し引き、残った金を色んな形で配布します。
財産を強制的に奪う行為は、本来なら強盗や恐喝といった犯罪になります。こうした、本来なら犯罪である徴税を正当化するために、
「租税とは、国家が市民に提供する生命と財産の保護に対する対価である」
「民主的に定められた手続きに則って徴収されたものは、国民の同意がされたものと擬制できる」
等等の理屈が考えられてきました。
私は、
「同意の擬制は多数派による同意の強制だ、結局は同意なき収奪なのだから犯罪だ」
・・・と言いたい。
私のような人間は少数派。圧倒的多数の人は、税金徴収は犯罪でないと受け止めていると思います。ただ、こうした圧倒的多数の人も、徴収手続きや、徴収した金の配布方法・対象・金額・時期については、適正に、民主的に定められるべきだ、と考えているはずです。
民主的手続きには、議論を伴います。
国会でも、新型コロナウイルス感染症対策や休業補償、臨時給付について連日のように議論がされています。今回、所得制限ありで1世帯30万円給付という政府案が、野党や連立与党内部からの批判を受けて撤回され、一律1人10万円給付という案に変更されました。
補正予算案を撤回した事の是非、給付することそのものの是非はありますが、議論を行い、補正予算案を議決してから予算執行しようとする一連の流れは、一応、議論と手続きを踏まえたものと理解できます。
ですが、これ ↓ は理解できません。
〇行橋市 休業協力に20万円支給|NHK 福岡のニュース 04月15日 18時00分
<記事より抜き書き>
・対象:県が休業を要請している施設 + 居酒屋や喫茶店など
・金額:1店舗20万円、2店舗以上40万円
・予算規模:1億円
・申請開始:4月16日
・対象となる休業期間:4月23日から5月6日まで
この自治体では4月12日に市議の選挙があり、給付が決まった事が4月15日のニュースで報じられ、4月16日から実際に申請受付を始めています。
その間、議論はなし。もちろん議決もしていないんですよね。
議会で議論し審議すべきポイントは山ほどあります。
・支給対象を県が休業要請している施設に限るべきではないか。
・支給対象に居酒屋や喫茶店を加え、他の業種を加えなかったのは公平性を欠くのではないか。
・支給金額が高すぎるのではないか。予算規模が大きすぎるのではないか。
・財源はどうするのか。予算を組み替えるのか、国や県からの補助が付くのか、基金を取り崩すのか。
・給付するための手続きは整っているのか。審査や休業した事の確認はどうするのか。
こうした論点を議論するために、議員は存在します。市長から提案理由を聞き、質疑を行い、委員会で事業の中身の説明を受け、質問や意見を述べ、議員間で討論を行い、多数決を行って予算は成立します。この議案審議は議員の大きな役割です。
議会は常時開催されているわけではなく、定期的に開催されています。急ぎで補正予算を成立させたい、定例的な議会開催日を待つことができない、ということであれば、臨時議会を招集し、議会の一連のプロセスを経て議決を受け補正予算を成立させるという方法もあります。
市長が4月15日に給付制度を固めたのであれば、そこで直ちに臨時議会の招集告示を出せば良いのです。7日後、あるいは緊急性を理由にもうちょっと早く開会日を設定すれば、臨時議会を開いて審議を経て議決を受けるということは十分可能です。このわずか数日すら待てなかったという合理的理由が、私には思いつきません。
地方自治法第179条第1項には、緊急性のある場合に専決処分を行うことができるとする規定があります。ただ、上述のとおり、この案件が臨時議会を招集する暇が無い程の緊急性があるとはとても思えません。臨時議会を招集する手間を省き議会からの批判を避けるために行われた、脱法的な専決処分というのが私の印象です。義務的経費の支出とかではない、政策的な新規事業を専決処分するのは非常に乱暴です。市長が議会に諮らず一人で決めたというのは、まさに「独裁」です。
税金の徴収・分配には、お金を強制的に集める点で強盗や恐喝と類似した犯罪の臭いが付きまといます。これを、辛うじて一般的に受け入れられる程度に浄化しているのが、民主的手続きです。税金の分配から民主的手続きを省いてしまったら、後に残るのは犯罪の臭いだけです。税金の正当性は大きく後退します。
先ほど述べたとおり、この自治体では市議選挙が行われたばかりです。新たな任期を迎えた議員達は、市長のこの「独裁」をどう捉えているのでしょうか。
休業補償の内容の是非については、議員ごとに考えは異なるでしょう。
・今回の休業補償の在り方に賛成の人
・別の形の休業補償を想定していた人
・規模が大きすぎると考える人
・もっと支給額を増やすべきだと考える人
・対象選定が恣意的だと考える人
・そもそも休業補償に反対の人
と様々な考え方があって良いと思います。
しかし、その決定プロセスに問題ないと思っている議員はいない。そう思いたいです。
もし、
「市長の取り組みは素晴らしい!」
「スピード感のある対応だ!」
と諸手を挙げて無批判で称賛している議員がいたとしたら、その人は議員として議案の審議をする意思を放棄してしまったも同然。議決権も審議権も放棄して市長に賛意を示すだけであれば、議員でない一般市民でも出来ます。
二度と
「議会軽視だ!」
なんて言わないでくださいよ。
苅田町が雇用維持へ独自の助成金|NHK 北九州のニュース
======【引用ここから】======
町内のおよそ750の事業所が対象になる見込みで、苅田町では必要な経費3億7500万円の補正予算を町長の専決処分で決定し、今月27日から申請の受け付けを開始することにしています。
======【引用ここまで】======
行橋市も苅田町も、議員不要なんじゃないの?政策的な新規事業すら専決処分で行えるなら、何のために議員を置く必要があるの?
他方、
福岡・上毛町、住民1人に2万円 所得制限なく一律給付|【西日本新聞ニュース】
======【引用ここから】======
予算規模は約1億6千万円と見込み、町の貯金に当たる財政調整基金を財源に充てる。同基金の積立額は3月末時点で、22億6335万円。町は2万円給付を盛り込んだ本年度一般会計補正予算案を24日の臨時会に提案する。
======【引用ここまで】======
そう、臨時会で良い。手続きとしては、これが王道。
産業振興部、とあります。
産業振興部のトップは、4月に変わったばかり。
(2020年3月27日 西日本新聞)
3月まで総務部総務課長だった方が、4月から産業振興部長になったとのこと。
3月まで総務課長・・・
合格ライン操作は 実在する!?(1次筆記試験3割得点でも合格できる行橋市職員採用試験) - 若年寄の遺言
ここの登場人物だった方が、昇進されたようです。
前代未聞の「1次筆記試験受験者を全員合格させた採用試験」の実務の担当者が昇進するというのは、不思議なものです。
財産を強制的に奪う行為は、本来なら強盗や恐喝といった犯罪になります。こうした、本来なら犯罪である徴税を正当化するために、
「租税とは、国家が市民に提供する生命と財産の保護に対する対価である」
「民主的に定められた手続きに則って徴収されたものは、国民の同意がされたものと擬制できる」
等等の理屈が考えられてきました。
私は、
「同意の擬制は多数派による同意の強制だ、結局は同意なき収奪なのだから犯罪だ」
・・・と言いたい。
私のような人間は少数派。圧倒的多数の人は、税金徴収は犯罪でないと受け止めていると思います。ただ、こうした圧倒的多数の人も、徴収手続きや、徴収した金の配布方法・対象・金額・時期については、適正に、民主的に定められるべきだ、と考えているはずです。
民主的手続きには、議論を伴います。
国会でも、新型コロナウイルス感染症対策や休業補償、臨時給付について連日のように議論がされています。今回、所得制限ありで1世帯30万円給付という政府案が、野党や連立与党内部からの批判を受けて撤回され、一律1人10万円給付という案に変更されました。
補正予算案を撤回した事の是非、給付することそのものの是非はありますが、議論を行い、補正予算案を議決してから予算執行しようとする一連の流れは、一応、議論と手続きを踏まえたものと理解できます。
ですが、これ ↓ は理解できません。
【突然始まる行橋市のバラマキ】
〇行橋市 休業協力に20万円支給|NHK 福岡のニュース 04月15日 18時00分
<記事より抜き書き>
・対象:県が休業を要請している施設 + 居酒屋や喫茶店など
・金額:1店舗20万円、2店舗以上40万円
・予算規模:1億円
・申請開始:4月16日
・対象となる休業期間:4月23日から5月6日まで
この自治体では4月12日に市議の選挙があり、給付が決まった事が4月15日のニュースで報じられ、4月16日から実際に申請受付を始めています。
その間、議論はなし。もちろん議決もしていないんですよね。
議会で議論し審議すべきポイントは山ほどあります。
・支給対象を県が休業要請している施設に限るべきではないか。
・支給対象に居酒屋や喫茶店を加え、他の業種を加えなかったのは公平性を欠くのではないか。
・支給金額が高すぎるのではないか。予算規模が大きすぎるのではないか。
・財源はどうするのか。予算を組み替えるのか、国や県からの補助が付くのか、基金を取り崩すのか。
・給付するための手続きは整っているのか。審査や休業した事の確認はどうするのか。
こうした論点を議論するために、議員は存在します。市長から提案理由を聞き、質疑を行い、委員会で事業の中身の説明を受け、質問や意見を述べ、議員間で討論を行い、多数決を行って予算は成立します。この議案審議は議員の大きな役割です。
議会は常時開催されているわけではなく、定期的に開催されています。急ぎで補正予算を成立させたい、定例的な議会開催日を待つことができない、ということであれば、臨時議会を招集し、議会の一連のプロセスを経て議決を受け補正予算を成立させるという方法もあります。
市長が4月15日に給付制度を固めたのであれば、そこで直ちに臨時議会の招集告示を出せば良いのです。7日後、あるいは緊急性を理由にもうちょっと早く開会日を設定すれば、臨時議会を開いて審議を経て議決を受けるということは十分可能です。このわずか数日すら待てなかったという合理的理由が、私には思いつきません。
地方自治法第179条第1項には、緊急性のある場合に専決処分を行うことができるとする規定があります。ただ、上述のとおり、この案件が臨時議会を招集する暇が無い程の緊急性があるとはとても思えません。臨時議会を招集する手間を省き議会からの批判を避けるために行われた、脱法的な専決処分というのが私の印象です。義務的経費の支出とかではない、政策的な新規事業を専決処分するのは非常に乱暴です。市長が議会に諮らず一人で決めたというのは、まさに「独裁」です。
税金の徴収・分配には、お金を強制的に集める点で強盗や恐喝と類似した犯罪の臭いが付きまといます。これを、辛うじて一般的に受け入れられる程度に浄化しているのが、民主的手続きです。税金の分配から民主的手続きを省いてしまったら、後に残るのは犯罪の臭いだけです。税金の正当性は大きく後退します。
【議員の存在意義は?】
今回の休業補償に関する決定プロセスから、議員は排除されています。議員は事後的に報告を受けるのみ。先ほど述べたとおり、この自治体では市議選挙が行われたばかりです。新たな任期を迎えた議員達は、市長のこの「独裁」をどう捉えているのでしょうか。
休業補償の内容の是非については、議員ごとに考えは異なるでしょう。
・今回の休業補償の在り方に賛成の人
・別の形の休業補償を想定していた人
・規模が大きすぎると考える人
・もっと支給額を増やすべきだと考える人
・対象選定が恣意的だと考える人
・そもそも休業補償に反対の人
と様々な考え方があって良いと思います。
しかし、その決定プロセスに問題ないと思っている議員はいない。そう思いたいです。
もし、
「市長の取り組みは素晴らしい!」
「スピード感のある対応だ!」
と諸手を挙げて無批判で称賛している議員がいたとしたら、その人は議員として議案の審議をする意思を放棄してしまったも同然。議決権も審議権も放棄して市長に賛意を示すだけであれば、議員でない一般市民でも出来ます。
二度と
「議会軽視だ!」
なんて言わないでくださいよ。
【4/20追記】
そうこうしていたら、隣町からも。苅田町が雇用維持へ独自の助成金|NHK 北九州のニュース
======【引用ここから】======
町内のおよそ750の事業所が対象になる見込みで、苅田町では必要な経費3億7500万円の補正予算を町長の専決処分で決定し、今月27日から申請の受け付けを開始することにしています。
======【引用ここまで】======
行橋市も苅田町も、議員不要なんじゃないの?政策的な新規事業すら専決処分で行えるなら、何のために議員を置く必要があるの?
他方、
福岡・上毛町、住民1人に2万円 所得制限なく一律給付|【西日本新聞ニュース】
======【引用ここから】======
予算規模は約1億6千万円と見込み、町の貯金に当たる財政調整基金を財源に充てる。同基金の積立額は3月末時点で、22億6335万円。町は2万円給付を盛り込んだ本年度一般会計補正予算案を24日の臨時会に提案する。
======【引用ここまで】======
そう、臨時会で良い。手続きとしては、これが王道。
【4/20追記2】
行橋市の休業協力金、ホームページで見ようとしたら・・・産業振興部、とあります。
産業振興部のトップは、4月に変わったばかり。
(2020年3月27日 西日本新聞)
3月まで総務部総務課長だった方が、4月から産業振興部長になったとのこと。
3月まで総務課長・・・
合格ライン操作は 実在する!?(1次筆記試験3割得点でも合格できる行橋市職員採用試験) - 若年寄の遺言
ここの登場人物だった方が、昇進されたようです。
前代未聞の「1次筆記試験受験者を全員合格させた採用試験」の実務の担当者が昇進するというのは、不思議なものです。